なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2011/4/13 水曜日   ツキノワグマ日記

福井県のツキノワグマ事情

中国自動車道の佐用JCTを通過しているときだった。
カーブを曲がっているときに、200mほどのところに一瞬ではあるが立派なクマ棚がいくつかあるように見えた。
しかし、それ以上わき見運転をすることのできない道路事情だったので、最終確認ができなかった。
気になったが、あと1週間もすればもう一度ここを通るから高速を降りて確認すればよい、と考えた。

後日、その「クマ棚」を確認した。
佐用GC近くの「末谷」という集落に、たしかにしっかりとしたクマ棚が10個ばかり連続していた。
やはり、こんなところにも高密度でツキノワグマは出没していることが分かった。
もちろん、周辺地域にもまだまだ痕跡が認められた。

そのまま再び、中国道から名神高速へ入って北上した。
神戸市付近の六甲山だって、しっかり調べればツキノワグマは充分に生息しているだろうという林層が遠見できた。
そして、京都市付近だって丁寧に探れば充分にツキノワグマがいるであろう山野が続いていた。
さらに琵琶湖右岸を走れば、遠方にも深く見事な山並みが続く。
やがて正面に伊吹山を見れば、もはやツキノワグマは紀伊半島までも「孤立群」とはいえない、とオイラにはいえた。
伊吹山から、養老山系、そのまま鈴鹿山系へと険しく大きな山容が連なり、それは紀伊半島へと流れていくからだ。
まさに、自由に行動する野生のツキノワグマの通行を孤立的に遮断するものはなにもないではないか。

伊吹山からは西に舵をとれば、日本海方面に京丹後、そのまま山陰の豊岡市や養父付近、そして鳥取、島根へとさらに深く大きく山容は続く。
もちろん、そのすべてをツキノワグマは移動できているから、中国地方もまったく「孤立群」ではない、のである。

伊吹山から北陸自動車道へハンドルを切れば、まもなく「賤ヶ岳SA」がある。
この付近のツキノワグマ事情は数年前に当ブログでも伝えているが、今回も「賤ヶ岳SA」から随所にツキノワグマの生息を身近に感じられた。
そして、「杉津PA」にはいり、敦賀湾を望む。
なんと、杉津PAのすぐ下にも一箇所ツキノワグマがクヌギの木に登った跡が目撃できた。
左手に広がる「もんじゅ」のある雪山の半島もなかなかにいい山容を見せているから、これなら海岸線にまでツキノワグマは出てきているものと思った。

さらに北陸道を北上すれば、今庄トンネルの入口にびっしりとクマ棚が目撃できた。
そして、今庄ICの出口にある左手ドングリ林にも高速道路から丸見えにクマ棚があるではないか。
たぶん、この高速道路を大勢の人が車で走り、そのなかにはツキノワグマに少なからず関心のある人もいるだろう。
しかし、それらどれだけの人がクマ棚に気づいているのだろうか?

車はさらに「北鯖江PA」へと入る。
ここで、「天ぷらうどん」でも食べれば、テーブルの窓越しに見えるドングリ山にも、ツキノワグマがかなり頻繁に活動していた痕跡が目にとまる。
双眼鏡で細部を確認すれば、クマが樹上からどのような視線で高速道路やPAを覗いていたかといった表情までもが目に浮かぶ。


ここでオイラは、福井ICで降りて大野市へ向かうことにした。
高速道路をこれ以上走らなくてもいいと思ったし、昨秋の大量出没でニュースソースとなった大野市や勝山市の周辺環境を見ておく必要があったからだ。
地図をみれば、そのまま九頭竜湖を経て岐阜へと抜けられる。
岐阜へ抜けて飛騨高山経由か東海縦貫道で帰宅すればいいと考えた。
飛騨高山から北アルプス周辺はすでにすべて調査済みだから、時間によっては東海縦貫道路の選択となろう。


(大野市に向かう途中の福井市篠尾町付近にもツキノワグマの行動痕跡が遠見できた)


(大野市内をさらに岐阜の山越えを狙って雪山を望む)

