なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2010/9/30 木曜日   ツキノワグマ日記

山の栗の木をめぐる熊物語

この写真は、「となりのツキノワグマ」104ページに出ている山栗である。
104ページのものは、2006年の時の写真であるが、熊棚がしっかり見えている。
そして、今年も写真の矢印のところの枝は切られているが、クリの実がどっさり実っている。

この4年間、このクリの木を気にもとめていなかったが、今年は撮影してみようと思った。
それは、ツキノワグマといえども、どうやら「木登り」はほんとうのところしたくないのではないか、とこれまでの観察から思うようになってきたからである。
なので、2006年にあんなに熊棚をつくったこの山栗だから、たぶんクマにとっては好みの木なのだろう。
このため、落ちているクリの実を地上で拾っている可能性もある。
どんなクマがやってくるのか興味もあるし、そうした事実と証拠を掴んでみたい、と考えたからだ。

カメラを設置したのが、9月20日。
すでに、何者かがクリの実を食べた痕跡はあった。
今年はたくさんの機材が出払っているので、ストロボが足らなくなり急遽「写るんデス」の小型ストロボを改造して使うことにした。
このストロボは小さなものなので、光量も弱いが、撮影記録するには充分に用が足りる。

9月22日 11時25分~5分間。
さっそく、大きな個体のツキノワグマがやってきた。
まさか、という時間帯だった。
晴天の昼間にも、堂々と行動していることがわかった。
ここは、となりが畑になっており、毎日のように農作業にきている人がいる。
しかも、高速道路や道路にも近いところなので、車の騒音には事欠かない場所でもある。
この撮影結果をみて、レンズが若干長いことも分かり、さらに広角系にして画角をかせぐことにした。

9月25日 15時21分~40分間。
かなり大きめな個体がゆっくり食餌をしていった。

9月26日 15時23分~30分間。
サルが群れでやってきて、地上を絨毯採餌していった。

9月26日 19時07分~2分間。
小型のイノシシがクリの実を拾っていく姿があった。

9月27日 5時26分~16分間。
独りだちしたばかりの小型のクマがやってきてクリ拾い。

9月28日 12時04分~12分間。
大型のクマがやってきて、クリ拾い。

9月29日 8時12分~21分間。
雨上がりの晴天だったので、レンズが曇っているところに中型のクマがクリ拾い。

こうして、わずか1週間ほどで、クリ拾いをするツキノワグマの姿を5回にわたって記録できたが、どうみてもここには3個体別グマが確実に写っていると思える。
しかも、どのクマも、夜間には一度も来てないのも特筆だ。
ここのカメラは、まだ継続中なので、さらに面白い結果をこれからも見せてくれることだろう。
やっぱり自然界は黙して語らない世界なので、いろんなアイデアでこちらが仕掛けなければ、野生の息吹きが見えてこないこともわかった。

【写真はNEXTをクリックすると動画になります】

(from/ gaku )

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19 Comments

  1. gifアニメ、すごいです!
    いつもイガだけ残ってる栗の木の下、こんなことが起きてるんですね。

    Comment by あーる — 2010/9/30 木曜日 @ 17:29:56

  2. 私もすぐ近くの道路も通りますし、近くには観光客もいっぱい居ます
    昼間から徘徊しているなんて、やはり、となりのクマ状態ですね。

    Comment by 北割 — 2010/10/1 金曜日 @ 22:17:39

  3. 知らぬが仏という言葉が在りますが、知らないのは本当に幸せなのか疑問に思う記録ですね。

    知らないで損をする事があっても、知っていて損をするのは稀だと思うのですが…。

    邦画の名台詞の「事件は会議室で起きてるんじゃ無い!現場で起きているんだ!」がピッタリと当てはまる写真ですね。

    子供の頃、クヌギ林は昆虫のレストランと呼ばれる図鑑?を読んだ記憶がありますが、野生動物にとってもレストラン状態ですね。

    Comment by うどん — 2010/10/1 金曜日 @ 22:39:20

  4. ■あーる さん
    >栗の木の下、こんなことが起きてるんですね。

    そうなんです、こうして調べてみるとけっこう面白いです。
    これに、ノネズミやリス、カケスも加わっておりますから、森にはいっぱいのドラマがあります。

    ■北割 さん
    あの近所は、犬の散歩やジョギングをやっている人たちも多いから、そのうちに大きな事故にならなければいいのですが。
    ときどき、出会う人には「熊」の存在を教えてあげますが、「いらぬお世話」かも知れませんし。。

