ツキノワグマに「孤立群」があるというけれど
過日、ツキノワグマの研究者と話をした。
そのときにオイラは、中国地方や紀伊半島のツキノワグマは決して「孤立」してはいない、と確信をもって言った。
すると、その研究者は「すでにDNAで答えがでている」と語気を強めて反論してきた。
その場は、受け流しておいたが、オイラは「孤立群」として決めつけてしまうのには大いに疑問をもっている。
それは、どの地にも実際に足を踏み入れて見てきているからである。
現地に生息しているツキノワグマそのものよりも、そこに通じる山地がどのような環境になっているのかをオイラなりに目撃して考察しているからだ。
孤立群といわれている山地につながる山々は、極端なはなし長野県の山地にまで連綿とつながっていることを忘れてはならないからである。
しかも、ツキノワグマは中国山地でも紀伊半島でも、そこに至るまでの山地には連続的に確実に多数が生息していて、交流があるからである。
それなのに、高速道路や河川や村落…などによって、ツキノワグマの行動域が「分断」されていると決めつけて考えが固まってしまっていることのほうがおかしいのではないか。
たとえば、オイラのところのツキノワグマはオスで50~100hkmの行動エリアをもっているとする。
それが、中央アルプスをまたいで木曽谷へも行っているものがいる。
その木曽谷で交尾をして子供を産ませていることは十分に考えられる。
その木曽谷は岐阜県にもつながっているから、木曽谷で生まれたオスが行動エリアを岐阜県側にももっているハズだ。
その岐阜県のツキノワグマは、福井県にもつながっているし、福井県から滋賀県、京都府、兵庫県、岡山県、鳥取県、島根県、広島県、山口県へと、DNAは確実に分配されていくハズである。
長野県のツキノワグマがいきなり中国山地まで行くことはないにしても、50年、100年あるいはもっと時間をかけて長野県のDNAがこれらの地域を少しずつゆっくり乗り継いで行っている可能性は十分に考えられる。
紀伊半島だって、岐阜、滋賀県境の養老山から鈴鹿山系を経由して山地はつながっている。
これまでのオイラの経験では、どの地域にも予想以上にツキノワグマは生息しているものである。
そうしてたくさん生息していることを確認できる技術が各地にはないだけのことであって、「クマクール」などをつかって丁寧に調査をすれば思いのほかツキノワグマをあぶり出すことができるからだ。
これら、各地の山容をオイラは実際に自分の目で見て確かめたから、自分の経験にもとずいて考察すれば、ツキノワグマの動きがほんとうによく見えてきてしまうのである。
こう考えるのも、アルビノとなったタヌキが大量発生してから、消滅し、やがて復活するまでの時間をオイラは見ているからだ。
白いタヌキが復活するまでに、約30年の歳月がかかった。
この30年間に、直線にして50kmほどの距離を白いタヌキが少しずつ出現移動してきている事実を目撃してきたから、野生動物のDNAはこのようにして動いていくのだということを身をもって知った。
タヌキで50kmほどを30年かかって移動するのだから、ツキノワグマはもう少し時間がかかるのかも知れないし、いや、もう少し早いのかもしれない。
オイラは、タヌキのDNAを実際に調べたわけではないが、アルビノという目立つ個体によってその時間的移動変化を連続的に知ることはできた。
しかし、身近なところにいるタヌキひとつにしても、このような調査はまったくなされていないのが実情だ。
今日行われているDNA研究がほんとうに確実なものなのかは、オイラにはまだよくわからない。
DNAだけを鑑定の材料として、すべてを信じて「決定」づけてしまうことにも疑問を感じている。
また、算定方法をまちがえれば、どのようにでも転んでしまいそうな気がしてならない。
DNAがすべてでベストとはいいにくいが、ツキノワグマの「孤立群」として決めつけてしまう前に、まだまだいろんな方法論と発想力が求められるのではないか。
なによりも、「孤立群」といわれるそこに至るまでの山容の連なりにオイラの視線は動くし、ツキノワグマ自身膨大な個体群の存在をもってDNAを供給し続けていることも忘れてはならない。
日本の山は、連なっている。
その山野に潜行するツキノワグマがいったいどのくらいいるのか、まずはそこに注目しながらその間をつなぐ個体群たちの行動領域を順を追って探り考察していくことが大切なのではないか。
それには、一つの固定観念だけで決めつけてしまって安穏してしまうことはよくない、と思うからだ。
だからこそ、以前にも↓のようなことを書いたまでである。
http://tukinowaguma.net/archives/896
写真:
1)ツキノワグマは、山野のどこでも黙々と歩く。
2)山野のどこにカメラを向けても、ツキノワグマは確実に歩いていることがわかる。
3)アルビノのタヌキの出現プロセスを静かに追ってきたら、30年という時間軸がみえてきた。
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