大野市に入って、ビックリした。
大きな盆地だが、その周辺の雪をたっぷりいただいた山容は何なのだ。
重厚で険しく、ツキノワグマを大量に育んでいるではないか。
この重厚な山容は、伊吹山にもつながっているし、飛騨地方、白山連邦にもすべてが地続きである。
昨年(2010年)は、大量出没をピンポイントで騒ぎたてていたが、これならべらぼうな数のツキノワグマを周辺地域に擁しているではないか。


(大野市内から岐阜方面の山容をみる)

(白い雪山の麓には勝山市がある)


(大野市や勝山市の状況は、地形を目撃すればオイラには一瞬にしてツキノワグマの行動が分かるから、奥山といわれる九頭竜方面へR158号を急ぐことにした)


(R158にはこんなバス停もあったが、いやはや九頭竜ダムにいたるまでにも、ツキノワグマの出没痕跡はいたるところで観察できた)


(谷戸口バス停の近くには、イノシシの死体もあった。どのような理由で死んだのかは不明だが、これは自然死であることにまちがいなかった)


(カーナビは、この付近を指していた)


(樹種が不明だが、こんなところにも見落としてしまいそうな小さなクマ棚もあった)



(いやはや、奥山にもツキノワグマはどっさり生息するのである)


(こんなところは、目利きでないとまずは見落としてしまうだろう)


(道路のすぐ上にもツキノワグマはドングリを食べにやってきていた)


(九頭竜ダムサイドにはサクラの木が植えられているが、人間は花にしか関心がないけれどツキノワグマは時期がくれば「サクランボ」を提供してくれていると感謝しているにちがいない。このような環境でのサクラの植樹は立派な「餌づけ」、だからである)


(九頭竜ダム周辺の山は、まさにツキノワグマにとっては楽園の生息地。見渡す限りのドングリ林が続いている)


(九頭竜ダムを経て、岐阜へと降りていくとこんなところにも痕跡が。もはや、福井の北陸道付近から奥山まで、ツキノワグマはびっしりと生息していることが分かるではないか)


(こんなドライブインもあったが、こういうところで主人から話を聞かなくても理由はすぐに分かってしまう)

と、まあ、1日もあれば近畿地方から北陸、中部の山岳地付近までオイラにはいっぺんでツキノワグマ事情を探ることができてしまう。
こうして見るだけでも、福井県だって中部山岳圏にまで山容が地続きでつながっていることがわかるし、そのまた続きは石川、富山、新潟、山形、秋田…、へと続く。
さらに内陸にいけば、北アルプス、南アルプス、富士山、群馬、栃木、福島、東北地方にまで見事に日本の山野は連なっていくことも容易に判断できるではないか。

そして、オイラは中部山岳地でこれらツキノワグマの痕跡をもう10年以上にわたって目撃してきているし、それらの痕跡と同時に山野内部に何年間にもわたって設置しているロボットカメラによってツキノワグマの動きを記録し続けている。
こうしたカメラで得られる結果と、周辺地域に目撃できる「痕跡」を見比べ続けることで、ツキノワグマがどれほど生息していてどのように行動しているかまで的確に分かるからだ。

そうした結果を踏まえてみれば、
「奥山が荒廃している」「餌不足」「ナラ枯れ」「孤立群」「絶滅する」「全国に1万5千頭」…
これらすべてのキーワードがいかにいい加減で、日本の自然環境を正確に目撃できない人たちがマスコミに無責任で流すことによって国民のすべてが「洗脳」されてしまっているのかさえも仕組みがみてとれる。
まったくもって、自然白痴ばかりの社会構造をつくりあげてきている滑稽な世の中が見えて面白い。
言っておくが、日本全国にツキノワグマはべらぼうに生息しているし、それを知ろうとする技術や発想力がいまの日本には「ない」だけなのだ、とオイラは断言したい。

(from/ gaku )

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6 Comments

  1. 大野の山々の重厚さ、先生から見られても相当なものなのですね。
    加えて、捕殺が少ないからか、生息数はおびただしい数だと思います。
    ただ、地元の方にお話を伺うと「ツキノワグマは怖いけど、何とか共存を」と願う声が多いことに驚きます。
    福井、特に奥越地方にはそういった風土があるのでしょうか。他県の状況は分からないのですが、人を恐れていないクマが多い気がします。

