なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2007/3/3 土曜日   ツキノワグマ日記

ツキノワグマと「りんごパイ」

りんごパイ

自分の息子と同世代の編集者が昨日は、一泊でやってきた。

業界を35年間もみつめてくれば、編集者もいつのまにか世代交代をしていて、ボクのまわりも若い人たちばかりになっていることに気づく。

そんな若い編集者と一緒に作品集づくりで熱く語れるときは、自分も年齢のことをすっかり忘れてしまって青春時代になっている。

そうした熱くて真摯な編集者が周辺に登場してきてくれていることにも、ボクはますます責任を感じるしうれしさを覚える。

その編集者がツキノワグマの痕跡を見たいというから、フィールドを歩いてみた。

いつもでかけているところなのに、ひょっとしたら熊が冬眠しているのではないかと思える穴をみつけた。

これまでどうして気づかなかったのだろうと思えるその穴は、ふつうの人ならば絶対に見落とすだろう。

それほどひっそりとしている入り口が、ボクには余計にあやしく思えて仕方がなかった。

さっそくこの穴に無人カメラを設置して、冬眠明けの姿を確認したいと思った。

道路にも民家にも近いところであったが、近年のツキノワグマは私たちの予測を超えた行動をしているから、この穴はボクの勘を多いにくすぐった。

しかし、これらの山にも地主がいる。

カメラを設置するには、地主の許可をとらないことには何事もはじまらない。

夕方、その地主が見つかり挨拶に出向いた。

目的を説明してカメラ設置の許諾をいただいたのだが、地主も全面的な協力をしてくれることとなった。

地主 『なんだぁー ミヤザキさんかぁー 

    いいよ、いいよ、何やってもいいからな 』

こういってくれるのが、いちばんうれしいものである。

このように、今冬だけでもいろんな目的で12軒ものお願いをして歩いた。

そのお願いには、ボクの親友の菓子職人が真心をこめて手づくりをしているとっても評判のいい「りんごパイ」を手土産にしていく。

このりんごパイは、地元では有名なので、食べたくてもなかなか手にはいらないことでも有名である。

だからボクは、前日に予約をしておいて焼きたてを持参していくのである。

そんな「りんごパイ」を差し出すと、

『いやー ありがとう。

 これって、評判の「りんごパイ」だからいちど食べてみたかったんですぅー』

そういって、とてもよろこんでもらえる。

このよろこびが、菓子職人のよろこびでもあり、ボクのよろこびと同時に地主にも伝わるからである。

このときの一瞬の呼吸ですべてが決まるから、地域に根付いたフィールド観察はとても大切なことなのである。

このように一つが気持ちよく前進すると、あとは次々に周辺からも情報があつまってくるし、協力者も増えてくるのがうれしい。

田舎ではこうした第一歩がいちばん大切であり、ちょっとした気配り次第で仕事の結果が大きく左右されるものである。

明日は、ひとりで11頭の熊をライフルで仕留めたという猟師のところへ出向くことになった。猟師は豪快で大酒飲みらしいので、本人にはボクがこだわっている地酒、奥さんには「りんごパイ」である。

写真:ほんとうに美味しい「りんごパイ」だが、そのうちに熊の反応もみてみたいものだ。

(from/ gaku )

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10 件のコメント »

  1. 心が温まるお話ですね。
    フィールドワーカーにとって、一番大切な姿勢だと思います。

    行政委託の調査員や研究者の中には「どけどけっ!専門家様がいらしてあげたぞ!」という態度の人がいますからね。

    私のフィールドの住宅開発騒ぎの時、「オオタカ調査」と称して、そういった輩が入り込んでおりました。
    その連中は、地元の人にことわらずに車を勝手に止め、コンビニ弁当のカラやペットボトルを曜日に関係なく捨てていくのが、さも当然という態度でした。