    ■うどん さん
    >知らないで損をする事があっても、知っていて損をするのは稀だと思うのですが…。

    確かにその通りだと思います。
    ボクも、こうした事実を知ってからはちょっとした林や畑周辺でも、さらに慎重に行動するようになりました。

    >「事件は会議室で起きてるんじゃ無い!現場で起きているんだ!」

    「クマのぬいぐるみ」や「童話の世界」だけの感覚で日本の野生のツキノワグマを論じている人は多いと思いますが、やはり「現場」を確認すれば、自然の見方、考え方も、変わってきます。

    Comment by gaku — 2010/10/3 日曜日 @ 7:48:48

  5. gakuさんはじめまして。
    埼玉県飯能市に住む生物学者くずれの「おかのやの先」と申します。
    以前、同じ市内に在住の方が投稿されておりましたが、東京の隣町の
    飯能市でもクマが激増しており、事故が起きるのは時間の問題です。
    埼玉県は秩父界隈が「クマ製造基地」となっているようで、ここで
    増えすぎた個体が縄張りを求めて、近隣の市街地へ降りてきている
    ようです。
    幸いなことに、飯能では市民が「クマは激増している」という意識が
    あります。これに後から役所が対応してくるでしょう。
    先に役所が動くってことは無いでしょうから。

    http://kanto.machi.to/bbs/read.cgi/kanto/1281486056/
    街BBS飯能市の掲示板です。みなさんクマについて意見を交わしています。

    gakuさん
    お怪我に気をつけて下さい。
    私が今までに見てきて「プロの中のプロ」の方が意外に単純な事故で・・・
    ということが多くありました。

    Comment by おかのやの先 — 2010/10/6 水曜日 @ 10:11:04

  6. ■おかのやの先 さん
    はじめまして。

    >東京の隣町の飯能市でもクマが激増しており、事故が起きるのは時間の問題です。

    現代人は自然との付き合い方を忘れてしまったので、東京に近くて自然度の濃いところでは、今後は事故も多くなることでしょうね。
    以前、奥多摩で登山家が襲われたのも典型的な例だと思っています。

    >飯能では市民が「クマは激増している」という意識があります。

    それは、けっこうなことです。
    このような意識になると、身近な自然をきちんと見られるようになるものですから、飯能市民は一歩先を行っていると思います。

    >お怪我に気をつけて下さい。

    はい、ありがとうございます。
    ツキノワグマはタヌキ以上に生息していることが分かってきましたので、最近ではかなり慎重に行動していますが、
    いたずらに捕獲して放獣しているだけの人間を逆ねたみした熊が増えておりますので心配もしています。

    Comment by gaku — 2010/10/7 木曜日 @ 9:08:51

  7. gakuさんはじめまして。
    福島県在住です
    gakuさんも既にご存じかとは思いますが、福島でも春頃から熊に遭遇した、襲われたいうニュースが相次いでいます。
    残念なことに、5月にはクマに襲われて亡くなった方もいます
    9月には福島県磐梯町の役場の玄関のガラスに激突するというサプライズもありました。
    最近では、鈴を付けて鳴らしていたのにクマに遭遇した例もありました。

    鈴やラジオで人間の存在を知らせれば、クマは逃げていくというのは、通用しないのではないか? 鈴を付けてればクマが逃げると思い込んで油断してしまってはかえって危険なのではないかと思うようになりました。

    Comment by くぐり — 2010/10/8 金曜日 @ 18:21:39

  8. ■くぐり さん
    はじめまして。
    福島は磐越道と会津から米沢に抜けるコースの2箇所しか体験していませんが、環境をちょっと見た感じでは、ツキノワグマはべらぼうに生息していると思いました。
    全国的に、ツキノワグマは相像を絶するほどに増加しているのに、どうしてもそれを認めない学者や行政、一般人のほうが多いものです。
    ですから、ラジオや鈴などにまったく警戒しない熊のいることすらにも気づかずにおります。
    まあ、たくさんの人間が犠牲者になっていかなければ、国も一般人も気がつかないと思いますので、それぞれの地域の個人の感覚と責任にまかせるしかないでしょう。
    激増していることをいち早く実感して、いかに自分自身で身を守るかに専念していったほうが現状では得策だと思います。

