なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2011/4/8 金曜日   ツキノワグマ日記

中国山地のツキノワグマ事情


中国地方のツキノワグマは「孤立群」で生息数が少ないから、何とか保護をしなければならない。
いまの日本では、そんなツキノワグマ感が普通に語られている。
それに対して、だれもが疑問を挟まないし、そんなものなのかといった意見で容認しているようなところもある。

だからオイラは、そんな中国地方のツキノワグマも、かなり気になっていた。
ここは、世間の雑音をすべてリセットして、オイラだけの自然観で現地の環境を見ておくことも必要だと思った。

中国地方にはこれまで、山陽道や中国自動車道を何回か往復してきたし、鳥取や島根県などからの山越えルートも車で走って、周囲の環境は見てきている。
こうした観察から、ツキノワグマの「クマ棚」も実際に随所で目撃しているし、そう悲観的になることもないだろうと考えてきた。
そこで、3月中旬に中国自動車道を再度往復しながら、改めて見直してみたのである。

結論としては、中国地方には相当数のツキノワグマが生息していると断定できた。
そして、「孤立群」ではないことも確信をもって言うことができる。
それは、中部地方から山口まで、とにかく山野が連綿と続き、すべてがつながっているからである。それらの山野をツキノワグマは確実に移動できているから、まったく「孤立」なんてしていない、のである。
しかも、それらの山野の樹相は驚くほどにコナラ(クヌギ)などの林が広範囲に展開されていて、ツキノワグマの減少要因なんてまったく考えられないからである。

オイラが現地に暮らしていれば、「クマクール」を工夫して生撮影と超アイデアによるヘアーサンプルをばんばん確保するであろう。
今日の日本の野生を語る場合、セオリー通りの観察しか考えつかないようでは、いつまでたっても野生動物の実態はつかめないものである。
中国地方では、イノシシやニホンジカの激増は誰もが認めているように、ツキノワグマだって同じ土俵に生きている日本の野生動物であることを忘れてはならない。
それには、大胆な発想転換と行動力で迫らなければ、見えるものも見えてこないのではないか。


中国自動車道を走ってみれば、とにかく随所にコナラなどの広葉樹林が展開されている。
このような山容をみて、ツキノワグマがどこをどのように行動するのかそのルートを探るのも楽しみのひとつであろう。


山口県から島根県に入ってまもなくの上り線「深谷PA」。ここに立ち寄って西の山を双眼鏡で見れば、○で囲った範囲にかなりのクマ棚が目撃された。現場の山野に分け入れば、もっともっとツキノワグマの痕跡に出会えるにちがいない。


上り線の「吉和SA」に入り、営業をしていないガソリンスタンドの屋根越しに南西方向の山をみれば、○囲い付近にいくつかのクマ棚が目撃できる。山の深さからいっても、内部に入ればかなりの痕跡があることだろう。


「吉和SA」下り線の売店屋根越しに東をみれば、○で囲んだ付近にも若干のクマ棚が目撃できた。環境からみても、内部を丁寧に調査すれば相当数の痕跡を探すことができることだろう。


上り線の「筒賀PA」に立ち寄れば、反対側にある下り線のPA裏に立派なクマ棚が目撃できる。
PAトイレから60mくらいかも知れないが、このクマ棚では2~3日ツキノワグマが寝ていた可能性もある。


上り線を走ってくると、「筒賀PA」に入る手前のトンネル入り口(矢印あたり)には多数の立派なクマ棚が一瞬だったが目撃できた。あらかじめ存在が分かっていれば徐行できたが、とにかく高速だったので視野に一瞬飛び込んできただけであるが、まちがいなくかなりしっかりしたクマ棚が多数あった。


「筒賀PA」から北広島JCTまでの間で下り線の脇にも、クマ棚が目撃された。樹種は栗の木だったと思う。
これも、一瞬だったので徐行する間もなかった。


「クマ」注意標識は六日市IC付近だったと思う。
中国自動車道では、上下線共に、ここ一カ所だけの「クマ」の標識であり貴重品。


(from/ gaku )

コメント&トラックバック

13 Comments

  1. いや~見事にクマ棚だらけですね。参りました。
    クマ棚で寝ることもあるんですねぇ。バランスをとるのが大変じゃないのかな。。。と思ったり。
    今度実家に帰ったら、双眼鏡を持ってクマ棚探しに行ってみます。

