なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2010/7/8 木曜日   ツキノワグマ日記

「となりのツキノワグマ」が出版となる

岩手県の盛岡市動物公園内で野生のツキノワグマが目撃されたというニュースがあった。
「あれー! 動物園にクマがいてはいけないのぅ…?」
なーーんて、つい、突っ込みたくなるような笑えるニュースだった。

今年も、相変わらずツキノワグマの目撃情報が全国的に多発している。
こんなに目撃されているのに、ツキノワグマは絶滅するほどに数が減じている野生動物なのだろうか?
目撃例が増えているということは、単純に考えても、それだけツキノワグマの数が増加しており分母が大きくなっていると考えるのがふつうだ。
なのに、「奥山が荒廃して餌不足の熊は里へでてくるかわいそうな動物」、などと根拠のない使い古された言葉ばかりが一人歩きをしている。
自然界全体をはかる自分の技術のなさを、こういう言葉に転化して逃げるのはもうやめてもらいたい、と思う。

山林「荒廃」とは、何を意味しているのかを考えて欲しい。
荒廃とは経済的視点でみた林業用語でいうところの「荒廃」であって、間伐も下草刈りもされず手入れの行き届かない現在の放置林は、野生動物たちからみれば餌も豊富にあって隠れ場所も提供されている「野生天国」なのである。

だから、ツキノワグマは、ここ30年間で確実に増えている。
しかも、その増加率は右肩上がり、なのである。
日本は先進国のなかでも国土の三分の二は森林という緑豊かな森林大国であって、山野は決して荒廃なんてしてないからである。
林業経済からみた荒廃という表現をツキノワグマの生息地である林野の土俵に当てはめてしまうのはまちがいであり、それに気づかないまま熊の減少を唱える学者や専門家がいるとすれば、それは日本の自然界の仕組みが見えてない初心者であって、ツキノワグマを語る資格がない、とオイラは断定したい。

ツキノワグマは、はたして全国に何頭生息しているのか?
そして、何頭まで減れば絶滅への道を歩むのか。
何頭以上になれば、余剰部分をコントロールしてもいいのか。
そうした基本線となる数字を出そうとする発想力もなければ行動力も現代の日本の自然科学者には、とにかくないようだ。
このような数字を出すことは、誰かがやってくれるものでもないから、アマチュアでも自分の力で足元の自然環境を読み調べてみようとするちょっとした努力を日本各地で模索してみてもいいのではないか?

そうした人たちのためにも、「となりのツキノワグマ」といういい教科書ができた。
たった2200円で、写真だけでも377枚も収められているウルトラサービス本だ。
ここで、1枚の写真に何が写っているのか、写真をじっくりしっかり見て読んでもらいたい、と思う。
とにかく、1枚の写真を撮る裏側にはどのくらいの思考があって、ツキノワグマの習性を熟知したうえでの知恵とアイデアが生かされているかが分かってもらえると思う。
もっとも、写真を「読む」には、それなりの生態知識とカメラ技術をもちあわせていないと正確に読み解くことはできないものだが、技術なんてものはあとから努力すればついてくるものだから、まずは参考書として手に入れるのもいいだろう。
研究者でもなければ専門家でもない写真家だって、写真集というカタチでこうした視覚論文が出せるのだから、ツキノワグマを探るにはどのような新しいアイデアで迫っていくかといった「視点」に早く気づいてもらいたいと思う。

あなたのすぐ「となり」にツキノワグマが来ているのだから、まずはそのことに気づき、日本各地ではじめてもらいたい一冊である。

「となりのツキノワグマ」  新樹社刊 定価=本体2200円+税

写真:
1)「となりのツキノワグマ」の表紙。奥山放獣されたハズの耳タグつき親子写真を深読みしてもらうためにわざと表紙にした。
2)食べ物と糞。
3)ツキノワグマの糞による盆栽。
4)雄大な風景のなかにも、見方を変えればツキノワグマの動きが明確にみえてくるから面白い。

(from/ gaku )

コメント&トラックバック

7 Comments

  1.  こんばんは。
     盛岡市動物公園の件については、びっくりしました。
     「野生」のツキノワグマまでいるとは・・・
     件の個体については捕獲されることになったようですが、今回は出没だけのようなので、捕獲後はさすがに放獣でしょうか? あるいは2年前の某T県のO市で捕獲された個体のようにどこかに引き取られるのでしょうか?
     捕獲後の個体の状態にも興味があるところです。
     ただ、今後これにとどまらず動物園内(あるいはその周辺)に被害を及ぼすような個体が出没したらどうなるのでしょうか? 捕獲後の処置、特に捕殺せざるをえなくなった場合、捕獲関係者は頭を悩ませそうですね。「動物園」のイメージもありますから。
     今後もツキノワグマの行動については、これまでにありえなかったことが起こることが予想るのですからから、我々も正しい観察眼を持たなければならないし、少なくても保護(?)論者の言うことは鵜呑みにしないほうがいいのかもしれませんね。そうでないと、我々人間がツキノワグマに翻弄されまくりかねないし、それは決して遠い未来の話ではないのですから。

    Comment by もとりんむ — 2010/7/8 木曜日 @ 20:07:03

  2. 失礼しました。すでに捕獲されて、放獣される予定だそうですね。
    ただ、今後の動物園の運営に影響を及ぼさなければよいのですが・・・

    Comment by もとりんむ — 2010/7/8 木曜日 @ 20:13:55

  3. ■もとりんむ さん
    動物園のクマのことは、改めて自分の考えを書き直したいと思っています。
    長野県にも、野生のツキノワグマがたぶんきている動物園がありますが、それに人間が気づいていないだけだと思います。
    最近のオイラは、ツキノワグマがどこを通るか、ほぼ完璧に動きを予測できるようになりました。

    Comment by gaku — 2010/7/13 火曜日 @ 8:02:11

  4. 以前、動物園の動物を盗んで売っていたペットショップの男が逮捕される事件がありましたね。カピバラ・リスザル・ペンギンなどを盗んで逮捕されたのですが、問題は盗まれた側の動物園   いなくなった動物を野生のタヌキに獲られたと思っていたそうです。その上で何の対策も無かったようなので、管理のずさんさを感じてしまいます。なので、地域によっては熊やサルなどが動物園に侵入していても誰も気が付いていなくてもおかしくないですね。

    Comment by しらとり — 2010/7/14 水曜日 @ 16:42:44

  5. gaku 先生

    出版おめでとうございます。 本をAmazonさんで注文しました。 明日には届くかもしれません。 一写入魂の写真を楽しみにしております。

      

    Comment by ARUGA — 2010/7/14 水曜日 @ 19:27:30

  6. ■しらとり さん
    そういえば、こちらの動物園でも猛禽類が盗まれたことあります。
    市立動物園クラスでは、夜勤もおかず無人になりますから、野生のツキノワグマも「クマ舎」の前で遊んでいたりしていても誰も目撃できないワケ、です。

    ■ARUGA さん
    お買い上げありがとうございます。
    Amazonは、ちょっと遅れて来週中ごろになるかも、知れません。

    Comment by gaku — 2010/7/16 金曜日 @ 13:01:19

  7. […] (「『となりのツキノワグマ』が出版となる」byツキノワグマ事件簿) […]

    ピンバック by ツキノワグマを巡る論争 « 森の虎じろう — 2010/11/4 木曜日 @ 19:33:27

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