なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2006/5/14 日曜日   ツキノワグマ日記

自宅庭先でツキノワグマに襲われたKさん

5 唐沢さんの傷

2004年の9月、知人のKさんがツキノワグマに襲われた。

それも、まさかという自宅庭先での遭遇だった。

そのときの様子を説明しながら、ズボンを脱ぎ、シャツを脱いで、傷口を見せてくれた。

大腿部にはクマの牙の痕がのこり、内出血をしていた。

パンツ内の盲腸付近には、かなり深くて大きな傷もあった。そして、わき腹、背中へと深い爪痕がつづく。

その爪で首の頚動脈を引きちぎられなかっただけでも、不幸中のさいわいだった。

Kさんは、ツキノワグマと遭遇をしてこれほどの傷を負ったが、

『なーに、自分の不注意だったのだから、恥ずかしいことだ。』

そういって、医者へも行かず、行政にも届け出なかった。

傷口をみて、野生動物の牙や爪は破傷風菌などの危険性があるから、ボクは何とか医療機関だけには行かせた。

今回の事故は偶然性も高かったが、人家の庭先までツキノワグマが出没するのは犬の放し飼いがなくなったからである。

つい半世紀前までは、「日本犬」がいて、みんな放し飼いにされていたから集落を彼らが守ってくれていた。

だから、集落への野生動物の侵入は稀だった。

日本の気候風土に馴染みながら数千年も人間と寄り添って生きてきた日本犬は賢かったから、人間への危害もなかった。

しかし、戦後になって洋犬が入り、雑種化したりして、犬の性質も悪くなった。

その後、放し飼いができなくなり、犬もストレスが溜まって、人間との咬傷事件が増えて犬に対する認識も変わっていった。

加えて、近年は精神的にも萎えてしまった軟弱なペット犬ブーム。

そうした人間社会と犬社会の間隙を突いてきているのが、野生動物たちなのである。

野生動物の「野生」というものを、きちんと理解できる人間もいなくなってしまった。

こうしている間にも、野生動物は「野」で「生きる」ために、自分たちを日々磨いているのだ。

今回のツキノワグマも、山麓部を通る中央高速道路を超え、交通量の多い国道を横断して、Kさんの庭先までやってきた。

(from/ gaku )

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