なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2009/9/4 金曜日   ツキノワグマ日記

ツキノワグマの棲息頭数を知りたい…

ツキノワグマの「股間盗撮カメラ」は、順調に作動している。
クマの股間を見ることで、雌雄の区別が完璧につくから、これは個体数把握には絶対に必要なことだからである。

ツキノワグマは希少種で絶滅寸前なくらい数が減っているというのが、これまでの一般人が考える「定説」であろう。
2006年の年などは、専門家という人がNHKラジオの全国放送で、「ツキノワグマは全国に15,000頭しかいない。そのうちの5、000頭を捕殺したのだから、残りは10、000頭しかいないので、これでは絶滅する」。
そういって、悲痛な発言をしていたが、ちょうどボクはその放送を聴きながらクマ撮影用ストロボ製作のハンダ付けをしている最中であり、「そもそも15,000頭の根拠はどこにあるのか、実際にこの人は調べたのか、言葉の端々を聞くにつけこの人は日本での山野の現状をまったく知らないまま熊のことを語っている」と、かなりの突っ込みを入れていたものである。
NHKがこのようなミスキャストによる間違った放送を全国にスピーカーするから、ほんとうの自然界がどんどん歪められて認識され、誇張されてしまう負の部分を強く感じたものだった。

その後、ボクはずっと何台ものカメラを設置してツキノワグマの動静をみているが、次々に現れるメス熊が子供を連れているところをみれば、どんなに捕殺されても、旺盛な繁殖力でかなり補充が繰り返され続けていると判断している。
そして、世間が危惧するほどにツキノワグマは数の少ない動物ではないことも実感している。

では、一体全体ツキノワグマは全国に何頭生息しているのだろうか?
何頭まで減れば絶滅するのか?
何頭以上に増えていれば、余剰部分をコントロールしてもいいのか?
そういった基本的なことに何も手をつけず、確かめるための技術開発もしないまま、「絶滅する」とうわごとのように叫んでいるだけでは国民を納得させられないのではないか。
だから、ボクは、長野県の地元だけでもツキノワグマは一体何頭いるのだろうか、と自分自身の力で探る努力をしてみたいと思った。
写真家として、自分の技術で、個体数把握がどれだけできるのかを自分自身に問うているのである。

それには、まず、クマの姿だけの生態写真を撮影していたのでは、いつまでたってもツキノワグマの雌雄の区別もできない。
雌雄の区別を確実にしながら、身長などで個体差を探り、おおよその個体把握ができれば、自分のフィールド全体にどれだけのツキノワグマが棲息しているのかということに、自信をもって答えられるからだ。
そう、考えながら、「股間盗撮カメラ」のアイデアに結びつけ、とうとう実行に移したのだった。

その結果は、面白いほどに答えが出てきている。
股間ひとつをとってみても、相当な個体差があり、股間写真だけで「アイツだな」と顔や体の特徴までわかるほどになった。
だから、股間カメラの写真をそうカンタンには公開できないが、黙して語らない自然界を探るにはこうしたアイデアは必須なことである。
写真家として、何が面白いのか、どうすれば面白い発見ができるのかを、ボクはいつも考えている。
ツキノワグマの自然界での個体数把握も、そんな好奇心だけでやっているのであるが、世間が心配するほどツキノワグマの数が少なくないことだけは確かである。
これだけは、自信をもって言っておきたい。

写真:「お仕置き放獣」をされた母グマがタグをつけた右耳で前方の音を聞き、左耳では後方の子供の動きに注意しながら行動している。こんな写真からツキノワグマは細心の注意をいかに周囲に払って行動しているのかがよく分かる。もちろん、この子供の雌雄もわかっている。

(from/ gaku )

コメント&トラックバック

4 件のコメント »

  1. 股間カメラ、順調稼動のようですね。

    私も、何の基礎的調査もされておらず、裏付けの無いような数字を、平然と、事実であるかのように語る手合いには、辟易しております。

    コメント by 小坊主 — 2009/9/4 金曜日 @ 16:09:51

  2. 股間カメラ、順調です。
    もう、完璧に個体把握が可能となりました。
    オモシロイ、です。

    コメント by gaku — 2009/9/8 火曜日 @ 23:33:00

  3. おはようございます。

    熊の個体数を知りたい現場の関係者は苦労を続けているようですが、現場を知らない「学者」やマスゴミが「怪しい」推定値を断定的に振り回しているようです。

    現場から出ている報告に眼を通せば信頼性がどのくらいかわかることです。

    報告特集『クマ類の特定鳥獣保護管理計画の実施状況と課題』
    長野県ツキノワグマ保護管理計画における生息数のモニタリングとその課題 岸元 良輔,佐藤 繁 哺乳類科学 48(1):73-81,2008
    http://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/48/1/73/_pdf/-char/ja/

    コメント by beachmollusc — 2009/9/16 水曜日 @ 8:03:39

  4. beachmollusc さん

    先生、いつも、お知らせありがとうございます。
    さっそく報告書を読ませていただきましたが、金がかかるだとか、難しいとか、広すぎるとか…、ずいぶん言い訳と泣き言を連ねておりますね。
    「黙して語らない自然界」を探るには、大胆な発想力と技術力と実行力と好奇心があれば、かなり可能だとボクは思っております。
    そうした考えのもとで自分なりにやっていると、面白いほど結果が見えてくるのが不思議です。

    「クマクール=熊来ーる」という媚薬の開発だけでも、ヘアトラップなどかなり密度の濃いアプローチができるんですが、ツキノワグマ=ドングリというこれまでどおりのセオリーしかもてない人には新しい発想力もでてこない、と思います。

    ところで、「股間盗撮カメラ」はちょっと聞こえが悪いので、「マタミール=股見ーる」にでもしようか、と思っています。

    コメント by gaku — 2009/9/18 金曜日 @ 10:44:12

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