なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2010/11/15 月曜日   ツキノワグマ日記

四国のツキノワグマ事情

講演と現地撮影会があって、四国は高知県の馬路村へ行ってきた。
馬路村は、「ゆず」で有名な村なので、いつか一度は行ってみたいと思っていたところだった。
今回、そんな村での招待があったものだから、楽しみにして出かけてきた。

馬路村は、とにかく、山に囲まれた森林資源の豊かな村だった。
その昔は、森林鉄道の総延長が200数十キロも延びていたというのだから、森林の深さは推して知るべしだった。

土曜日(13日)の一日、村の職員らと共に、山に入ってみた。
片道3時間の山登りだったが、オイラの視線はおのずとツキノワグマの息吹を探ることに終始していた。
山の険しさ、大きさ、樹木の年齢、樹種と密度…、いろんな要素を総合しながらそこの動物相を判断していくのがオイラの自然を見切る直感力となる。
そして、思ったことは、ここには間違いなくツキノワグマが生息しているということだった。

とにかく、山が大きくて深くて、険しい。
そう簡単にツキノワグマを目撃することはできないだろうが、ここには少なからず生息しているとオイラのアンテナは響いた。
そして、感じたことは、こうした山野を前にして、どのように野生動物をあぶりだしていくかといったアプローチのできる人が近隣にはいないということだった。
たとえ四国に何十万人、何百万人の人が住んでいたとしても、足元の自然をどう見て、そこに生息しているであろう野生動物を探り出していくかといったことをやる人が何人いるのだろうか。

自然を読む直感力、好奇心、行動力、技術力、自前の資金力 …、高度ないろんなテクニックが同時に要求されるのであるが、そうしたことをクリアーしてはじめてツキノワグマに迫れるからである。
このため、これだけの密度濃い自然があっても、ツキノワグマのお膝元にたどり着くにはまだまだ時間がかかるであろう。
オイラが四国の住民ならば、無人撮影ロボットカメラを主体にしながら、いろんな方法でツキノワグマをあぶりだしていくだろうが長野県から出かけていってそこまでボランティアをするつもりはない。
なので、あそこの大きな山には、必ずツキノワグマが生息しているのであるから、ここはぜひ地元の人たちに発奮してもらいたいものだ、と思った。

写真:
1)馬路村は、とにかく深く大きな山ばかり。
2)豊富な森林と数百年、1千年といった大樹もたくさんある。
3)立ち枯れや風倒木をこのように40cmもある破片に破壊している食痕は誰がしたのだろう?
まずは、このようなサインから正体を地道に見つけていくことが必要だろう。
4)巨木には、たくさんの樹洞があるから、このようなところも丁寧に観察していきたいものだ。
5)四国へ行くとき飛行機は、紀伊半島を横断した。ここを車で走って横断もしてみたが、上空から見ればまたそのスケールがよくわかる。いったいここには何頭のツキノワグマを擁していることだろうか。この規模の山地をみれば悲観的数字は浮かんでこない。

(from/ gaku )

コメント&トラックバック

12 Comments

  1. 昨年でしたか、一昨年でしたか、、、
    NHKのラジオのとある番組で、
    四国のツキノワグマを取り上げた時間がありました。

    その時、四国には6頭のツキノワグマが生息がしていて、、、
    と、言っていました。

    この「6頭」には疑問でした。で、密度が薄いということなのか、、、
    と思いました。

    順調に回復しているのであれば、本州のようにならないように、
    と、希望します。

    Comment by 杢爺 — 2010/11/17 水曜日 @ 22:33:59

  2. >杢爺さん
    恐らくですが、ツキノワグマの行動をモニタリングをする為に、香川県か徳島県で捕獲され時の話だと思います。

    Comment by うどん — 2010/11/17 水曜日 @ 23:38:35

  3. ■杢爺 さん
    ■うどん さん
    6頭という「公式」数字に全国民がふりまわされてしまうのでしょうね。
    調査の精度というものでしょうが、あまり少ない数字を出していくと、そのうちに恥をかくことにもなりかねないと思いますので、ここはしっかりやってもらいたいものです。

