『2−3年後にツキノワグマは絶滅する?』 その7
長野県伊那谷の中央アルプス山麓には、「猪垣」の記録が残っている。
猪垣とは、イノシシなどの野生動物が農作物を荒すのを防ぐために築いた垣根のことである。これらの猪垣跡は、伊那市から飯島町まで20数キロの地域にわたって、ところどころにみることができる。
伊那市に残る猪垣の歴史は元禄前とも言われ、寛保元年(1741年)に修理をし、文化5年(1808年)には大規模な修理をしたことが記録に残されている。
いまから200−270年ほど前に、伊那谷の地域住民もイノシシなどの獣害に悩まされていたことがこれでよくわかる。耕作地にイノシシやシカなどを侵入させないために、農地周辺を囲むように土を掘り下げたり石垣を積んだり、さらには木材で柵をしたのだった。
こうして野生動物たちと戦ってきたのだが、住民たちはただ防備にまわるだけでなく積極的に捕獲もしていたにちがいない。その捕獲方法は、「落とし穴」であったり、石を積み上げてその重さで圧死させる「石罠=押し」だったり、けもの道に槍を仕掛けてはね罠の原理で突き刺す「据え槍」だったであろう。住民が知恵を使ったこのような猟法は、けもの道を妨害して罠まで誘導する工夫がとられていたことも容易に想像がつく。これらの罠は、現在ではすべて禁止されている。捕獲効率がいいことと、人間に対しては極めて危険だからである。
しかし、この知恵と技術を総合して応用すれば、すべて無人撮影の「カメラトラップ」にも応用ができる。
こうやって考えてみると、平成時代の今日でも猪垣のあるところにはたくさんの野生動物たちが出てきて悪さをしている。イノシシはますます激増しながら猛威をふるっているし、ニホンジカもすでに数を増やしはじめてきている。そして、サル、ツキノワグマもここ10年くらいの間には、激増といっていい動きを示しているからである。
こうした動きに対処するべく、地域住民は昔の「猪垣」に代わって電気フェンスや防獣ネット、波トタンなどで防戦してきた。そして、くくり罠や箱罠で獲物を直接捕まえることもやってきている。まさに、200−300年前の再来を近代パーツで補っているのである。
ここで時代を見比べて考えてみると、いまから半世紀ほど前にはイノシシもシカもツキノワグマも、これほど猛威をふるってはいなかった。昭和の後半から平成時代にかけて、明らかに増加をしてきているからだ。時代によって、このように急激に増減を繰り返しているところをみれば、ツキノワグマの近年の動きはやはり「増加」に向かっていると考えていい。
2−3年でツキノワグマが絶滅どころか、この先10年ほどは激増期に向かっているとボクは考えている。そのためにも、ここ2−3年の調査が基礎となるので、楽しみでもある。
写真上:伊那市に復元されている猪垣。右手が山側で左の明るいほうが農地側。
写真下:当時の模様がわかりやすく絵図で示されている。



私が住む岩手に生息するクマの推定生息数が最近、県から発表され1343頭〜2097頭(平均1720頭)だそうです。 因みに平成13〜14年の推定数は950頭〜1250頭(平均1100頭)でしたが、繁殖率や捕殺数等を考慮し算出した昨年の推定平均生息数は820頭前後と言われていました。 ところが、ある地域でヘアートラップによるDNA鑑定の結果、推定生息数65頭とだったのに対し132頭のクマが確認されたのです。 これはトラップに来て毛が採取されたクマの数だけですから実際の生息数はもっと多い訳です。 そして5年ぶりに新たに報告された推定生息数が上記の大幅増の推定生息数です。 しかしこの数字にも疑念を感じます。 岩手には生息地域が北上山地と奥羽山系の2地域があります。 平均数ですが、北上山地では700頭から1270頭と570頭の大幅増なのに比べ奥羽山系では400頭から450頭と50頭の微増です。 これは何故なのでしょうか。 確かに山の荒廃は奥羽の山々も酷い状態ですが、北上山地の方がそんなに繁殖に適しているのでしょうか。 私にはその様には思えないのです。 奥羽山系は山の懐も深く、又、降雪が早く多雪で容易に採食地や穴に近づくことは難しいため狩猟圧は少ないはずです。 なのに何故奥羽は微増なのでしょうか。 何を基に生息数を弾き出したのか疑問です。 岩手では、昨年から奥羽山系でのヘアートラップによる調査が進められております。 その結果が楽しみです。 最後に私は数が増えたからと安易に捕獲を容認することには反対です。 特に罠を用いたクマ駆除は制限が必要だと思っています。 そして現在生息しているクマが、そして今後増えてゆくであろうクマたちが人間との軋轢を少なくし生息できる環境になり、それが維持されクマや人間の双方にとって住みよい環境になることを切実に念願するばかりです。
コメント by コブクマ — 2007/1/15 月曜日 @ 20:48:48
はじめまして。
クマの実態を机上でなくて実際に見て知って確認していくことは、どんな方法であれ重要なことです。
そのことを、ボクは一貫していい続けています。
これは、野生動物すべてにいえることです。
岩手でも、確実な数字が出てくることを期待しています。
罠を用いた捕獲駆除は、確かに参考にしなければならないことがたくさんあります。
それと、捕獲してむやみやたらに「お仕置き放獣」することにも問題があり、ボクは反対します。
お仕置き放獣をしたのなら、その個体を一生にわたって追跡するべきです。それができないようなら、安易に捕獲して放すべきではありません。
クマが出没しても、そのままにするべきです。
(もっとも、お仕置き放獣すると、関係者には補助金がでるのです。それが「研究」という名をかえたアルバイト資金になっているところもあります、が。)
コメント by gaku — 2007/1/27 土曜日 @ 16:02:06
こんにちは、始めまして。
時々お邪魔し拝見させて頂いております。
私は、熊猟と鹿猟を通して三十数年間動物と関わって参りました。
宮崎さんが、今後クマやシカが増加するとお話していることを、私も岩手で実感しております。
その事例のひとつですが、岩手の温暖な南沿岸部には日本鹿の北限の生息地と言われシカが生息していましたが、十年ほど前頃から猛烈な勢いで生息地域を内陸や北沿岸部へと広げています。
今猟期の状況から判断すると本来の生息地であった地域の周辺市町村の生息数は、十年前の数倍以上ではと感じています。
今後は全体の生息数増大により毎年の出産頭数が更に増えることは必定であり、生息地域の拡大と共に人との軋轢を深めることになるのではと考えております。
これと同じく見込生息数が上方修正された岩手のクマですが、昨年の様な異常な捕殺が今後無ければ冬山に分け入り熊狩りを行なう狩人が絶滅寸前ですのでクマが増加することを否定する要素が見当たらないのではと考えております。
お仕置き放獣の効果については、数日で捕獲地に舞戻ることが多いと聞いていましたが、昨年県内TVニュースで放獣経験クマが罠の入口に近づくが罠には入らない映像を見てシッカリ学習しているなぁ〜と感心しながらも複雑な心境で見入ってしまいました。
これからもホームページ楽しみに拝見させて頂きます。
コメント by コブクマ — 2007/2/1 木曜日 @ 18:45:38