    Comment by kana — 2011/4/8 金曜日 @ 20:17:25

  2. 実家が広島の田舎ですが、両親だけで暮らすようになったら早速、家の周りの栗や柿の木を切ってました。
    たまに里帰りするとさびしく思っていましたが、このサイトで切った理由が分かりました。

    Comment by yoshi — 2011/4/8 金曜日 @ 23:05:23

  3. ■kana さん
    ■yoshi さん

    そうなんです、クマはどこでも「となりのツキノワグマ」状態。

    Comment by gaku — 2011/4/13 水曜日 @ 10:30:35

  4. はじめまして。  昨年の秋に宮崎学さんの写真集を書店で3冊購入して、とっても感動しました。  特に、「クマのすむ山」の表紙には、泣かされました。本物のクマがまるでカメラマンのようで、それを、別に仕掛けた自動カメラで撮ってるなんて、考えられない技だと!凄く感動しました。
    しかも、方々でのクマ棚、糞や、熊の生態、行動をくまなく観察されているのには、只只驚きです。
    クマは、間伐もして、山を雑木林に戻してくれるんですね!せめて、柿や栗を食べさせてあげてください。

    Comment by kondou — 2011/5/21 土曜日 @ 2:11:08

  5. ■kondou さん
    はじめまして。
    拙著お買い上げありがとうございます。
    クマ意外のものでも、かなり視点を変えた自然の見方を提供していますので、別の本もぜひよろしくお願いいたします。

    Comment by gaku — 2011/5/22 日曜日 @ 8:12:55

  6. はじめまして。
    自分の祖母の家は山口県の山深くなんですが、ツキノワグマとの
    遭遇は結構頻繁にあるみたいです。
    まぁ数が少ないから保護しないと、とは言われているので
    何とか共存していかないとですけどね。

    Comment by ぽろ — 2012/8/29 水曜日 @ 0:35:21

  7. はじめまして。時々拝見しています。

    京都府北部ですが、つい最近これを見つけてびっくり仰天しました。
    ツキノワグマ出没情報(京都府)
    http://www.pref.kyoto.jp/shinrinhozen/welcome.html

    二年前から増えたのか、それ以前はデータが入力してないだけなのかは分かりませんが、とにかく北部は人の住んでいる所は軒並み目撃情報があるような有様。クマの足跡マークばかり。

    府の南部は少ないですが、だんだん南下しているように見え、今年は京都市の盆地内でも目撃されている。

    兵庫や滋賀や福井のこのようなものは見つけられませんでしたが、山は繋がってるんだから出ていないはずがないですね。中国山地から信州までず~とこんな状態なのでは?

    この地方出身ですが、子供の頃クマが出るなんて聞いた記憶がないですから。
    山里ならいざ知らず、舞鶴市内や宮津市内、小中学校、役場のあたりまで出没しています。与謝野町は役場のサイトに詳細な情報がありました。
    とにかく驚きました。

    Comment by なな — 2012/9/5 水曜日 @ 20:09:26

  8. こちらでは初めてでしょうか?兵庫県北部に住む者です。
    今年はクマの目撃が多いようですね。
    >ななさん
    県境なので京都府にも行くことがありますが、京丹後の子供達が通学時にクマ鈴を鳴らしているのを見て、現状を良く表していると思いました。
    兵庫県には「兵庫県立森林動物研究センター」があり、ツキノワグマを始め野生動物の調査研究をしています。
    そこに、目撃情報やマップ(2009年までですが)ありますよ。
    http://www.wmi-hyogo.jp/

    Comment by うりょ — 2012/9/6 木曜日 @ 9:19:33

  9. gakuさん、初めまして。
    いつも動物の視点からの情報を、写真入りで紹介頂き
    勉強させてもらっています。ありがとうございます。

    ななさんのおっしゃるとおり、京都では今年初めて大文字山でも目撃情報があったそうで、とても驚いています。
    比叡山でも目撃されました。
    大文字山と共に入山者が大変多く、すぐ下が町なので、
    この秋に人との事故がないかとても心配しています。

    先日、移動ルートを探りながら痕跡を探してみましたが
    私にはよくわかりませんでした。
    gakuさん、京都へお越しになる時があれば
    ぜひこれらの山を見ていただきたいです。

    Comment by ふじこ — 2012/9/7 金曜日 @ 1:34:57

  10. ■ぼろ さん
    ■なな さん
    ■ふじこ さん

    この「ツキノワグマ事件簿」ブログも最近は滞っていますが、それだけボクは多忙なのです。
    実は、いま皆さんのお住まいの地方を精力的に見て歩いているから、です。
    あるところに、家を借りて、信州のツキノワグマとの生態の相違点を見ています(これが、めちゃめちゃに面白いのですが)。

