熊の松枯れドラッグストアー
昨年の10月のことだった。
何気に、中央アルプス山麓の林に入るとマツクイムシ防除の燻蒸ビニール囲いが見えた。
これはこれで、見慣れてきている風景でもあるから珍しくはないが、その燻蒸ビニール囲いを熊が破いていたのだった。
それも、8カ所あったうちの半分にあたる4カ所に、爪をかけていたのである。
ツキノワグマがこんなことまでしているのかぁーと、これには驚いた。
燻蒸処理したビニール囲いとは、マツクイムシにやられた松の木にまだ潜むマツノザイセンチュウやマツノマダラカミキリを殺すためのものだ。
松の幹を輪切りにして、ビニールですっぽりと覆い包み、その内部に燻蒸薬品を入れて撲滅をはかるという計画である。
燻蒸薬は、化学薬品だから数ヶ月の効力を発揮していくことだろう。
さらには、薬品成分も松の幹や土壌にも残留するであろう。
それを、ツキノワグマが目的をもった意志のもとでビニールを破いていたのだった。
これは、何を意味しているのだろうか。
燻蒸処理をした日付ラベルには、平成20年7月22日と書かれていた。
熊が破いた跡を発見したのは、10月10日。
発見時では、落ち葉が積もったりしていて、破れた箇所に時間経過が感じられたから、ツキノワグマの行動は燻蒸処理をしてから2ヶ月以内と推測できた。
ということは、まだ薬品がかなり効力を発揮しているころである。
殺虫剤でも、多量に摂取すれば生物にとっては毒となろう。
熊がこの燻蒸剤に興味をもち、目的をもっていたとすれば、微量成分が「薬」となることも考えられる。
いい方向に解釈すれば、この燻蒸剤が熊の健康維持に一役買ったということではないか?
こうしたツキノワグマの思いがけない行動から、現代社会を考察すればいろんな視点で自然界の動きを読み解いていかなければならないと気づく。
リンゴやナシ、ブドウなどの果樹園でも多量の農薬散布がされているし、寒冷地の山間地に大量散布されている融雪剤である「塩化カルシウム」だって、野生生物たちにどのような影響があるのかを考えてみる必要がある。
古い猟師がぽつりと言った。
『昔にくらべて、最近の熊には寄生虫が少ないんだ、よな…』
こんな一言が、ボクに新たな好奇心と実験を与えてくれた。
写真:燻蒸処理中のビニール囲いと、熊が破いた跡。
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燻蒸処理に立ち会う機会がありますが、本当、臭いがキツイです。
もろに硫黄そのまんまって感じ。
一応、作業中は、防毒マスク着用を義務付けされていますが、装着している作業員は、まず見たことありません・・・苦笑。
薬も毒も紙一重、なるほどです。
コメント by もっち — 2009/1/11 日曜日 @ 11:42:18
シートンの「ハイイログマの伝記」にも、傷をいやすために温泉の源泉にやってくる、というシーンがありますもんね。
コメント by くまがい — 2009/1/11 日曜日 @ 13:17:23
山林測量をするときに、ラッカースプレーで着色した木杭を使用しマジックで測点番号を記入してゆくのですが、動物が歩いた後、シンナーの匂いが残るそれらの木杭が引き抜かれていることが良くあります。
明らかに食い物としては不適であろうヒノキやクスノキ科(カゴノキに至っては強烈な洗剤のにおいがする)の、化学薬品的な強いにおいを発する樹木の葉っぱを、常食としている植物の葉が周囲にあるにもかかわらず鹿や兎、カモシカが齧っていたり、クリやシイの実がそこらに転がっているのに、イノシシがわざわざテレピン油系の臭いがプンプンするヒノキの根っこを掘り返して齧った跡をよく目にします。
“薬”として利用する意図が明確にあるかどうかは疑問ですが、動物にも当然、香りや薬品による覚醒あるいは酩酊の「快楽のための個人嗜好」があり、その習慣の社会伝播も人間と比較すれば弱いながらにあるんでしょうね。その習慣が偶然の結果として“薬品による疾患の治療・健康維持”になり、その個体群の反映につながることもあるでしょうね…まあ、逆の方が多いのかも知れませんが。
コメント by よさく — 2009/1/11 日曜日 @ 15:13:39
そういえば正月前、食料を片付けてしまおうと貰ったウサギ一羽を骨ごと叩き切り、余っていたショウガ、ニンニク、その他香辛料を大量投入した大辛カレーを作りました。いつものように家の裏に食べ残しの骨を捨てておきましたが、香辛料好きな私でも初めは食うのがためらわれた強烈な刺激臭なので「さすがに誰(おかしいな…笑)も持っていかないだろう」と思っていたら、次の日の朝、きれいになくなっていました。
夜中に私の食べ残しを持って行く人たち、じゃなくて動物はタヌキ、アナグマ、イタチ、近所の猫を確認しており、近くでゴロスケホッホが聞こえる時もありますのでフクロウも来ているのかも知れません。
畑正徳氏(ムツゴロウさん)の動物達みてもわかるように、特殊な自然環境で生息・進化してきた動物ではなく、人間に近いところで幅広い地域に生息している動物達は、我々が思う以上にかんたんに、自然にはない人工物に慣れて利用しますよね。
コメント by よさく — 2009/1/11 日曜日 @ 15:56:42
夜、山道(立派な国道ですが^^)を走っていると
時々鹿が塩カルを舐めているのを見かけます。
「鹿も疲れてるのかな?」などと子供たちと笑いますが・・・。
動物はいろんな意味で「進化」し続けて
人間だけが凝り固まったまま取り残されそうです。
ぞっとします。。。
コメント by むささび — 2009/1/13 火曜日 @ 18:12:39
シカの「塩なめ」は、足尾の廃屋の床下をなめているという宮崎さんの名シーンがありますね。
日光では駐車場のトイレ脇でも塩なめが見られます。
(ハイカーが立ち小便をするので)
疲れているというよりも、塩が必要なのは我々人間と同じなのです。
また、サルが堰堤のコンクリートをなめていることもあります(海砂を使っているためにしょっぱいのでしょう)
ゾウは岩塩の在処を低周波で教え合うそうです。
コメント by くまがい — 2009/1/14 水曜日 @ 10:04:47
■よさく さん
>“薬”として利用する意図が明確にあるかどうかは疑問ですが、動物にも当然、香りや薬品による覚醒あるいは酩酊の「快楽のための個人嗜好」があり、
こうした実験と結果の撮影も、そろそろボクの技術で視覚言語に置き換えなければならないと思っています。
まさに、生物はこれまで考え言われているような一面的な見方だけではいけないと思うから、です。
■むささび さん
>動物はいろんな意味で「進化」し続けて
人間だけが凝り固まったまま取り残されそうです。
まさに、おっしゃるとおりです。
このことに対しても、ボクはいろんな意味で新たな視覚言語に挑戦中です。
今後の仕事にもご注目ください。
コメント by gaku — 2009/1/14 水曜日 @ 10:07:38