なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2008/11/27 木曜日   ツキノワグマ日記

新潟県のクマ事情…

山形県の小国町ではすでに午後の日差しもかなり傾いていた。
小雨も降ってきて寒かったので、新潟県の関川に入ったところで温泉に浸かった。湯上がりのころには、外はもう真っ暗。
土砂降り、である。
こんな日は、車を止めて早く寝たかった。
しかし、なんとなく車を走らせてそのまま新潟まで。
途中で、鮨と酒を買って、高速道路に乗った。
PAがあったので、そこに滑り込み食事をして、寝袋にくるまった。

翌朝は、6時に目が覚めた。
キャンピングカーなので、車中の疲れはない。
相変わらず雨が降っていたが、急に南魚沼市まで行ってみようと思った。
10月のはじめに、住民が立て続けにツキノワグマに襲われた場所を見てみたかったからだ。
カーナビで場所を選定して、雨の中を走った。
高速には前夜から入っていたので、ETCの料金割引もきき、かなり安かった。

住民がツキノワグマに襲われた場所はすぐにわかった。
全体の地形をみて、これならばツキノワグマがどこに出現してもおかしくない環境だと思った。
少なくも、ボクにはクマの動きがよくみえたからだ。
だが、地域住民にはそれはまったく見えていないこと、だろう。
地元で暮らしている何人かの人に尋ねてみたが、クマの事故は意外にも他人事のような返事がしてきた。
これは、どこの事故現場を訪ねても同じだった。
当事者は事故後トラウマになってしまっている人が多いのに、こういうことは本人以外に苦しみを分かち合えないのだろうか?

新潟県は、広い。
富山県境から山形県境まで、そして内陸に隣接する県境などを含めての山容をみれば、とにかく広く重厚で、山も深い。
これだけの自然環境があるのに、ツキノワグマの生息数が「600頭」と推定されている。
この数は、ボクにとってはあまりにも疑問である。
どのような調査方法と自然環境を真偽してのことだろう、か?
ゼロが一桁ちがう、と思う。

雪の多い地域は、ボクのフィールドと同じにはいかない。
しかし、地域できちんと調査すれば、それはそれなりにかなりの結果がでることだろう。
ただ、それができていないだけ、のことである。
地域の目の前にある自然を、それぞれの地域の独自な目で見なければならないのだが、それができていないのだと思う。
クマが沢をどのように歩き、尾根をどう越えて、斜面をどのように横断していくか。
現場でちょっとしたサインに気づき、その場で対応していく直感力が必要だからである。

そして、ブナやドングリの実をクマが食べているといった「常識」的発想をいちどリセットして目の前の自然を見てみる必要もある。
今年のクマは、ほとんどそれらを食べていない、からである。
ということは、それぞれの地域でそれぞれの見方を確立しなければならない、ということでもある。
無人撮影ロボットカメラにしても、ヘアトラップを仕掛けるにしても、やみくもに仕掛ければいいというものではない。それぞれの地域環境に即した方法で、もっとも効率のいい場所を探しださなければならないからだ。

人身事故のあった現場を見て、これはやはり地域住民と行政も、現代のツキノワグマ事情を甘くみていると思った。
沢沿いや集落の内部にまでクルミの木がかなり自生しているし、あの環境ならば、ほんとそれこそツキノワグマはどこでも歩いているからである。
むしろ、事故が少ないほうが不思議だと感じた。
これからも、このような人身事故は間違いなく起きる、であろう。
そのくらい、新潟県はどこも自然が豊かな環境だからである。

写真上:山、人家、農地…、このような地形が典型的な出没地帯。
写真中:戦中に伐採されたという山の回復はこれから上り調子なので、クマにとっては絶好機となろう。
写真下:集落のちかくには案の定このような看板があった。これも、地域のサイン。この看板1枚にどれほどのクマの存在が読み取れるか、だ。

(from/ gaku )

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