    ボクが予測しているとおり、すごいことになっておりますねツキノワグマ。
    これ、あと30年もすれば、イノシシやシカのような状態になる可能性がありますよ。
    そのときに、一般市民や行政が慌てても遅いと思います。
    30年後には、ボクは生きていませんので、「いま、何をすべきか」ということで歩いています。
    いまの日本では、大胆発想による「考察」が必要だからです。
    中部から西日本をつなぐルートの京都、滋賀… あの辺ではすでに完璧な定量調査をしていなければならないのに、関係者はそのことにもまったく気づいていなのも悲しいところです。
    毎週のように、名神高速などを走りながら山並みを見てボクはいつもそう思いながら、何ができるのか作戦を練っているところです。
    近いうちに、確実にボクは行動を起こしますからお待ちください。

    そうそう、10月下旬には鳥取県でツキノワグマと現代社会にからめての3時間講演をします。
    「目うろこ」と「発憤」の檄をとばしてきます、から。

    Comment by gaku — 2012/9/7 金曜日 @ 8:52:53

  11. うりょさん

    ありがとうございます。兵庫県もすごいですね。
    今年の目撃情報もありました。

    ふじこさん
    そうなんです。大文字や大原や岩倉、修学院まで出てきてますね。
    異様に多かった一昨年でさえ出なかったのに、今年はもう目撃情報があります。とても心配です。

    gaku様

    見ていただいてるとは、うれしいです。

    行政はどこも保護を謳っていますが、絶滅どころか、とんでもないことになるんじゃないかと恐ろしいです。

    与謝野町が詳細な目撃情報を出しているので見てみましたが、2010年に371の目撃情報があったそうで、秋になってどんぐりどころか、夏にすももやスイカやたけのこまで被害にあっています。家の中でこぐまと遭遇もありました。

    このままでは子供を外で遊ばせるのは心配でしょうし、老人ばかりの限界集落では暮らしていけるのか・・

    山から薪を取らなくなって40年余り経ちます。山の木が実を大量につけるようになるのにどれくらいかかるのでしょうか。
    植林でどんぐりとか餌が亡くなってるからクマが下りてくるっていうけど、生活実感とかけ離れてる。せっせと植林してた頃はクマなんか出て来なかったのに、植林しなくなってから30年ほど経ってか出るようになった。

    たくさん実をつけるほどに木が大きくなり、餌が増え、クマも増え、どんぐりがたまの不作の年に、増えすぎたクマには餌が足りない状態になってる・・豊作の年はこぐまが増え・・
    奥山に収まり切らないほどクマは増えてしまったんじゃないか?

    「絶滅の危機にある」って本当なのか知りたいです。

    Comment by なな — 2012/9/14 金曜日 @ 1:14:53

  12. 岡山県の東から西へ中国道を最近通って感じましたが、私の住む付近の熊情報と、中国道から見える横断した中国山脈を見ただけでも、絶滅という言葉に疑問がでてきます。

    鹿ですら半世紀たたない間に、他県の兵庫まで行って猟師が鹿を撃ちに行かなくても手にあまるくらいになってますからね。

    人が関心がないうちも山では日々、時間は流れています。

    ここで沢山そのヒントがあるので、日々学ばせていただいてます。

    Comment by ヨタカ — 2012/9/14 金曜日 @ 15:50:37

  13. ななさん

    おっしゃっていることは、すべてイマの時代に正論だと思います。
    このような今日のツキノワグマの正論をきちんと伝える学者や研究者、専門家がいませんので、行政もまったく新しい発想も持てないのが日本国の現状でもあります。
    (それだけ、すべてにおいて技術がない証拠ですが。)

    >兵庫や滋賀や福井のこのようなものは見つけられませんでしたが、山は繋がってるんだから出ていないはずがないですね。中国山地から信州までず~とこんな状態なのでは?

    ↑ その通りなんですよ。
    なのに、中国山地は孤立群で絶滅するから守ろうの一点張り。
    このような「孤立群」と発信した大本営が面白くて仕方ありません。
    ちょっと視点を変えて見るだけで、ツキノワグマなんてどっさり棲める環境にあるんですが、日本の自然環境と時代性とクマの生態に気づけないと、こういう体たらくになってしまうのですよ。

    この先、30年。
    オモシロイことになりますよ、日本のツキノワグマ。

    Comment by gaku — 2012/9/16 日曜日 @ 14:06:12

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