    今庄IC左手側ドングリ林のクマ棚には気付いていました。
    先月、細心の注意を払ってこの裏山に入りましたが、クマ棚以外にも足跡や糞などたくさんの痕跡を見つけることができました。

    京都市北部の山なら生息していると思いましたが、名神から見える山にもとは…住んでるのに恥ずかしいです。早速あたってみたいと思います。

    Comment by 素人 — 2011/4/13 水曜日 @ 17:32:18

  2. 九頭竜ダムの方までいらっしゃていたのですね。

    自分はとなりの石川県ですが、隣県と痕跡を比べてみたくなり、昨年は九頭竜ダム方面や丸岡方面などへも車を走らせました。ドライブインは惜しい事をしました。手前のダムで引き返してしまいました。途中の道の駅で古い看板は見た記憶が残っていたのですが…。

    勝山方面から河川に沿って、丸岡へ向かう途中の河川敷の木々にもビッシリクマ棚が確認できました。勝山から白峰に向かう国道157号線の集落・林道などの痕跡はかなり多く密集して見られ、こうした痕跡を探す初心者の自分にとって、とても参考になりました。
    http://yamanao999.seesaa.net/article/167849718.html
    これはほんの一部のものですが、これを見た時はまさに「となりのツキノワグマ」すぎる状態で苦笑して確認と記録の撮影をしておりました。日中はイノシシもたくさんいました。付近には老人福祉施設もあり、とても心配になるくらい痕跡の多い場所でした。

    石川県でも平野部でも出没が相次ぎ、主要道路である小松市などの国道8号線沿いの山でもしっかりクマ棚が見られます。金沢市でも市民がよく利用する低山や公園、僕の家からもひとつ見えます。いたるところに痕跡が残っており、生息域も広まっている事を感じます。

    クマ棚の多いところでは、数年前に居付いた個体や、小さな個体(http://photozou.jp/photo/show/20342/53603413・http://photozou.jp/photo/show/20342/52859271)が多い様にも感じ、クマ棚や爪痕は縄張りを示す手段なのかなぁと考えておりました。生息域も広まるという事は、縄張り争いに敗れた若い個体が新しい地を求めているものだと考えておりましたが、単純に移動して暮らす生態なのでしょうか。また、今年大雪が続きましたが、宮崎さんがここでも考えを述べておられた事と同じ事も想像しており、記事をみてとてもうれしくなりました。

    もともとは虫を探す散策で出会いたくないから、独自で調べていたクマの事でしたが、一般の情報と照らしてフィールドを見るのがとても面白いです。今後も気をつけながら、調べつづけてみたいです。

    Comment by yamanao999 — 2011/4/13 水曜日 @ 22:43:05

  3. そうですね、山は続いているんですね。
    先日、中央道、相模湖IC辺りで熊棚を発見。
    軽井沢から秩父、奥多摩から高尾山、丹沢から富士山まで……

    山、色とりどりでキレイな所が多いですね……

    Comment by 杢爺 — 2011/4/14 木曜日 @ 1:04:05

  4. しづが岳SAは、あの辺では例外的に夜遅くまで営業してるし一般道からも入れるので利用客は多いです。用心しないとマズイですね。
    クマリンの足跡を読んでいて、山を伝って日本全国を廻っていたサンカを思い浮かべました。

    Comment by そらとびねこ — 2011/4/16 土曜日 @ 9:42:01

  5. ■yamanao999 さん
    たったいま、カキコミ承認を確認した次第です。
    3ヶ月も経っての確認、失礼いたしました。
    鮮度のいい、観察をされていると思います。
    このまま、考察を膨らめていけばいいと思います。
    来年、講演で金沢まで行きます。

    Comment by gaku — 2011/7/23 土曜日 @ 23:04:22

  6. ■素人 さん
    いま、ここのカキコミを気づきました。
    北陸から京都、御在所…
    地域の方たちがほんとうに真剣に地元の自然環境を「たしか」な目で確認して探っていくしかありません。
    そのためのスキルアップを願う次第です。

    Comment by gaku — 2011/7/23 土曜日 @ 23:07:48

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