なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2011/7/19 火曜日   ツキノワグマ日記

熊の生息地なのに無関心すぎる

ここのところ、いくつものポイントに設置してあるロボットカメラに連日ツキノワグマたちが記録されている。
明らかに昨年は見られなかったクマたちも撮影されているから、新しい熊の移動もかなりあるようだ。

ロボットカメラで撮影されるクマたちは日時が正確に記録されるので、いろんなことがわかっておもしろい。
一年でもっとも日の長いこの7月の季節は、早朝や夕方は驚くほどに明るい。
そして、その時間帯には人間たちも当たり前のように活動している。
もちろん、ツキノワグマたちも活発に活動していることがロボットカメラからでも読みとれる。

こうしたツキノワグマたちの活動時間を追ってみると、日中にロボットカメラに撮影されることは極めて少ない。
しかし、夜間はいろんな時間帯をフル活動していることが分かる。
また、早朝は6時くらいまでならかなり活発に行動している。
そして、夕方は5時くらいからすでに活発行動に移っている。

このようなクマたちの行動時間に注目しているオイラだが、同時にジョギングや散歩をしている人間たちにも注目している。
早朝や夕方に、ツキノワグマの生息エリアを平気で走っているからだ。
ジョギングで、クマに向かって走り込んでいくことがどんなに危険なことなのか、オイラは考えただけでもぞっとしてしまう。

数年前にも、有名な登山家が奥多摩でクマに向かって走り込んでいってしまい襲われたことがニュースになった。
ああいうニュースも、オイラにはツキノワグマからの「サイン」だと思うのだが、どうやら一般人には無関心すぎるようだ。
こういう事故は、我が身で経験してはじめて事実を悟るのだろうが、ツキノワグマだけは事故が起きてからでは遅いのである。

で、夕方薄暗くなると必ず一人でジョギングにやってくる30歳前後の小柄な女性がいる。
何回かコースで出会ったので彼女にはクマの存在を告げたことがあったけれど、まったく無視された。
夕方の林道で声をかけたオイラが怪しい変なオヤジにしか思われなかった、らしいのだ。
その後も、かなり暗くなってから林道を走る姿をたびたび目撃しているが、もう老婆心することはやめた。
目や鼻や頬肉をクマに持っていかれても、オイラは知らない。

無人撮影ロボットカメラで、ツキノワグマの行動をこれほど追っている者は全国でもオイラ以外にはいないだろう。
それだけにオイラは、あまりにもたくさんのツキノワグマが周囲にふつうに潜行していることも知っているから事故も心配しているのである。
だけど、「熊がたくさんいる」といえば、「そんなはずはない」と世間ではかならず反発してくる者もいるから、オイラはもう自分の技術は自分だけで楽しむことにする。
クマを知る技術のない者にまで老婆心する必要もない、からだ。
ツキノワグマを探る技術や知り得た新事実は「閻魔様」のお土産にするべき、これからは楽しんで遊びまくろう、と思っている。

写真:
1)背景が暗く落ちているが、朝4時7分の撮影。この時間でも明るいから、散歩をしている人はいる。
2)これは、朝5時3分の撮影。背景の明るさは、昼間と同じだ。
3)ここは、一日に20人前後が走ったり歩いたりしている。クマの存在なんてだれも意識にはないと思うが、そのうちに、必ず事故は起きると見ている。そこは「自己責任」でどうぞ、ということになる。

(from/ gaku )

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5 Comments

  1. ”自己責任”で済ませてくれる人である事を祈るばかりですね。

    その近くの村であった、車でドライブ中、村道で落石に愛人を直撃されて死んだからその村に賠償金を請求する、とか言うアホみたいな話しありましたからねぇ。
    困ったもんです。
    いっそいっしょに死ねば良かったのに‥、とか言うと極悪非道みたいに言われちゃうんですよね。

