なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2007/2/14 水曜日   調査

長野県下の「クマ棚」探し

北信濃の山

ここ2週間ほどで、ほぼ長野県全域のクマ棚をさがし歩いてみた。

車には厳寒用の寝袋、ガスコンロにインスタントラーメンと真空パックの餅を積み。

とにかく、県内全域を急ぎ足でチェックして歩いた。

その結果は、長野県下でも北信地方にはクマ棚が少なかった。

中信、南信地方に多くみられた。

しかし、長野県下全域には昨秋のツキノワグマの出没が相次いだ。

これらを鑑みても、クマ棚と人里への出没を説明することは困難と思われた。

ドングリの実りに関係なく、ツキノワグマたちはどの地域にも多数が出没していたからだ。

これは、現代のツキノワグマにとって「人里」は特別な世界ではなくて、彼らには当たり前の行動圏として位置づけていることなのだから、ドングリと結びつけて考えないほうがいいのではないかと思った。

若いドングリ林

新潟県へも入ってみたが、新潟県の南部にはほとんどクマ棚も見られなかった。

それなのに、信濃町の高速道路沿いにいきなりクマ棚が出現してくるのは、車両や人家や人間という現代社会では考えたくないような「人工物」をクマたちが平気で受け入れている事実を知ってまさに新タイプの野生動物像を再確認できた。

このことは、特異なことではなくて、ごく当たり前の現代の熊像であると考えていいだろう。

こうして、大急ぎで長野県だけを見てまわったが、このあとの裏づけがボクには必要と感じている。

だから、これまで地元で見てきている「伊那谷」を地域差にブレることなく、再調査をしなければならないからだ。

一体何頭ほどのツキノワグマが生息しているのかを、ボクなりに大至急知らなければならない。

そのためにも、何箇所かのカメラ設置ポジションの地主を調べ、設置許可を得る時間がこれまたけっこうかかっている。

市町村の役場に行けば、地主がわかっていても、「個人情報」漏えいなどを盾にされてなかなか本心を分かってもらえない。

しかし、そこは「信用」で、なんとか進めてもいる。

そんな許可依頼だけで、片道1時間半もかかる地域まで何回もでかけてはようやく許可がもらえるような状態なのである。

野生動物を調べるにも、現代社会ではいろんな壁をクリアーしなければ一歩も前へ進めないことが多くなってきているのである。

それは、広い山林原野といえども、それぞれに私有財産としての「持ち主」がいるからである。そのところを無視しては、絶対にいい仕事もできないからだ。

写真上:長野県北部の山はドングリなどの広葉樹が長野県でも多いほうだ。しかし、クマ棚はとても少なかった。

写真下:ドングリ林は新潟県を含めておしなべて若い。樹齢10−20年のところをみると、この先10年以上にわたってクマにとってはすばらしい環境が待ち受けていることが推定できる。

(from/ gaku )

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1件のコメント

  1. 寝袋持参で車中泊という調査スタイルだと、実に効率よくフィールドワークの成果があがります。
    私も、春にコゲラの調査で、ほぼ2週間、そうします。各地の山里の暮らしぶりが実感できる副産物もあります。
    夜間や日の出前の動物の動きが重要な奄美大島での調査スタイルも、それに近いものです。

    納得の結果を詳細に知りたいというのが研究者の願望ですが、それは写真家の宮崎さんにお願いするわけには参りません。

    まずは、長野県下の現状認識について、私の主観的な宮崎さんに対する信頼度が増しました。

    Comment by 石田健 — 2007/2/15 木曜日 @ 2:05:11

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