ツキノワグマを巡る場当たり的研究
ここに示した写真は、11月3日の深夜2時25分台に出現してきた親子である。
母親は、右耳に赤いタグをつけている。
この赤タグは、長野県の地方事務所がつけたものである。
そして、左耳には黄色のタグがついている。
このタグはどこがつけたかは不明、だ。
これまで、右耳に赤いタグがついた個体は全部で3頭が登場してきていることは以前にものべた。
昨秋は1頭だけだったが、今年の夏以降から2頭がくわわった。
そこへ、このようなまぎらわしい個体が登場してくると、これまでの3頭のどれかが再捕獲されて「黄色タグ」をつけられたのか、別の場所からの移動個体なのかもわからない。
かねてからボクが指摘しているように、ここまで耳タグをつけるのなら、大きく「焼印」をしてしまうくらいの発想が必要だろう。
また、親子グマの場合には子グマにも同時になんらかの処置をするという考えも、もてないのだろうか。
耳タグをつける関係者には、その後の行動追跡に写真技術が相当役立つことを知らないから、このような安易な方法でコトを済ませてしまっているのだ。
こうした指摘を長野県の自然保護課にボクは苦言として入れたら、課長以下担当者がすっとんできた。
そのときの会話でさらに驚いたことは、ツキノワグマへの耳タグ装着は各地方事務所が独自でやっているだけで、そのデータを一箇所へ集約させて集中管理もしていないということだった。
まったくもって、行政のセンスの悪さにはあきれてしまう。
ツキノワグマに対して、このようなグランドデザインも描けないまま場当たり的な「学習放獣」とか「お仕置き」をやりつづけてきているのである。
しかも、新聞報道によれば今年だけですでに110余頭が長野県下ではこうして「学習放獣」されているそうだ。
このような学習放獣は10年ほど前から行われはじめたが、耳タグをつけはじめたのはわずか2年ほど前からのことである。
それまでは、捕獲してもノーマークのまま再放獣されていたのである。このことは、拙著「ツキノワグマ」にも書いてあるが、捕獲実験をやるのなら耳タグの必要性を説いているし、その結果としての学習放獣の危険性もすでに数年前からボクは指摘しつづけてきたことでもある。
ここに写る親子熊がボクのカメラに毎日いたずらをしているのかは定かではないが、一度人間の手におちた「学習放獣」個体が人間を逆恨みして襲撃をしてもおかしくないことだけは確かだ。
両方の耳に「タグ」をつけているこの写真の母親は、少なくとも二度は捕獲されて麻酔をうたれた経験のある個体である。
そのクマが、絶対に人を襲わないという補償はどこにもない。
耳タグをつけたまま人を襲ったときの責任問題は、どこにあるのだろうか?
長野県下では、まだ一日おきにツキノワグマによる人身事故がおきている。
タグなしのまま以前に放たれた個体が、これらの事件にかかわっている「可能性」もなくはないといえない。
しかも、奥山放獣してもすぐに舞い戻るので、学習放獣の効果がないことに関係者もやっと気づきつつある。(このことも、すでに拙著ツキノワグマでは指摘してきている。)
この撮影現場は、私有林である。
その地主には、これまでのツキノワグマの出現写真をすべてお見せしてある。
地主はすざましい出現に、これほどまでにツキノワグマが多いのかと絶句していた。
そして、調査のためには山林をどんどん使っていい、とまで言ってくれている。
もちろん、この遊歩道を管理している行政へも写真を示して伝え、通行止めにしてもらった。
それでも遊歩道を利用する人たちが写真撮影されているのだから、このようなヒトは自己責任となろう。



>グランドデザインも描けないまま場当たり的な「学習放獣」とか「お仕置き放獣」を・・
というコトは、学習しなければいけないのは 。。。誰だ ?
コメント by クワ — 2006/11/7 火曜日 @ 13:01:59