なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2006/11/16 木曜日   調査

中央高速道路216kmポストにあるツキノワグマの現実

トラックとクマ棚

ボクがツキノワグマのことについて語ると、「ほら」だと思っている人も多いだろう。

そう思う人は、現実を知らないというものだ。

ボクは、自分で見て、自分で確かめて、感じたままの経験しか発しない主義だ。ヒトさまの受け売りや自分の言葉でないことは、これまでの活動のなかでも一切言ってはこなかった。

こうした前提のもとで、この写真をみてもらいたい。

上の写真は、中央高速道路216kmポストにあるツキノワグマの食痕である。

名古屋から東京方面へ向かう途中の「宮田バス停」付近。

高速バスが走行車線からバス停に向けて進路変更するレーンがはじまるが、その脇の法面にこの食痕はある。

5mほどのクルミの木にツキノワグマが登って、枝を折り実を食べたあとである。

(青い矢印が216kmポスト指標、赤い矢印㈪が折られたクルミの木。)

発見したのは9月13日であるが、その5日以内にここでクルミを食べた痕跡なのである。

法面の上部には、写真下のようなもっと派手なクマ棚ができている。

(㈰のところから上の写真を写している。矢印の下に㈪のクルミの木がある。)

くるみのクマ棚 高速道路

ここで注目すべきは、ツキノワグマが高速道路への立ち入り禁止フェンスを乗り越えて、入ってきていることである。

写真のトラックから食痕までは、12mほどしか離れていない。

夜間にツキノワグマが出没して、ここで食事をしていったのだが、トラックの風圧が届いていたハズである。

轟音も、すごいものがあっただろう。

何しろ、夜の中央高速道路のトラックの通行量は半端ではないので、それをものともせずに行動する野生のツキノワグマの心理状態に興味があるのである。

轟音や風圧をまったく警戒しない新しいツキノワグマがでてきているからだ。

このようなクマに、笛や鈴を鳴らしたところで驚かない。

この付近での食痕は、一昨年にもあった。

5年ほど前から、高速道路沿いにこうしたクマ棚が目立ってきたことは過去にもボクは指摘してきている。

こうした事実から追っても、現代社会に適応してきた新しいタイプのツキノワグマが出現してきていると思っていい。

野生動物というものは、新しい生命が毎年誕生しているのだから、時代を先取りした個体群が増加していくのが普通である。

それなのに、現代社会の人間の意識は旧態依然として半世紀も進歩していないのが滑稽でならない。

写真のようなツキノワグマからのサインをボクは見落とすことなく、現代社会とツキノワグマと人間との認識のズレを見つめる面白さがあるからやめられない。

ここの現場は、冬に向かって周辺の葉が落ちていくから、クマ棚だけがしばらく目立つことになる。

このまま現場保存されているから、216kmポストに関心のある方はどうぞご確認、を。

(from/ gaku )

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