なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2007/3/21 水曜日   調査

ツキノワグマと植林針葉樹林

ヒノキ林

中央アルプス山麓のボクのフィールドでは、3月15日にツキノワグマの初活動がみられた。

この日の夜間に、いきなり動物食の食事をしていったやつがいる。

そんなツキノワグマの動きを見つけてから、さらに痕跡がないものかとフィールド内を精力的に歩いてみた。

そして、やっかいなものを発見してしまった。

なんと、ヒノキやスギなどの植林地で、幹にツキノワグマの爪痕を見つけてしまったのである。

ヒノキ爪痕

まさかと思う光景であったが、クマたちは明らかに目的をもって植林木によじ登って、てっぺんまで向かっていたのだった。

それも、350本ほどある人工林の8割がたの樹木に、クマの登った形跡があったのだ。

その爪痕は、素人目には見落としてしまうほどに、微妙だった。

体重のあるツキノワグマが、たったこれほどの痕跡を残すだけで自分の体を支えながら垂直の幹を登っているのだから、爪先がいかに強靭なものかを思い知ることができる。

この行動は、いったい何を意味しているのだろうか?

ヒノキやスギなどの人工林は、すなわちツキノワグマを減らしてきた要因として関係者が衆目するところだ。

その樹木をツキノワグマが生活のために明らかに、ひとつの目的をもって利用していた痕跡が見られたのだから、ここでまたひとつ人工植林針葉樹に対するアレルギーを「リセット」してみなければならない発見をしてしまったというわけだ。

こうしたやっかいな発見をしてしまうと、ツキノワグマが森のあらゆる樹木を立体的に利用している事実を再発見できる。

そして、私たち人間が自然に対して身勝手な希望的観測だけで自然を語っているという色眼鏡をも払拭しなければならないことにも気づく。

スギ爪痕

ただ、これらの爪痕がいつできたものかは、ボクの不注意で特定できないことだ。

樹皮にある傷のあんばいからは昨秋以降のものと思われるが、一本の木に何回も登るワケでなく、たったの一回だけ登って目的を達成させていたことである。

この行動が、ますます不可解で、森を総合的に見届けなければならないという宿題がまたひとつできてしまった思いである。

モミ爪痕

写真上:樹齢30−40年のヒノキとスギ林。

写真中:ヒノキの幹にできた爪痕。

写真下:スギの幹にできた爪痕。

写真下の下:モミの幹にも登った爪痕があった。

(from/ gaku )

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6 Comments

  1. 秩父でも去年は、こんなところまでというクマハギが見られました。山奥は、軒並みという場所もあります。
    植林地に長時間滞在している記録はありますが、ヒノキなどの植林木にのきなみ登った爪痕というのは私自身は見たことなく、ほかでも報告はないと思います。たいへん興味深く、さっそく秩父でも探してみます。
    その木を見上げて、(登って)、上がどうなっているかも確認したいものです。
    森林を「立体的に」利用することは、ツキノワグマの生態の大きな特徴の1つです。

    Comment by 石田健 — 2007/3/22 木曜日 @ 7:05:04

  2. さんざん考えたのですが・・・何が目的なのでしょうか?
     
    植林地の樹木のてっぺんにあるクマにとって魅力的なモノ?難しいですねぇ。あるモノといったら、オオタカの巣、リスの巣・・・?しか思いつきません。

    Comment by くまがい — 2007/3/23 金曜日 @ 1:46:21

  3. 一番下のモミの木のタテ写真。その上部に写る黒いかたまりはムササビの巣です。
    それを目的でクマが登ったとは考えられませんが、後日これらの木にも実際に登って確認してみます。

    さて、これから、再び旅にでます。
    また、新たな発見があるものと思いますので。

    Comment by gaku — 2007/3/26 月曜日 @ 9:04:48

  4. 通直な樹木を簡単に登るのですね。
    優れた運動能力ですこと!

    Comment by 粗忽鷲 — 2007/4/3 火曜日 @ 15:28:15

  5. ひさしぶりに来ました。
    というのも、昨日、秩父山中でスギの大木にクマが登ったとおぼしき爪痕を見つけたため。こちらは1本のみ、根元にクマ剥がありました。

    近くに、ヤマザクラの種が雨に洗われて出ている大きな糞もありました。

    ご参考まで

    Comment by 石田健 — 2007/8/11 土曜日 @ 4:05:18

  6. >石田さん、
    超多忙でツキノワグマブログもストップしたままですが、とうとうスギの大木の爪あとみつけましたか。
    こちらは、ボク自身が木にも登り、さらに新知見がどっさり続いています。
    皮剥ぎ行動にも的確な説明ができますが、もうすこし研究者に複眼発想してもらうためにも、しばらく説明を控えることにします。
    一昨日は、すばらしい「熊穴」をみつけましたので、自動撮影準備にこれまた忙しくなっております。
    ここ数日は、月明かりのなかでクマの直接観察もしております。
    こちらではドングリに関係なく、ものすごい勢いでここ数年クマは活発に動いています。

    Comment by gaku — 2007/8/28 火曜日 @ 8:36:29

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