    仮に地元の人に咎められても「この方をどなたと心得る!○○大学の先生なるぞっ!」と、露払いを喜んで買って出ているのが、にわか仕立ての地元自然保護団体だったりするから、余計に始末が悪かったです。
     研究者だって個人的に話すと、決して悪い人ではなかったり、謙虚な人だったりするのですが、保護団体に担がれると錯覚してしまうようですね・・・。

    コメント by くまがい — 2007/3/3 土曜日 @ 18:26:46

  2. 以前、ムササビ荘にご訪問させていただいた折に食べた「りんごパイ」は、絶品でした。
    地元でも中々手に入らない・・納得です。

    地元の動物の情報を知るには、やはり地元の猟師に聞くのが、一番ですね。
    動物の行動や出没情報はもちろん、今年は寄生虫が多いなど、体の内部の情報まで教えてくれます。

    >くまがいさん
    保護団体のメンバーの中には、自然を感情で見てしまう傾向の人も少なくないですね。
    オオタカを引き合いに出すのは、もうそろそろって感じです。

    確かに皆さん、個人的に付き合えばいい人ののですが・・・。

    コメント by もっち — 2007/3/3 土曜日 @ 21:38:01

  3. 感情で捉えることは、必ずしも悪いことではないんですよ。
    例えば「世論に訴える」というときの、戦略に使えますから。
     ただ、その時にミミズよりもイルカ、タヌキよりもツシマヤマネコ・・・といった差別の落とし穴にはまりこむんですね。
     オオタカ問題なんてまさにそれで、20年以上もはまりっぱなしなようですね・・・・。

    コメント by くまがい — 2007/3/4 日曜日 @ 11:23:58

  4. >オオタカ問題なんてまさにそれで、20年以上もはまりっぱなしなようですね・・・・。

    タメになるコメントをありがとうございます。
    自然に対する意識がストップしたままの状態の人たちがほんとうに多いものですね。

    熊で歩いてみると、「クマタカ」がほんとうに多くみられますよ。
    巣もいっぱい…

    コメント by gaku — 2007/3/4 日曜日 @ 15:22:56

  5. 恐れながら塾長、↑のコメント

    >熊で歩いてみると、「クマタカ」がほんとうに多くみられますよ。
    巣もいっぱい…

    は、「クマタカ」でなく、「オオタカ」の間違いですよね・・・。

    コメント by もっち — 2007/3/5 月曜日 @ 0:19:57

  6. >もっちさん

    クマタカは、ちゃんと見ればかなりたくさんおります、よ。
    まさかという浅い山にも、営巣しています。

    いま、小生は山陰地方にきています。
    松江市のネットカフェからつないでおります。
    神出鬼没と昔からいわれておりますが、本日もクマタカ目撃しました。

    コメント by gaku — 2007/3/7 水曜日 @ 18:38:19

  7. えっ!塾長、そうなんですかっ?
    オオタカの話題でしたし、僕もオオタカは頻繁に見かけるので、てっきりオオタカのことだと思い込んでしまいました。

    >クマタカは、ちゃんと見ればかなりたくさんおります、よ。

    う〜ん。これは、以前からある程度の数がいたということでしょうか?
    それとも、オオタカのようにうまく環境に適応しながら、増えつつあるということなのでしょうか?
    イヌワシ、クマタカと聞くとどうしても個体数が少なく絶滅危惧というイメージが先行してしまいます。

    コメント by もっち — 2007/3/7 水曜日 @ 22:49:59

  8. 私は山奥を主な活動場所にしているので
    クマタカはときどき見ます。
    オオタカに遭うことのほうが、回数は少ないです。

    コメント by 石田健 — 2007/3/8 木曜日 @ 3:14:23

  9. こちらはかなりの都会ですが、冬季でしたら毎日のようにオオタカが見られます。

    コメント by stma — 2007/3/9 金曜日 @ 1:44:55

  10. やはりオオタカの方が「里山の猛禽」なのでしょうね。
    その結果、住宅開発中止の切り札にしやすい・・・と。

    コメント by くまがい — 2007/3/9 金曜日 @ 11:03:39

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