なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2009/7/24 金曜日   ツキノワグマ日記

熊の野イチゴ食事作法

野イチゴの季節がやってきた。
モミジイチゴにクマイチゴ。
これらは、僕らが食べても美味しい野生の恵み。
山野のいたるところに、これらのイチゴはあるのだが、はたしてツキノワグマはどれだけ食べているのか長年の謎でもあった。
それは、野イチゴを熊が食べたという痕跡がまったくみられず、林も傷んでいないからである。

熊のような大きな動物が野イチゴの林でイチゴを食べるとすれば、林はかなり乱れていてもいいのではないか、そう思うのがふつう。
クリやクルミの木に登って、枝をボキボキ折る熊のことだから、野イチゴだってかなりの痕跡があっていいだろう。
これまでずっとそう思って、野イチゴを観察してきたが、木が折られたり踏み荒らされたりした形跡を見たことがないのである。

そんなある日、やっとイチゴ100パーセントの熊の糞を見つけた。
ツキノワグマは、やはりしっかりと大量の野イチゴを食べていたからである。
それなのに、野イチゴの木が傷んでないということは、まったく傷をつけずにイチゴだけを丁寧に食べていることがうかがえる。

ツキノワグマは、山野の種子散布者だから、森のあらゆる実を食べている。
ドングリやクリ、クルミはその一部であって、まだまだ私たちには知られていないところで多様な植物の種子を大量に食べているからである。
ダンコウバイやアオハダなどはその代表格でもあるが、これらの木がツキノワグマによって痛めつけられているところをボクはまだ見たことがない。
それは、種子はいただくが、傷をつけてはならない木と傷をつけてもいい木を、ツキノワグマはちゃんと読み分けて行動しているからである。
その、傷をつけてはならない木に、野イチゴも入っていたのだと、最近になってようやく思うようになってきた。

森を舞台にして生きるツキノワグマだから、熊だけではなくあらゆる野生動物たちと植物や種子との関係でその生活史を追ってみることは大切なこと。
そうしたちょっとした視点で、生物と植物と森を同時観察していくと、黙して語らない自然界のほんの1ページをとりあえず探ることができ、目うろこのことばかりとなるからである。
今回ツキノワグマの「イチゴ糞」を発見できたのは、ここ数年間のそんなちょっとした大収穫だと思っている。

写真上:モミジイチゴとクマイチゴ
写真下:モミジイチゴ100パーセントの熊の糞だが、雨模様など状況によっては2日ほどで分解されてしまうから探すのもタイヘンだ。

(from/ gaku )

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5 件のコメント »

  1. 久しぶりにしみじみ読めました。
    仕事がどうにもならない状況になって(土日無しで毎晩12時過ぎ)
    自然大好きな、私がほっとする処が、ここでした。
    8-9月に絶対1週間以上休んで、山の中で昼寝三昧します。
    鳥を見たり、花を見たり、写真撮ったり、スケッチしたり。

    人間に痛めつけられてる、人間には凶暴と思われてるクマですが
    素晴らしい知恵ですね。多分痛めつける木は、痛めつけた方が
    「子孫を残さねばあぶねええ」と言うことで、
    実をいっぱい付ける様になる木、草で
    痛めつけちゃうと、枯れてしまうのが痛めつけない木と草なのでしょう。
    その様な本能は、多分人間も持ってた筈だけど
    便利さと知識を得ることにどん欲になると、無くなる知恵だったのでしょうね。
    そう言う知恵を思い出しに、絶対山に籠もりリフレッシュしてきます。

    プロフィール
    gaku様より、3学年下
    学生時代は、ワンダーフォーゲル部
    社会人になってから、休みの全てを山とスキーと将棋に
    もっと遊びたくて、自営業(姉歯やってます)
    鳥見、将棋、写真、焼酎、糠漬け、濁酒、燻製作りが大好きです。
    本物志向なので、濁酒にイーストス使うのは邪道
    あれは、酸っぱい濁酒風飲料。
    腐れ酛は、何度も挑戦しましたが、敗退してます。
    清酒酵母で作るドブちゃんは絶品です!と居直る。

    コメント by ひよ — 2009/7/28 火曜日 @ 23:07:17

  2. クマ棚が象徴する、あの、やりたい放題のクマが、イチゴの木を傷つけないように、一粒ずつ、やさしく食いちぎっている様を想像すると、可笑しさが、こみ上げてきます。

    コメント by 小坊主 — 2009/7/29 水曜日 @ 22:37:37

  3. ■ひよ さん
    >多分痛めつける木は、痛めつけた方が
    「子孫を残さねばあぶねええ」と言うことで、
    実をいっぱい付ける様になる木、草で
    痛めつけちゃうと、枯れてしまうのが痛めつけない木と草なのでしょう。
    その様な本能は、多分人間も持ってた筈だけど

    おっしゃるとおりなんです。
    これらの観察から、人間はリンゴやブドウ、ミカン…といったような果物栽培での「剪定」という方法を編みだしました。
    ただ、ヤマブドウの木は、熊は痛めつけないので、それだけは不思議。

    酒づくり、ボクもイーストドブちゃんやりましたが、酵母が生きておりすぎて健康によくないと諦めました。

    ■小坊主さん
    そのとおりなのですよ。けっこう嬉しくなる行動です。

    コメント by gaku — 2009/7/31 金曜日 @ 9:42:15

  4. 北海道でなされたヒグマの糞の調査報告が出ていましたが、サルナシ(こくわ)の実が重要な食料になっているようです。サルナシが熟す時期が冬眠する前の熊の食いだめのタイミングにあっているようです。また、種が消化されないで排出され、種子散布に熊(そしてサル)が貢献しているのでしょう。

    サルナシの情報を探していたら、長野県では野生のサルナシを採取して様々な加工製品を作っているようです。そこで、信州のツキノワグマと人間の間で野生あるいは栽培されているサルナシを巡って競合関係になっていないか、ということが気にかかっています。その状況についてご存知のかたからの情報提供を期待しています。

    コメント by beachmollusc — 2009/8/6 木曜日 @ 7:48:21

  5. >信州のツキノワグマと人間の間で野生あるいは栽培されているサルナシを巡って競合関係になっていないか、ということが気にかかっています。

    長野県でのサルナシの加工製品ですが、ごく一部の地域だと思います。
    ボクにとっては、このような製品のあることは初耳、でした。
    少なくも、ボクのフィールド(中央アルプス、南アルプス)周辺では加工してませんので、熊とのバッティングはないです。
    また、サルナシは、熊以上にサルが好んでたべていますが、テンを含めて散布者になっているハズです。
    そして、どの種もサルナシの木をまったく痛めつけず丁寧にあつかっているのが、特徴です。

    コメント by gaku — 2009/8/11 火曜日 @ 10:42:02

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