なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2009/9/23 水曜日   ツキノワグマ日記

ほんとうは木登りがきらいな熊

2009年の梅雨の長雨は異常だった。
6月後半から8月中旬まで、とにかく、雨続きの毎日だった。
それも、篠つく雨もかなりあった。

この雨で、今年ほどスズメバチ類が打撃となった年もないだろう。
なので、山野の実り具合も気になるところで、秋のツキノワグマの活動にも注意していた。
しかし、ボクの設置してある数台の無人撮影自動カメラには、長雨のころからツキノワグマが頻繁に写され、それが今日までずっと続いている。
いくら大雨でも、熊たちの動きにはなんら異常は見られなかったのである。

では、ドングリやクリ、クルミなどの実りはどうかと心配するも、この長雨にも関係なく豊かな実りが実現しているのである。
そして、例年必ず登る木を何本かマークしているので、今年もそれらにカメラを設置するも、ツキノワグマはまったく木登りをしないのだった。
どうやら、たくさんの実りを前にして、わざわざ木に登らなくても餌は食べられると熊たちが判断したようだ。
だからとにかく、今年はほとんど熊棚が見られない、のである。
これは、たしかに不思議な現象だが、これもツキノワグマにとっては当たり前にプログラムされていることなのであろう。
無理してまで木登りをすることはない、というのがツキノワグマの本当の気持ちではないのかと思うようになった。

そんな木登り現場を今年は特に見ないと思っていたら、いつものフィールド内にドングリ糞があった。
脱糞して8時間以内といえるほどに、鮮度がよいものだった。
それは、糞が外気に触れて、ドングリの渋味が変色していく過程でおおよその時間がわかるからだ。
こうした糞があること自体、木に登らないまま熊はちゃんと地上で食事をしている事実もわかる。

この糞を現場で撮影してから、そっと回収をして、近くの渓流で洗ってみた。
ザルで糞をまんべんなく濾して行くと、クルミの殻がでてきた。
ドングリの糞なのに、クルミの殻である。
もちろん、ドングリと一緒にクルミを食べたのだが、ドングリやクリの皮がまったく出てこないのである。
これは、もちろん、ツキノワグマがどのようにしてドングリやクリを食べているかが分かるというものである。
こうして、糞ひとつにしても、黙して語らないツキノワグマの行動が見えるというものだ。

写真上から、
いつものフィールドに記されたドングリ糞。
外観は醤油色だが、中身はまだまだ合わせ味噌の色。
糞の中には、クリの皮らしきが見えるが、
洗ってみればそれはクルミの殻、だった。

(from/ gaku )

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3 Comments

  1. こんにちは。

    県庁所在地から20ki山間地にある30戸位あるある集落から500?ほど離れた斜面に直径が35?前後のクルミの木がたくさんあります。
    今年は、8月中旬から9月上旬までの間、このクルミにツキノワグマがつきました。枝が折れているのと枯れた葉によって、遠くからスコープによって40本まで数えましたが、もっとあります。
    山の反対側斜面でも、少し離れたところ、その他でもクルミはずいぶんと食べました。
    何か、クマ達が申し合わせをして、クルミを集中して食べたようにさえ思われます。
    こんなことはないですよネ。

    Comment by アッケ — 2009/9/27 日曜日 @ 17:05:50

  2. こんにちは。
    4月下旬にブナの新芽を食べるクマを数多く見たとして、先にメールした者です。名前を変えました。
    ところで、「ツキノワグマは、特定のものを集中して食べる習性があるのですか。」
    近くの山間に25戸位の民家がまとまった集落があり、民家から200?ほど離れた山の斜面には、直径が35?前後のクルミの木がたくさん生えているところがあります。今年はクルミが大豊作でした。
    このクルミに8月中旬から9月上旬までの間、ツキノワグマがつきました。枝が折れているのを遠くからスコープによって見つけ、40本まで数えましたが、もっとたくさんあります。
    また、山の反対側斜面でも、少し離れたところ、その他でもクマがクルミの枝を折っていました。
    クマ達が「今年はクルミを食べるんだ」、と申し合わせたかのように、いろいろな地区で、しかも集中し食べた痕跡がありました。こんなことがあるんですか。

    クマの糞から出てきたクルミの殻、gaku先生の写真をみてリアルで感動しました。

    Comment by akke — 2009/9/27 日曜日 @ 17:57:23

  3. ■アッケ さん
    ■akke  さん

    御地には、相当にクマの密度が高いですね。
    きちんと観察撮影ができれば、ボクと同じくらいの成果が上がるハズだと思います。
    ちょっとした観察からヒントを得て、それをどうアイデアに結び付けて、持てる技術で実行するかがツキノワグマを知ることのキーとなります。
    それだけの観察をしているのですから、あともう少しですね。

    >「ツキノワグマは、特定のものを集中して食べる習性があるのですか。」

    あります。
    個体ごとに嗜好度がちがいますから、クルミお宅もおります。

    Comment by gaku — 2009/9/29 火曜日 @ 9:13:09

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