    Comment by gaku — 2010/10/8 金曜日 @ 23:16:29

  9. こんにちは、南佐久郡の山間部に住んでおります
    最近雑キノコ採りが面白くて、目の前の山に犬連れて入っていますが
    栗の実が食われた跡に、でっかい足跡がいくつもありました
    熊は暗くなってからしか出ないものと思い込んでいましたが
    日中の出没写真は考えを改めさせられます
    うちの犬は元が何だか判らないような雑種(たぶん洋犬)ですが
    犬によっては熊の気配も感じられないものでしょうか?
    すごいな熊は!
    今から熊の皮とかを与えて、臭いを覚えさせたり、などで、察知できるようになるでしょうか?
    今後いろいろ試してみたいと思います

    Comment by とも! — 2010/10/11 月曜日 @ 0:01:18

  10. 大変勉強になりました。
    ご活躍を期待いたします。

    Comment by koze — 2010/10/11 月曜日 @ 19:50:23

  11. 宮崎学先生

    ど素人の熊の痕跡探しは 一歩前進致しました。 昨日友人と兵庫県の氷ノ山麓の民宿に遊びに行きました。 連れは昼から部屋でゴロゴロ…(>_<)
    僕の目的は「となりのツキノワグマ」

    まずは素人の僕でもすぐに 何の木か判別できる柿の木をチェックすると 初めて見てツキノワグマの爪痕だとわかるぐらい はっきり残されてました(宿から10M) 周辺の柿の木にはほぼ100%爪痕が残り 柿の実も沢山残っていました…!?
    翌日は林道ドライブ!
    遂に栗の木に 凄まじい熊棚を発見した時は興奮致しましたが 木の下一面に残された食べ跡 暴力的に折られた木の枝 無数に残る深い爪痕をみた時は正直びびってしまい大声(熊よけのつもり(笑)を出しました…
    いつも 景色を見ながらのドライブが好きでしたが 自然観察のスキルを高めて 山を楽しみたいです。

    帰り道の車中で頭の中に浮かんだ宮崎学さん 熊棚 柿の木

    大阪市内に戻っても通り道の木を見てしまう…

    変態です

    Comment by 下別府勇次 — 2010/10/12 火曜日 @ 2:54:07

  12. ■とも さん
    >犬によっては熊の気配も感じられないものでしょうか?

    犬の個体差もありますので、まったく鈍感な犬は野生動物の気配すらも分からないものがいますから、犬を連れての山歩きは、逆に危険な場合もありますから、自分の犬の習性や感度などを主人がしっかり観察しておく必要はありますね。

    >今から熊の皮とかを与えて、臭いを覚えさせたり、などで、察知できるようになるでしょうか?

    かなり難しいと思いますが、熊の生皮とか糞、そして爪での犬のいたぶり実験などをして、その犬の適正を調べてみることは大切かと思います、が?
    日本犬でも、北海道犬とか紀州犬など、すでにDNAにそうした性質を持っているものがいますから、猟をやっているような人に相談して子犬を仕込んだほうが早道だとは思います。

    ■koze さん
    ありがとうございます。

    ■下別府勇次 さん
    いい経験をしましたね。
    そういうことから始める第一歩が大切なのですよ。
    行動に移し、自分で発見することが、何よりも自信につながりますし、新たな視点展開にもなっていくからです。
    そして、自分自身のなかで眠っていた新しい感覚を再発見できますから、いろんな五感が発達してきますよ。
    そのうちに、熊の体臭まで分かるようになりますから。

    >変態です

    いえいえ、ちっとも変態ではありません。
    オイラのほうが、大変態…、ですから。。

    Comment by gaku — 2010/10/14 木曜日 @ 9:46:36

  13. 学さま
    ありがとうございます
    今後、犬の観察をしながら、気をつけて行動したいと思います
    縁があれば子犬から仕込んでみたいです

    Comment by とも! — 2010/10/15 金曜日 @ 16:05:23

  14. 宮崎さん、こんにちは。
    この記事は非常にショックでした。まさか昼間っから高速道路沿いに熊が出没しているとは考えておりせんでした。
    この記事を読んだ後、熊は24時間どこにでも出没すると言う前提が私の頭に焼き付けられました。非常に貴重な事実を写真でご紹介くださり、大変感謝しております。

