なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2007/3/12 月曜日   調査

中国山地のツキノワグマ

写真上

中国山地は、いきなり雪だった。

道路は、走るに支障はなかったが、周辺には数センチの重たい雪が積もっていた。

宍道湖のほとりで一泊したあと、その日の気分で国道54号線を広島の三次市へ抜けて中国自動車道を北上しようと決めた。

このような旅は、一瞬の気分で即決するのがボクのこれまでのパターン。

島根県から広島県に接する県境付近だろうか、雪の積もった山地にいきなりクマ棚が飛び込んできた。

「おおー クマ棚だぁー あるじゃん、あるじゃん…」

そう、思いながら、双眼鏡で確認すれば、まぎれもないクマ棚である。

それも、道路から50−100mの範囲に10数個もあるではないか。

このような点在のしかたは、まさに信州のクマ棚とそっくりだった。

と、いうことは、信州と同じように、中国山地のクマも車の騒音や人の気配をまったく無視した行動をとるツキノワグマたちということである。

いわゆる、人間を恐れることをしない「新タイプ」のツキノワグマたちがここにもいたのだ。

これは、全国に共通する現代のツキノワグマたちの姿と思っていいだろう。

写真中

車を停めて、カーナビで位置を確認してから、周辺環境と人家の点在などを考察してみた。そして、近所の人々にもインタビューをしてみて意識を探っておく必要も感じた。

ちょうど、近くに郵便局があった。

ここなら、いろんな情報が集まってきているにちがいないと思い飛び込んでみた。

局長さんらしき50代前半の男性と窓口業務をしている20代の女性だけがいる郵便局だった。

お客さんはひとりもおらず、はっきりいってヒマそうだった。

写真下

郵便局 『いらっしゃいませーー』

     (と、いいつつ怪訝そうな目つき)

     

gaku  『あのぅー ボクはツキノワグマを観察しながら全国を旅している者ですが、このへんで昨年クマは出てなかったですかぁー?』

郵便局 『ツキノワグマぁー いっやー ぜんぜん出ていないですよ』

gaku  『っえ! ツキノワグマは出てきませんでしたか?

     あそこの山の斜面にクマが出てきてクリとドングリを食べていった跡があるのですが…』

郵便局 『っえ!? うっそぅー 熊がぁー 、いたのですかぁー?』

窓口のお姉さんは、ブルブルっと身震いして、スカートのひざ掛けをかけなおしていた。

そして、局長らしき男性は窓に駆けよりあわててブラインドをたぐり開け『どこですか?』と、山の斜面を見入るのだった。

一応、事情を説明しておいとまをしてきたが、まさにボクが期待したとおりの対応だった。

このあと、近所にある2軒のお宅にも飛び込んで聞いてみたが、まったく同じような返事だった。

ツキノワグマが身近に出没していても、万事がこのような状況であることはどこでも一緒である。

地域差なんてまったく感じられないほどに、全国の住民たちの野生動物に対する一般知識と関心はこのくらいのレベルだからである。

この無関心さこそが、ある意味でツキノワグマを身近なところから「遠い」ところに置き去りにしている部分があるような気がしてならない。それを中国山地で再確認できただけでもよかったと思っている。

写真下の下

写真上:R54沿いにいきなりクマ棚があり、田んぼにはイノシシフェンス。

写真中:まだ若いクヌギ林にクリの木もみられた。

写真下:郵便局からも、クマ棚がみえた。

写真下の下:すぐ下の集落奥にもクマ棚があったので、この周辺の山には頻々と出没したにちがいない。

(from/ gaku )

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