なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2006/12/31 日曜日   調査

『2−3年後にツキノワグマは絶滅する?』 その2 

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12月18日の読売新聞社会面トップでは、

「捕獲激増 ツキノワグマ」「9割捕殺『何とかして』=専門家『絶滅の恐れある』

という見出しで、2006年度の4月から11月末までの熊捕獲状況を報じていた。

これによると、全国で5064頭が捕獲され、内4577頭が殺された。

専門家は、

「今年のペースのままだと、絶滅の恐れもある。捕殺を最小限にする仕組みを確立するべきだ」と指摘している。

捕獲急増は、「わなによる捕獲技術が向上し、簡単に捕まえられるようになったのも一因」としている。

しかし、狩猟者によれば、変わったのはクマのほうで罠は昔とまったく変わらないという。

30年前のクマは個体数も少なくほんとうに用心深くて、罠も警戒して捕まりにくかった。だが、ここ10年くらい前から簡単にクマが檻にかかり、狩猟者もあっけにとられている。

ここでは、1991年の環境省外郭団体が調査推定した8400〜12600頭のツキノワグマが全国頭数の基準となっていた。

新タイプのクマが登場してきて分母が確実に大きくなっているから簡単に檻に入るまでになってきているのに、どうやらそこには手をつけたくないのかもしれない。

くわえて専門家は、

クマは2−3年で1−2頭しか出産せず、繁殖力は低いとするが、現代のツキノワグマはニホンカモシカが急増した背景とよく似ている。ニホンカモシカだって1頭しか出産しないが、分母が大きくなれば、あるところから飛躍的に「増加」したからだ。そして、食害問題を引き起こし、捕殺駆除もされて、現在では一定量で安定推移している。

そして、

12月25日の夕方NHKラジオでも、熊問題をとりあげて全国放送していた。

ここに登場していた人物は、北海道のヒグマ博物館学芸員といわれる女性だった。

放送を聴いて印象を受けたのは、

専門家なのに冷徹な視線を忘れてセンチメンタルに終始していたことだった。

『ツキノワグマは全国に15000頭くらいしか生息していないのだから、そのうちの5000頭を捕獲して殺してしまったのは、全体の半分いや三分の一が現実にいなくなったことになる。これでは、あと2〜3年でツキノワグマは絶滅してしまう。どうか、檻をかけて熊を捕獲しないでほしい。』

切実に訴えてはいたが、国民がいちばん求めている全国に何頭いるのかという現在のツキノワグマ問題を語るには説得力に欠けていて、返って社会に混乱をきたすだけだとボクは思った。

しかも、北海道でヒグマを研究している人が、ヒグマとは別物の本州のツキノワグマ問題に登場してくること自体がミスキャストであり、『長野県では、○○…らしい』という表現を何回か繰り返していたところをみれば、実際には長野県に足を運んでツキノワグマを調査していないようすだった。

「専門家」として全国放送のNHKラジオに登場するのであれば、「絶滅」という悲観論より先にいま現在のクマ状況をしっかりとらえて「私がツキノワグマの正確な頭数を調べてみます」ということくらい言ってほしかった。そのほうがはるかに前向きであり、専門家として信じられると思う。

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写真上:イノシシの捕獲檻に入ってしまったツキノワグマ。30年前は、このようなことは非常に珍しかったが、近年では普通に起きている。

写真下:兵庫県の国道を走っていたらこんな看板が目についた。

(from/ gaku )

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4 件のコメント »

  1. 本当にクマは増えてるんですかね?
    実際のところ正確な答えはないのでしょうね。僕も何人かの人に実際の頭数はどのくらいなのか尋ねた事がありますが、正確な頭数を答えられる人はいませんでした。
    全てのクマにレーダーでもつければ出来るのでしょうが不可能ですね。
    自然の営みを管理できるほど、人間は優れていないでしょう。
    全ては、結果でしかものが言えないのは世の常です。
    しかしこの捕殺状況に懸念を持たないとしたら、どうかしていると思います。
    長野県で捕殺されたクマの数(環境省統計)を見ても、2004年 102頭、2005 62頭、2006年 549頭(11月末)という結果です。http://www.env.go.jp/press/file_view.php?serial=8902&hou_id=7827
    大繁殖したからこういう結果になったと、このデータから推測できる有識者がいたとしたら驚きです。これが異常事態でなくて何なのでしょうか?
    僕はクマは森の健全度のバロメーターであると思っています。そこから溢れ出したクマの数が多いと言うことは、森が健全ではないという事なんだろうと思います。

    コメント by poi — 2006/12/31 日曜日 @ 17:07:53

  2. あけましておめでとうございます。
    大晦日の宮崎さんのコメント、筆致が冷静で研究者の私も好感が持ちました。
    被害を防ぐこととクマの個体群(集団全体)を保全することを両立できることで、基礎となる個体数をより正確に推定していくことがたいせつです。
    放送で話をされていた方は想像がつき、私はいくつかの点で尊敬している方ですので、この記事のことと私の意見は、お伝えしておきます。

    コメント by 石田健 — 2007/1/1 月曜日 @ 7:54:40

  3. 私は、クマそのものではなく、クマも棲んでいる日本の森林全体のことを考えています。
    似た立場で、森林総合研究所から新潟大学に移られた三浦慎吾さんの講演要旨が
    http://www.pref.ishikawa.jp/sizen/kuma/index.htm
    の平成17年のシンポジウムのところにあります。ごらんになってみてください。
    今年の2月11日に、東京大学弥生講堂でのシンポジウムで私もお話しますので、おいでになれる方はおいでください。
    http://www.japanbear.org/

    コメント by 石田健 — 2007/1/1 月曜日 @ 8:04:23

  4. すみません。て に を は をうまく編集、再投稿できないので、訂正記事です。

    好感 を 持ちました。
       ^^

    保全すること は 両立できる
           ^^

    From: 石田健 * 2007/01/01 07:54

    コメント by 石田健 — 2007/1/1 月曜日 @ 8:28:50

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