    Comment by gaku — 2010/11/18 木曜日 @ 12:02:33

  4. 四国のツキノワグマの生息数は、「6頭」が大手をふってあるいているわけですか? それはおもしろいことを聞きました。
    と言っても、馬鹿にしているわけではなくて、別記事でのコメントに登場している「ひみつさん」のクマが増加している根拠を示せという投稿に関連してのことです。
    学会のシンポジウムに関連して、四国のクマの頭数について北大と岐阜大の先生がもっと多い推測頭数を述べているのです。これは活字になっているから、「ひみつさん」に対しては、クマが増えている根拠になりそうです。

    北海道では、「春熊駆除」を90年に止めてから、警戒心の薄いヒグマが増えているそうです。特に知床で顕著のようで、知床財団では、保護だけでは不十分、それに伴う問題も考えておかないと今にどうにもならなくなるとコメントしているのが新聞に掲載されていました。

    私はインドア派の人間なのですが、考えるヒントというのは、あちこちにあるようですね。

    Comment by プロキオン — 2010/11/18 木曜日 @ 15:31:50

  5. 私が言いたかったのは、捕獲した頭数であって生息数の事ではなかったのですが、言葉不足でした。

    調べなおすと、剣山系で5頭捕獲しそのうち4頭に発信器を付けて放獣したものでした。

    下記URLで確認致しました。

    http://scienceportal.jp/news/daily/0804/0804141.html

    Comment by うどん — 2010/11/19 金曜日 @ 10:19:02

  6. >うどんさんへ

    いえいえ、私も「6頭」を早とちりしてしまったようです。
    添付のURLに記載されていた数字、私が聞いている数字とほぼ同じでした。

    Comment by プロキオン — 2010/11/19 金曜日 @ 16:02:14

  7. はじめまして。
    愛媛県出身の者です。

    ツキノワグマが四国に生息しているのは、
    野生動物を「あぶりだす」人がいないからだと思います。
    これはとても幸運なことだです。

    ツキノワグマの生息数を確認する事より、
    静かに見守り、生態系や自然環境を破壊しない環境づくりの方が
    大切ではないでしょうか。

    Comment by CoCo — 2012/6/27 水曜日 @ 13:15:32

  8. COCOさん私も現在も愛媛にすんでいますがまったく同意見です。
    ご存知のように四国では剣山系にしかいないと固く信じられています。
    それ以外の山系でも私はいると思っていますが、無理にあぶりだす
    必要はないと思います。但し本当の専門家が専門知識を使って
    ある程度の生息範囲を特定するのは賛成ですが、現実は多分
    できないと思いますよ。

    Comment by ロータス — 2012/7/1 日曜日 @ 21:08:12

  9. ( ̄ヘ ̄)ウーン個体数が少ないうちなら、そっと見守っていても良いかも知れませんが、知らないうちに個体数が増えて、本州のように、人里近くに大量に出没するようになってから、慌てふためくだけでは、何時まで経っても、日本人の自然観は、良くならない気がします。

    数が少ないうちからでも、ある程度個体数や生息域がわかっていれば、数が増えだしたら、大量出没するまえに、対策の立てようも、ありますしね。

    と言っても、それが出来る人は、ごく限られていると思いますが、だからこそ、gaku先生は、情報を提供されたり、ご自身で実践されているのではないのでしょうか?

    Comment by てっちゃん — 2012/7/4 水曜日 @ 0:59:35

  10. 私は、逆の観点から、生息しているのなら、ここでクマが生活しているのだということを主張した方がよいのではないかと考えますね。
    今の日本に手付かずの原生林がどれくらいあるでしょうか? ほとんどの山には人間が入っていて林道が整備されてしまっています。ある日、何かしらの理由で開発が始まってしまえば、そこで暮らしている動物は行き場も生活の場も一気に失ってしまいかねません。
    この山には、このような野生鳥獣がこのくらい生息している、他所へ簡単に移動させることはできないのだから、ちょっと待ってくれというくらいのことは発言してあげることも必要ではないかと考えます。過去の事象を振り返ってみても、存在していない動物を守ろうと配慮した開発はなかったのではないでしょうか。