    実は今日、長野県高森町の高速道路沿いにある「裏山」にキノコ狩りに行きました。昼の12時半です。どこにでも熊がいると想定し、熊スプレーと爆竹を携帯しました。車を停め、30m程山に入ったところで爆竹を鳴らし、周辺の様子を観察しました。すると、50m程の距離に熊がいることを発見しました。前方でいきなり熊が10m程走り抜けていきました。その後、立ち止まりこちらをじっと観察しておりました。勿論、キノコ狩りは急遽中止です。

    今年の熊や猿の出没状況は異常なほど多く、本当にとなりのツキノワグマ状態です。行政やメディアが参考としている「自称専門家」の「意見」と、「現実」との温度差には非常に苛立ちを感じます。

    Comment by HOJO — 2010/10/25 月曜日 @ 13:53:22

  15. ■HOJO さん
    高森町での熊との遭遇は、さぞ驚かれたことでしょう。
    熊は、ほんとうにどこにでもいると思って行動されることがイチバン、です。
    そちらでは、河岸段丘林とか天竜川までつづく河川林は、すべてツキノワグマの行動エリアだと思っていいですから、人家近くでも注意するに越したことはありません。

    こちらでは、夜間に軽トラックがヘッドライトつけて林道に入っても、5mのところで伏せて逃げない熊もおりました。
    もちろん、爆竹やロケット花火にも平気でした。
    熊は確実に変化しながら激増していることに早く気づいて、こちらが対処していくのがいちばん安全に行動できると思います。
    そういう僕も、毎日山野に入っていますが、まだニアミスもありません。
    本日(10/26日)信濃毎日新聞一面の「斜面」に、そんなボクの山歩き法が出てます。

    Comment by gaku — 2010/10/25 月曜日 @ 19:45:54

  16. gakuさん、早速の返信コメント有り難うございます。
    信濃毎日の記事ですが、拝読いたしました。大変参考になりました。早速、明日から山で発声練習です。

    今回は非常に遠距離での遭遇だったのが幸いでした。gakuさんのブログや本のお陰で、熊はその辺にいるという意識があったお陰です。

    どうも有り難うございました。

    Comment by HOJO — 2010/10/25 月曜日 @ 20:58:24

  17. >それは、けっこうなことです。
    >このような意識になると、
    >身近な自然をきちんと見られるようになるものですから、
    >飯能市民は一歩先を行っていると思います。

    以前、飯能市内における熊出没に関して投稿させていた
    だいたものです。
    その節は、アドバイスも頂き有難うございました。
    私自身は飯能の住人ではなく、
    両親が今から十数年前にここに引っ越したわけですが、
    東京郊外在住の私より、確実に両親のほうが
    熊に対する警戒心が強いです。
    私が、近郊の山に入ることがあるという
    ことを知って数年前から熊に気をつけろと飯能宅に
    帰るたびに言われて、過剰反応ではないかと
    まともに相手をしていなかったのですが、
    それが決して杞憂ではないということが最近の
    情報からわかってきました。
    先日、その両親と山梨の清里に旅行したのですが、
    山の中の道に入る時に、やはり両親が熊への警戒心が
    働くようで、
    こんなハイカーの多いところだから大丈夫だと
    言い合いになったわけですが、
    後から投宿した地元のホテルの人に聞くと、
    清里においてはまだ目撃情報は聞か無いけれど、
    長坂、小淵沢では度々目撃されているし、
    清里で目撃されるのも時間の問題だろう
    といわれました。

    飯能在住の両親と東京郊外在住の私との
    意識の差を感じたしだいです。

    Comment by タイラ — 2010/11/2 火曜日 @ 0:20:52

  18. P.S

    Gaku先生は、以前、清里にある自然ふれあいセンターで
    講演をなさったことがあるということをウェブで知りました。
    このときはフクロウに関する内容だったようですが、
    清里界隈をご覧になり、このあたりにも相当数の
    ツキノワグマが生息している
    とのご認識をもたれましたでしょうか?
    私は清里が好きになり今後も訪れたいと思っているのですが、
    参考までにご教示いただければ幸いです。

    Comment by タイラ — 2010/11/2 火曜日 @ 0:36:58

  19. ■タイラ さん
    清里周辺にも、ツキノワグマはとうぜん生息していると思っていいでしょう。
    目撃情報×100としたほうがいいですよ。
    とにかく、林や森、渓流林がつづいているようなところには、もはやツキノワグマは「いる」と思わなくてはならない時代です。
    それが、日本の自然なのですから。

    Comment by gaku — 2010/11/4 木曜日 @ 11:26:14

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