なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2011/1/19 水曜日   ツキノワグマ日記

ツキノワグマ異常出没と雪との関係

今冬は、豪雪のニュースが多い。
日本海側を中心に、各地の降雪状況は例年より本格的らしい。
鹿児島でも積雪があったというから、今冬は確かに大雪といっていいだろう。

実は、この豪雪ニュースをオイラはひそかに待っていた。
それは、昨年のツキノワグマの異常出没はドングリ不足というより、この大雪に関係しているのではないかと思っていたからだ。

野生動物は、半年先を読みながら行動していることはいろんな動物観察で分かっている。
リスやノネズミは、冬の季節に向けて晩夏から食糧確保に活動している。
貯食しないフクロウをはじめとする肉食、雑食動物は、体内に脂肪分としてエネルギーを蓄えはじめるのも晩夏からである。
その食欲は、秋には異常なほどに貪欲になりよく食べる。

ツキノワグマも、積雪などを充分に予測しながら晩夏以降の季節を体内エネルギー確保に余念がない。
このため、冬を前にして大きく動く気圧の変化などが、ツキノワグマの精神心理に微妙に作用しているのではないか、と思っている。
だから、焦りもあってなかにはパニック行動を起こしながら、街場にも出てくる個体のいることが考えられる。

そして、ツキノワグマがこのように大量出没する年に限って、信州で言えば「熊棚」が多く見られる年ともなっている。
この熊棚は、ある意味では熊自身の食物調達の結果でもあるが、植物生態から考えればツキノワグマが「剪定」作業をして樹木に刺激を送り翌年以降の「実なり」をよくさせている、ということも充分に考えられる。
なので、ツキノワグマの大量出没は単なる「餌不足」という言葉で片付けてしまうのではなく、もっとツキノワグマ自身や樹木たちの総合的生態に目を向けて判断していきたいと考えている。

野生動物たちが気圧を読むという行動を観察するには、積雪地帯ならばまずスズメなどの野鳥を見ていれば分かる。
気圧が下がって、これから先24時間以上にわたって吹雪が続くようなときには、地面に近いところを「ねちねち」と普段の行動とはまったく別な独特の餌さがし行動をするのがよく観察できるからだ。
また、キツネやテンなどは、本格的な吹雪がはじまるであろう前は、どんなに天候状態がよくても出歩かない。
そして、どんなに吹雪いていても、あと数時間で回復するであろうときには、彼らは視界の利かないような吹雪のなかでも出歩くからである。

これらの行動観察をすれば、野生動物がいかに予知能力を備え、考えて、行動しているかがよく分かる。

基本的には冬眠生活をするツキノワグマだから、半年先からそうした気圧や気候の変化を充分に予知しながら自らの行動に変えているとも思える。
しかも、大雪は数年置きに繰り返され、さらに豪雪は10年単位くらいにやってくるように自然界はちゃんとプログラムしているからである。
このことは、10数年前にフクロウの撮影をやっていて気づいたことだった。

■ちなみに、気象庁からの降雪データによれば。
クマ出没の多かった年の1-2月の降雪量は、2004年が少なめ、2006年と2010年はかなり多かった。
多出没年の翌冬の1-2月は、2005年が並、2007年が最少となっているが、前回大量出没した2006年の1-2月は記録的大雪で、その翌年の1-2月は記録的な少雪。
この1-2月の降雪量が関係しているとすれば、今年の1-2月に多くなれば2011年も出没が続くのかもしれない。
しかし、まだ降雪との因果関係はよくわかってないので、「ドングリ」だけに結びつけるのではなく、こうしたことも注意深く視野にいれながら今後も総合的に見ていく必要があろう。

写真:
1)民家の庭先でクリを食べていったツキノワグマの痕跡。超ワイド(11mm)レンズで撮影しているからパースペクティブがはたらいているけれど、木から民家までは10m。

2)
熊棚に雪が積もった。

3)
左上、クヌギ。
右上、オニグルミ。
左下、クヌギ。
右下、ウワミズザクラ。
地域、場所によっても熊棚には表情がみられる。

4)
吹雪の前触れには、身近な野鳥たちの行動を観察するだけでオイラにはその後の天候状態を予測できてしまう。

5)
吹雪が回復することを知るキツネは、吹雪中でも出歩くから、その行動裏付けは体毛をみればよく分かる。

(from/ gaku )

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3 Comments

  1. くまきちと申します。いつも興味深くブログを拝見しております。私は、福島・栃木をフィールドとしながら、クマ、樹、動物、昆虫のあれこれを見に行っています。さて、今回の豪雪とクマ棚の記事、「おーっ」と思いました。私が四季を通じて訪れている福島、栃木の山々のなかで、今年は、いつもは見られないところにまで、たくさんのクマ棚が観察されています。ほんとうにすごい数です。遠い山の上まではわかりませんが、林道沿いのクマ棚はヤマグリが多いようです。単純な私は、意外とここらはクリやドングリに不作ではないのだと考えていましたが、とにかく見つかったものを無我夢中で食べて冬の眠りにはいったのかも知れませんね。私も今後、注意深くクマ棚と雪の関係を見てみたいと思います。1/17の会津方面は豪雪でした。「クマ棚製作者」たちが、ぐっすり冬眠できて、気持ちのいい春を迎えられるといいと思っています。

    Comment by くまきち — 2011/1/21 金曜日 @ 10:04:21

  2. あれだけ大雪とニュースで大騒ぎしてるのに、12月にちょこっと降った雪がかすかに残っているだけです。仲間はずれ気分。
    秋にもニュースで大騒ぎしていたのに、ここらではクマはあまり出ませんでした。これも仲間はずれ気分。

    うーんgakuさん説が正しいのか?

    下伊那の天竜川東側です。

    Comment by あーる — 2011/1/21 金曜日 @ 14:49:14

  3. 那須塩原市塩原の温泉旅館街にクマがのこのこ出てきて射殺されたそうですね。
    冬眠中に寝ぼけたのでしょうか。
    それとも冬眠から覚めたのでしょうか。
    今ごろ起きたらそれこそドングリもないでしょうに。

    Comment by 久保の家 — 2011/1/25 火曜日 @ 18:27:52

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