なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2006/11/14 火曜日   ツキノワグマのニュース

長野県下にツキノワグマが50,000頭… ?

tabu

先日(11月10日)の信濃毎日新聞によると、今年の長野県下では4月〜10月末で、ツキノワグマの目撃件数が3979件にのぼっているという。

自然に詳しくてクマを目撃しても公式に発表しない人もたくさんいるから、これを1000件加えたとしても、約5000件ほどになるであろう。

5000件の目撃件数が、長野県下全体に生息するツキノワグマのすべてではないハズ。

仮に潜在頭数の1割が目撃されたとしても、50,000頭。

0,5割としても、100,000頭が、生息していることになる。

いや、もっといるかもしれない。

いずれにしてもこれは、すざまじい数となるが、ボクはあながち否定をしない。

ボクの無人撮影ロボットカメラに写っているツキノワグマだけでも、5月〜11月13日現在までで、20頭強の個体が写っているからだ。

これだけツキノワグマがボクのカメラ周辺に確実に潜在しているというのに、現場での目撃例はゼロである。

ボクは、ほぼ毎日カメラ点検にはでかけているし、その周辺の山野へも分け入っている。それなのに、こういう状態でのクマとの出会いは、ゼロなのである。

(夜間に目的をもって撮影するためには、ちゃんと出会ってもいるが。)

裏を返せばそれだけ、ツキノワグマに出会うということは難しいのである。

ツキノワグマだけでなく、野生動物との「出会い」は、本来はこんなものなのだ。

写真を写してナンボの世界で生きているプロのボクがツキノワグマには普通の状態では出会えないのがあたりまえなのだから、ある意味で「シロウト」さんが偶然に目撃したという例は、確率的にはほんとうに低いものに出会っているということになる。

そうした数字が、5000件。

一頭のクマを別々に5人の人が目撃していれば、この数字は1000件に落ちてくるが、ボクの40年に及ぶフィールド経験からしても、こういう件数にはならないと信じる。

それなのに、長野県から発表されたツキノワグマの生息数は1300〜2500頭。

このような数字はいったい全体どこからきているのであろう、か?

「クマ専門家」といわれる人たちが全国にはたくさんいるようだが、ツキノワグマの数をあまりにも過少操作しているとしか思えない。

あるいは、専門家なのに、調査もできなければ予測もできないということであろうか。

一般市民がいちばん知りたがっていることは、

自然界にどれほどのツキノワグマが生息していて、そのクマのどれほどが人を襲ったり、農業被害を起こしているかということであろう。

この辺のところの説明がきちんとできないまま「保護」だ「共存」だと言いつづても、いまの住民は納得しないと思う。

写真:

このクマは、この撮影のあと、ボクのカメラを倒して防水ケースの蓋をひっぱがして、レンズを泥足でさわり舐めていった。雨が降らなかったからよかったが、天候によってはカメラが台無しになるのも時間の問題。

(from/ gaku )

コメント&トラックバック

7 件のコメント »

  1. 更新を楽しみにしてます。特に、9日のはけっさくで、みなに触れ回ってます。研究室にもプリントして張ってあります(引用もと明記。プリントするとクマがくっきり出ないのが残念、URLを書いてあるので興味のある人は画面でみるでしょう。)
    一応「専門家」の端くれとして、現在出てきている数字を過小評価だということは、常々かねがね申し上げています。そう思っている人が大部分とも思います。
    じゃあ、本当はどれくらいいるの、となると、どうも地域差が大きく、今の情報でははっきりした責任もてる数字が出せないのです。というか、情報はけっこうあると思うのですが、情報の流通が悪いということかもしれません。
    ところで、目撃数=個体数ではなく、同じ個体がたぶん100回とかでも目撃されると想像されます。
    撮影コマ数と個体数の関係や季節分布とかどうなってるんでしょうね。
    私は、撮影されずにそのあたりにいる個体も、まだいるとも思います。
    宮崎さんは模範的な行動をとっておられるので、クマには遭わないのです。ほら、げんに会っていらっしゃる。
    写真は嘘をつかない、クマも素直なものです。