    私は、四国のクマの数が本当に少ないのであれば、なお一層のこと生息状況の調査をしておいた方がよいのではないかと考えます。
    現実的には、調査するための人手が無いというのが、実情ではないかと思っているのですが。

    Comment by プロキオン — 2012/7/4 水曜日 @ 10:15:27

  11. ブロキオンさん確かに調査の必要性は私も思いますが、しかしその
    専門家という方も慎重に考えないととんでもない方もいらっしゃい
    ますので以前講演ではなされたいた方は四国のクマはDNAを
    守るために全頭捕獲して動物園で飼うべきだなんてとんでもない
    ことをいってました。クマの保護そのよりもDNAの保護のほうが
    大事なのかと思いました。調査そのものは必要なのは当然ですが
    目的をはっきりさせないととんでもない方向へいく可能性も否定
    出来ないと思います。

    Comment by ロータス — 2012/7/4 水曜日 @ 17:13:11

  12. >ロータスさんへ
    また、ずいぶんと極端な考えの方がいらっしゃるものですね。まあ、そうは言っても朱鷺では、それをやったということになりますが。

    DNAの保護というのは、私はあまり重視してはおりません。gakuさんのこのブログの他の話のところでも書きましたが、固有の遺伝子を珍重してもしかたないように考えています。
    2009年の岐阜大の発表によれば、2000~2006年に岐阜県内で捕獲されたツキノワグマ32頭中の9割がクマフィラリアに感染していて、クマ回虫には4割強が感染していたそうです。そして、ヘパトゾーンにはその後捕獲されたクマも含めて35頭全頭に感染していたそうです。
    限られた地域だけでの生息や繁殖を想定していけば、これは起こり得る帰結としてあらかじめ考えられることと言えます。
    遺伝子だけを珍重するのであれば、動物園で飼育するよりは、すでに存在している「冷凍動物園」に生殖細胞を保管する方が、より合理的でしょうし、雷鳥で研究されているキメラ生殖細胞による種の復元の方がさらに現実的と言えるのではないでしょうか。(こちらの手法は、鳥類ゆえに手の届くところまで来ていると言えますが)

    野生動物を動物園で飼育することが保護という考えは、むしろ非現実的であって、本末転倒のように私には思えます。野生鳥獣は、自然界の一員として存在しているべきでしょう。
    あくまでも、雷鳥やコウノトリ、アホウドリ、ツシマヤマネコ等の「生息区域外保全」の一環というところまでだと思われます。
    イギリスにおける「野生動物の保全」という考えの中には、増えすぎた鹿の食資源化もあって、これなどは、我が国の食肉検査制度と大いに異なる点があって、驚かされたりしています。
    我が国にも、エゾシカやニホンジカの集団の成長曲線の研究があって、毎年このくらいの頭数を間引いていかないと、集団が崩壊してしまうという数字があるようです。
    ツキノワグマにおいても、一定の地域の中には餌の量や繁殖するための営巣場所(冬眠穴)の数が、その地域での生息個体数を左右するわけですから、同じく成長曲線の研究がなされています。

    あまりに数が少なく疾病の罹患個体ばかりであれば、そのままでは、誰も知らないうちに消滅しているということにもなりかねませんから、捕獲して健全な血統更新も必要でしょうし、実は増加していたということであれば、クマ同士の闘争による損耗防止や間引くことも考慮していかなくてはならないでしょう。
    が、しかし、どちらにせよ元となる基礎データーがないのですから、なにもわかりません。そのためにこそ生息状況調査が必要だと考えるのですが、これを実施するためにクマの世界に飛び込んでいかれる方は、あまりいないようです。
    剣山国定公園のクマを研究されている方も、神奈川県出身で高知県に移住された方で、新聞社からの後援があって、なんとかやっていると耳にしています。人がいないと嘆くことはできますが、現実も厳しいですから、やはり容易なことでないのは間違いないようです。

    Comment by プロキオン — 2012/7/5 木曜日 @ 16:15:59

RSS feed for comments on this post.

Sorry, the comment form is closed at this time.

このブログへの訪問者