なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2009/12/22 火曜日   ツキノワグマ日記

ツキノワグマの「けもの道」を巡る熊たち

この3頭のツキノワグマには、目印が付いているから個体識別ができる。

1番目の写真は、右耳に赤いタグがついている。
2番目の写真は、左耳に黄色のタグがついている。
3番目の写真は、右耳に赤いタグと、GPS首輪がついている。

そして、下の集合写真には、24頭のツキノワグマが写っている。
この中には、子連れもいるので、それらを加えれば頭数的にはもっともっと多くなる。
この24頭は、とりあえず今年の一部の数なので、正確にはまだたくさんのツキノワグマがここを歩いているのである。
しかも、この場所は、すでに3年間にわたって「無人自動撮影ロボットカメラ」が狙っている。
なので、年間を通してどれほどのツキノワグマが往来しているのか、ボクには把握ができている。
だから、毎年ドングリの豊凶作でツキノワグマの出現を予測するニュースが流されるが、そのような予測に関係なくここには3年間増減なく、どっさりとツキノワグマが出現してきている場所なのである。
だから、ツキノワグマの動きは人間の目に見える年と見えない年があるようだが、実は毎年確実に山野を行動しているということがボクには分かっていることなのである。

とにかくここは、ツキノワグマが足しげく往来する「けもの道」である。
なんの変哲もない場所だが、なぜかここだけはツキノワグマがよく通るのである。
山野を歩いていてこの場所を見つけたときは、「もしや」という勘が働いたのでカメラを設置してみたのだった。
すると、予想通り、たくさんのツキノワグマがメインルートとしてここを使っていたのである。

ツキノワグマはふだん行動するときには足跡一つ残さないことが多いから、どこを通っているかなんて予測はなかなかつけにくいものである。
しかし、ボクには何となく勘のようなものが現場で働くから、自分の直感力を確認するためにカメラで裏づけをとっているのである。
このような確認作業は、デジタルカメラの時代になったことでフィルム時代より格段のスピードをもって確かめることができるようになった。
このスピードは、そのままスキルアップにもつながるから、自分自身の予測と結果もそれなりに確かな手応えとして蓄積されていくのが嬉しいことである。

こうして確かな裏づけをとっていると、ツキノワグマは決して滅びゆくほどに数の少ない動物でもなければ、減少しつづけている動物でもないことがいえる。
こうした事実を確認するたびに、「机上発信」と「現場発信」とのギャップがあまりにも大きいことに気づくから、やはり確かな視線でいまの日本の自然界をきちんと見つめるべきだと思うことしきりである。

写真上:このような目印がついていると、写真撮影のうえでも個体識別ができるから、いろんな予測ができて楽しい。
写真下:赤枠が首輪つきの熊、緑枠が耳タグつきの熊。こうして並べてみると、いかにノーマークのツキノワグマが多いかも分かってくる。

(from/ gaku )

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2 Comments

  1.  あけましておめでとうございます。
     久しぶりに書き込ませていただきます。
     いつもながら精力的な調査お疲れさまです。下手な調査機関や低予算なりの結果しか出せない行政の調査より遥かに精度が高いのではと感じています。
     今後はいわゆる「新世代クマ」の存在は無視できなくなってくるでしょうね。昔の「エサを採れなくて生き延びるためにやむをえず人里まで出たところを捕殺された哀れなクマ」のイメージで見ていると、今のように「今年はエサが少ないな。どれちょっくら人里まで出てエサを調達してくるか。人間に捕まるからやめろ? なになに、オイラは下調べに下調べを重ねてどこを通れば安全かを知り尽くしているから大丈夫。エサは山のものよりずっと美味いし、結構手軽に入手できる。しかも人間様のガードは甘い上に的外れ。こんな楽でおいしい環境を捨てられるか」と考えている(?)新世代クマに(人間社会が)翻弄されてしまうかも・・・というのは言い過ぎでしょうか?
     でも、gakuさまの調査結果を見た限りでは、そして、私自身もほとんど街中で捕獲された個体の体格がいずれも丸々と肥えていた事実を目の当たりにしてしまっては、決して極論とは言えないと思うのですが。
     

    Comment by もとりんむ — 2010/1/7 木曜日 @ 21:05:17

  2. ■もとりんむ さん

    いまの日本人の自然観はかなりズレておりますので、見えるものも「見えなく」してしまっているのです。
    ここは、しっかりボクのブログでも読んで自然観のリセットをしてほしいもの、です。
    ツキノワグマは滅びゆく希少種でもなんでもありません。
    ごく普通にいる日本の野生動物、なのです。

    Comment by gaku — 2010/1/18 月曜日 @ 5:26:51

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