    コメント by 石田 健 — 2006/11/15 水曜日 @ 3:22:34

  2. 推定の仕方が、
    「基本的な考え方→定点観測による推定密度(頭/?2)×生息分布域(1km2・メッシュ)」(特定鳥獣保護管理計画(ツキノワグマ),平成14年3月,長野県 http://www.pref.nagano.jp/seikan/kankyou/tyozyu/bear.pdf)とあるように、目視調査によるもののようなので、gaku氏の発見率が低いとのお話から多分に過小評価されていると思います。せめて、いくつかの実験区で目視と実際の生息数の違いが分かれば精度が増すと思うのですが。それにしても数字ばかりが一人歩きして、どういう値かを理解しないまま色々な所で使われてしまっているようです。

    コメント by 和武! — 2006/11/15 水曜日 @ 22:21:35

  3. を出せないのは理解できるけれども、責任もてない数字を基にして、個体数管理を目的とした捕獲数等を決定しているわけで、目的が全く達成できないときの責任はどこにあるのだろう。不確定な要素に対して、継続的なモニタリングと数値の見直しをしていくとあるけれでも、わずか3年余で推定数が1桁以上違いました、なんてことだったら・・・新しい結果だって信頼されないですよ。

    コメント by 和武! — 2006/11/15 水曜日 @ 23:03:54

  4. 世間に喧伝されている各種生物の生息数であてになるのは
    よほど個体数が少なく、確度の高い調査がされている鳥や
    離島などの固有種くらいのものでしょう
    縄張りを持たないほ乳類については
    生息数や生息密度をだすのは、かなり難しい事とは承知していますが
    ちょっと、少なすぎますね

    クマについては
    「テリトリーが無いこと」と「森林棲」ということで
    ある程度信頼性のおけそうな数字を出すことは難しいのではないかと思っています

    コメント by 風 — 2006/11/15 水曜日 @ 23:23:34

  5. 誤りがありましたので訂正します。
    保護管理計画内に推定結果の留意事項として
    「基礎データが不十分であるため、生息数は参考数値とし、今回の特定鳥獣保護管理計画(特に捕獲上限数)の見直しに当たっては考慮しない。」

    とありました。

    なので最初の文は誤りです。

    申し訳ありません。失礼しました。

    コメント by 和武! — 2006/11/16 木曜日 @ 0:01:11

  6. 掲載後かなり経過してのコメントですみません。
    ネット情報によると長野県の森林面積は平成19年度で1,056,000ヘクタールだそうです。換算すると10,560平方kmです。長野県に5万頭のクマがいるとしたら、単純計算では、人工林天然林を問わず、植林後の樹齢も問わず、標高も問わず、長野県の森林全体に満遍なく1平方キロに約5頭の密度でクマがいることになります。
    長野県にこの密度でクマが生息していると本気でお考えなのでしょうか?それほどクマがいれば、彼らがいかに人を避けようとも、そこらじゅうにすごい数のクマ糞が落ちていなければならないのではないでしょうか?
    各地のクマの推定生息数の多くが過小評価であろうという考えには同感ですが、目撃件数を基にしたこの推定は極端な過大評価になっていると感じます。
    私はヒグマの生息密度が世界最高レベルといわれる知床半島に2年間住み、かなり歩きまわりましたが、局所的かつ一時的な状況をのぞいては5頭/平方kmという生息密度は考えられない数字で、全体平均としては1頭/平方kmでさえ不可能と思っています。

    コメント by キノコハンター — 2008/6/26 木曜日 @ 12:36:24

  7. ◆キノコハンターさん
    個々の「重箱の隅」をつつくことはカンタンですが、ボクは「?」をつけて書いております。

    これまでの全体をしっかり読んでくだされば、何を言わんとしているかが分かってもらえると思うのですが。
    野生動物の個体を把握することは「難しい」といって、そのままにしているより、難しいことへ一歩でも前向きに向かっていく姿勢というものをボクは求めているのですよ。
    このブログを書いてから、はや一年半ほどたちますが、ボクは新たな調査方法を確立しています。
    専門家なら、そうしたところへの挑戦が欲しいのですよ。
    一介の写真家が超ウルトラcもできるのですから、専門家といってあぐらをかいていてはちっとも日本の自然をはかっていくことなんてできません。
    そういう立場にいる人たちへの「挑発」でもあります。

    まあ、見ていてください。
    写真とともに、オモシロイことをお見せしますから。
    気づいたときには、数十年も遅れをとることになりますよ。
    でも、ボクは写真結果は公開しますが、方法論までは公開しません。
    各自で、考えてもらいたいから、です。
    それが、研究者、専門家の仕事だから、です。

    コメント by gaku — 2008/6/28 土曜日 @ 22:53:18

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