ツキノワグマを無人撮影カメラでとらえる
無人撮影ロボットカメラを使えば、自然界のすべてが何でも撮れてしまうと錯覚している人がいる。
いや、ボク以外に、ほとんどすべての人がそう信じているのではないか、と思う。
先にも書いたが無人撮影装置は、センサー、カメラ、ストロボからなる装置だが、これだけでは使えない。
目的意識をしっかりもって、自然界の機微を熟知しないと、どんなに性能がいい装置でも充分な力を発揮しないからだ。
むしろ、性能を最大限に引き出すことの大切な部分は、それをあやつる人間の技術と努力にかかっていると言っていい。
それには、自然を熟知して、あらゆる手段を尽くしてこそ、結果がでるというものである。
例えば、
夜間活動するガに、赤外線だけを狙って飛び込んでくる種類がいることも理解しなければならない。
キリギリスの仲間が、防水用のビニールテープなどを齧って穴をあける。
電源コードを、ネズミやタヌキが齧って切断させてしまう。
クモやドロバチがレンズの前に巣をつくってしまう。
雨滴が思わぬところで機材をショートさせてしまったり、草木が一晩で10cmも生長することだって念頭におかなければならない。
結露の問題、太陽光の光害、低温や高温の対処、…etc
とにかく、カメラだけにしか関心のない人間には、このような伏兵のあることにまったく配慮できないだろう。
それなのに、ボクの機材を欲しがる人間は多い。
機材さえ手に入れれば、明日からボクと同じ写真が撮れると考えているからだ。
そのために、機材を盗みにきたり製作依頼の問い合わせは、「けもの道」を発表してからの30数年間にいやというほど経験してきている。
そうした問い合わせが、昨日も一件あった。
飛行機で2時間半もかかる地域からだったが、来月にでもでかけてきたいとのことだった。
こういう人にどんなに説明しても分かってもらえないし、機材が入手できたとしても使いこなせないから、結果的にボクの指導が悪いのだといわれてしまう。
『ヤンキースの松井選手がホームランをどんどん量産しているけれど、
松井選手と同じバットとグラブを持てば、貴方は明日から松井選手になれますか?』
このようにボクは言っても、それでも、分かってもらえない。
おまけに技術を教わるのに、使ってない遊んでいるコンパクトカメラでなんとかプロ並みの仕事ができないだろうかと、セコイことを言ってくる。
ポケットアーミーナイフと刺身包丁の切れ味の区別も、できてないのである。
カメラの技術を、そんなレベルでしか判断されていないことを知るとほんとうに悲しくなる。
アマチュアカメラマンやプロ仲間、ハテは動物や野鳥を研究している専門のプロや行政の人たちの多くが、この程度の意識レベルしか持ち合わせていないのも事実である。
これでは、ゆっくりだが刻々と変化をしつづける自然界をきちんと理解していくことは不可能だ。
写真:山中に設置中の無人撮影ロボットカメラ。
機材の心臓部だけはきちんとしたものを使うが、手抜きでもいいところはポリバケツだって流用する。


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