なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2007/2/3 土曜日   調査

『2−3年後にツキノワグマは絶滅する?』 その10 

ドングリ養生中

近所の一級河川へ散歩にでかけた。

その河川は、中央アルプスから流れでて天竜川へと注ぐ。

中央アルプスからはこれらの一級河川が、天竜川に向かってあばら骨のように何本かがある。そして、これらの河川のすべてにはツキノワグマがどこにでも出現して庭のようにしている。

その河川は、ここ数年工事が進められている。

昨年工事が完了したところを通り過ぎたら、「立入禁止」の看板が目についた。その理由は「ドングリ養生中」。

複眼発想のできるボクはこれを見て、

『っへ、面白いじゃん!』と思って写真に撮ってきた。

なぜならば、ツキノワグマの活動エリアにドングリを植えること自体が面白いからである。

スギやヒノキの人工林ばかりをつくってきたこれまでの山づくりの反動で、ドングリを育てる発想は現代風で至極自然な成り行きでもあろう。自然保護思想的には誰でもが考えてしまうことだ。

しかし、里に植林されたこのドングリは、20−30年後にはツキノワグマの餌になる可能性がないともいえない。

ここは、通学路も近くにあり人家もあって、2006年は現実に何頭ものツキノワグマの出現があった場所である。

クマたちは人家の庭先にまでやってきてクリやクルミを食べていった痕跡もいたるところに見られるから、このようなクマの動きは20−30年後もまったく変わらないだろう。

柿の実

柿などの実を放置しているから人里にツキノワグマがやってくるのだとして、「柿もぎ」が提唱されている。そのために、市民や高校生なども参加して、柿の実をクマが食べられないように「収穫」てしまうことがよいこととしてニュースにもなってきた。

しかし、その横でこのようにドングリが養生されていけば、次代には「柿の実」が「ドングリ」に代わっていくだけで、いずれ同じことが繰り返されることだろう。

クマの餌となる柿の実を収穫してしまうとか、クリやクルミなどの木を切ってしまって里山からなくせばクマの出現を抑えることができるといっても、これはすり傷に救急絆創膏を貼って安心するくらいの仮想自然保護なのである。それが、今日のツキノワグマの根本解決にはなにもなっていないことに気づくべきであろう。

こういう発想が繰り返されるかぎりでは、人身事故数は増えても、日本からのツキノワグマの「絶滅」はないと思う。

ドングリを植えたり、柿の実を収穫するまえに、今日の現代人は自然界をきちんと知ることからはじめなければならないのではないか。

写真上:自然界の報道写真家としては、30年先を読んでこのような写真も記録しておかなければならない。

写真下:伊那谷のある山村では、「柿の実」を収穫してしまうという発想もなくたわわに実った柿の実は冬鳥たちの餌になっていった。

(from/ gaku )

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7 件のコメント »

  1. 単に河川公園のような場所を造ろうとしているのか、または、ツキノワグマのためのドングリ養生なのか。目的は分かりませんが、河川敷(のように見えたので)やそれに近いような場所にドングリっていうこと自体が何か違和感がありますね。

    コメント by 和武! — 2007/2/4 日曜日 @ 19:06:20

  2. ここが、これからどうなっていくのか大変興味がありますね。これも一つの実験と考えれば、その結果が簡単に想像出来ないだけに大変興味深いです。ドングリを植えた人たちはそんなことはほとんど考えていないでしょうけれど。それにしても、一見、ドングリがあまり育ちそうにない場所のような気もして、なにも、ここに植えなくても、と思うのですが、きっと何か事情があるのでしょうね。

    コメント by TAGA — 2007/2/4 日曜日 @ 22:20:16

  3. >単に河川公園のような場所を造ろうとしているのか

    そうなんです。
    公園になるように植えていると思います。
    でも、確実に熊の通り道になっているところでもあります。

    >ドングリがあまり育ちそうにない場所のような気もして

    まちがいなく、ドングリは育ちます。
    そして、20年後には熊のレストランに必ずなります。

    コメント by gaku — 2007/2/6 火曜日 @ 8:53:22

  4. 広葉樹が大切といえばドングリばっかりの植樹。そんな造林地もこちらにあります。
    単一なのが面倒ではないんでしょうが、進入してきた丈夫な他の樹も大切にして、青写真をどうするか考えて欲しいですね。
    考えてないのかな?

    コメント by 粗忽鷲 — 2007/2/7 水曜日 @ 13:34:55

  5. 2月9日と10日、東京大学に全国からクマに関係する研究者や自治体の関係者の多くが一堂に介して、昨年の状況と今後の展望についてのフォーラムがありました。
    内容の濃いもので、宮崎さんが疑問を呈しておられるような多くの点について、まだまだ答えはわからない(科学者は事実に対して生真面目に取り組むので、また担当者は無責任なことは言えないという重荷があり、発言が慎重です)ものの、多くの有意義で前向きな報告がありました。
    フォーラムの内容は7月ぐらいに、報告書として刊行されますので、関心のある方は、ぜひ手にとってください。
    日本クマネット のホームページに、刊行されたらば掲示されるはずです。
    http://www.japanbear.org/

    コメント by 石田健 — 2007/2/12 月曜日 @ 8:30:49

  6. 11日は、有意義なシンポジウムでした。
    最後に提言が出されたのもよかったですね。

    ともすれば提言は「ネコの首に鈴を付けましょう」だけで「誰が付けるの?」までは論議されませんが、それは会場に来ている人間が判断すればいいことです。

    一般への提言・文部科学省への提言については俺がやります!

    コメント by くまがい — 2007/2/12 月曜日 @ 19:53:16

  7. 事情はよくわかりませんが、ある程度の大きさの苗木にしてから、どこぞへと植樹する目的で、苗圃として仮植えされているってことはないですか?

    コメント by 土生 — 2007/2/12 月曜日 @ 21:26:23

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