    まあ、世の中そんなものなんでしょう。
    私もどうでもいいや、って思ってしまいます。

    Comment by いち猟師 — 2011/7/19 火曜日 @ 22:07:12

  2. 老婆心が異端児扱いなのは原発も同じです。
    こんな重大事故が起きてもま~だ目覚めない日本国民ではありますが・・・言い続けていくことだと思っています。

    知っているからこそ自分だけのものにせず、諦めずに広く発信し続けてください。

    Comment by くまがい — 2011/7/20 水曜日 @ 14:46:41

  3. こんなことがありました。
    今日(7/21)午後5時40分頃、舗装した林道のり面で木の実を食べているツキノワグマを12m程の至近距離から見ました。
    1週間ほど前から1cm位の橙色の実を食べていましたから、その後の観察・できれば撮影をしたいと思い、ベアスプレーを腰に付け静かに見回していたところ、急斜面の灌木が激しく揺れながら、フーッツ、フーッツと吐息が聞こえてきました。真っ黒い耳と頭の一部が見えたりします。
    クマが下りてくるとすれば2秒ほどで来る位置です。ベアスプレーの安全ピンを外し、頭全体が現れたらシャッターを切るようにカメラを持ち、極度の緊張状態で3分ほど見続けました。
    ところが、そうしていると、山手から車が来たのです。黙って通過してくれればいいものを、カメラを持っていたのを見て、車を止め、父娘の父が、「何かいるのですか」と。おまけに、二人とも車から降りてきたのです。
    その車の後ろに真っ黒いクマのウンチがあるのにも気づかず。
    クマと会える滅多にないチャンスがぶちこわしです。
    もう、クマは姿を現さないと思ったので、「この上にクマがいるので見に行きますか」、と言いました。
    相手は、さすがに「クマ、良いです」と言って急いで帰りましたが。
    その後、現場で30分ほど静かにしていましたが、もうクマの動きは見えませんでした。
    この場所も、里に近い場所で人が良く通る場所です。しかし、クマがこの場所に来ていると気付く人は、ほとんどいません。
    そして、日中、ほとんどクマは見かけることがありません。
    でも、最近、クマの痕跡を見ると、クマは人の人の生活圏内に随分と生息していると思っています。(長文で申し訳ございません)

    Comment by akke — 2011/7/21 木曜日 @ 21:31:31

  4. ■いち猟師 さん
    ああ、あの事故ね?
    地元の新聞では、たしか7500万円の保証金を村が払ったそうな。
    過疎の村にとって、痛手となる金額だと思います。
    あの事故以来、周辺の村や町は林道を厳重管理しはじめて、地域住民のほうが困っています。
    地域住民は、「自己責任」で山に出かけますからね。

    ■くまがい さん
    オイラそれほど心が大きく広くありませんので、やっぱり閻魔様としか話しができないよう、です。

    ■akke さん
    相変わらずいい観察をされていますね。
    邪魔した父娘には困ったものですが、そういう呑気な人ほど山へ来てしまうもの、です。
    動物に注意するより、まずは人間に見つからないようにするコツのほうが山では求められますね。

    ほんと、熊は知ればしるほど人間の生活圏に確実に入り込んできています。
    しかも、人間をやり過ごす術を身につけながら度胸もつけ…。

    その「赤い実」とは何の実なんでしょう?
    実の写真でもありましたら、ぜひ見てみたいです。
    ボクは、「コウゾ」を想像していますが。。

    Comment by gaku — 2011/7/23 土曜日 @ 8:11:43

  5. gakuさんがおっしゃる通り、「赤い実」は、コウゾです。
    こちらでは、植物に詳しい方が「ヒメコウゾ」と言っていましたが、違いがよく分かりません。

    食べてみたら、少し甘みがあり、小さい種が沢山入っていました。
    ホンドテンの糞にも沢山種子が入っていますので、テンも好物のようです。

    Comment by akke — 2011/7/25 月曜日 @ 7:37:20

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