なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2009/10/14 水曜日   ツキノワグマ日記

ツキノワグマの冬眠穴をめぐる物語

「gakuさぁー 熊の穴を見つけたぞぅー
去年gakuさぁーがカメラ置いてあっただろう、あれから400m登った沢だぁー
木は、どんぐり。
爪跡もあるし、穴の内部も磨かれているから、まちがいねぇー
いま、オレどんぐりの木に登って穴を確認しながら電話しているけれど、マチガイねぇー、ぞ」

飲み友達のスーさんからの電話だった。
スーさんは、とにかく自然好きで、この時期はキノコ採りに歩いている。
なので、彼とはフィールドがいつもバッティングしている。
だから、ボクが日ごろからどんなことをやっているかも、彼はすべて承知ズミ。
そして、ボクが何を考え、何を欲しているかも、すべて分かっている。
親友のイトちゃんと並んで、彼の視線はいちばん信頼がおけるから、この熊の穴の情報はまず間違いないだろうと、電話をもらった時点でそう思った。

熊の巣穴は、ミズナラの大木にあった。
ドラムカンより3回りも太い幹の地上4mほどのところ。
幹には、ほんの1週間以内についたと思われるツキノワグマの爪跡もあった。
願ってもない、絵になるいい木だった。

しかし、この穴に熊が入って冬眠するかは、五分五分だ。
なんとなく、ボクにはそんな予感がしている。
ひょっとしたら、ここでは寝ないのではないのか…
でも、樹洞をチェックしたであろう爪跡もあることだし、何よりも穴の入口を数年前に齧った痕も見受けられる。
このことは、ツキノワグマがこの木をかなりしつこくマークしていることを物語っていた。
だから、こういう木こそ、何年も時間をかけて観察しなければならない、のだ。

ボクは、ツキノワグマは冬眠穴となる樹洞を何頭もが繰り返しチェックをしていると思っている。
いろんな熊が行動中に、入れ替わり立ち代わりに樹洞を訪れて、自分の体のサイズにもっとも適した巣穴をさがしていると、ずっと信じているのである。
だから、めぼしい穴があったら、その穴の周辺を何年間か連続的に観察する必要があると考えているからだ。
そうした上で、結果をだしていきたいと常々思っていた。
このため、このような穴が見つかった時点で、無人撮影用ロボットカメラを何年間か設置しつづけて、黙して語らないツキノワグマの秋の行動を探るのがひとつの夢にもなっていた。

なので、こうして親友が見つけてくれた穴にも、カメラを設置して自分の想像する裏づけをとりたいと思うのである。
カメラ設置に明日から、たぶん2日間はかかるだろうが、大急ぎで行動に移せば今期に間に合うかもしれない。
机上でいろいろ考えているより、とにかく行動を起こせば必ず新しい道が開けるので、明日からは忙しくなる。

スーさんには、ボクの使い古したデジカメを3台あげてある。
また、ネットをしたことがなかったので、同じく使い古したノートパソコンをあげたら、たった1年でマスターして、いまではブログをやるまでにもなっている。
さらには、ボクの乗っていたジムニーも彼にあげることにしたので、スーさんは得意の山歩きをしながらボクには新しい情報をどんどん入れてくれる、のだ。

ボクの知識や技術を欲しがる人は大勢いるが、ギブ&テイクの気持ちを忘れている連中ばかりがこれまでボクのまわりにはあつまってきた。
だから、こういう人たちにはほとんど核心にふれる情報もボクは提供してこなかったが、スーさんやイトちゃんには知識と夢のすべてを語ってきている。
なので、彼らは阿吽の呼吸でボクがいまいちばん何に情熱を燃やしているのかを知ってくれているから、こうして協力もしてくれているのである。
少数精鋭のこういう友達がいちばん動きやすくてストレスもたまらないし、彼らのためにもボク自身が技術力をフル稼働して、あとはツキノワグマの冬眠穴物語を早くみせてあげたいものだと思っている。

写真上から:
1)巣穴のあったミズナラの大木。
2)穴の入口が狭くならないように、熊が傷をつけてあった(矢印の先)。
3)新しい爪跡。
4)こういう生々しい爪跡もあった。

(from/ gaku )

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2 Comments

  1. おっしゃる通り、絵になる木ですね。
    高さがあるので、さて、カメラは、2台?
    ストロボワークも、大変そうです。

    Comment by 小坊主 — 2009/10/15 木曜日 @ 15:12:45

  2. カメラは、いまのところ1台で対処しています。

    Comment by gaku — 2009/11/1 日曜日 @ 9:00:45

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