なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2006/8/25 金曜日   ツキノワグマ日記

散歩道でツキノワグマが人を襲う… 2

ドラムカン檻

ツキノワグマに襲われたFさんの話を聞くと、ほんとうに一瞬の出来事だったし、怖かったことがうかがえた。

すごいスピードで走ってきたので、無我夢中で窪みに背中を丸めて伏せたそうだ。

このために、尻と背に爪を立てられたのだが、これが仰向けだったり立ち上がったままだったら、どのような展開になっていたかわからない。

ツキノワグマの前足の力はすごいから、あの爪で首の頚動脈でも引っかかれたら、生命もなかったであろう。

その意味では、Fさんのとった行動は身を守る上では正しかったと思う。

こうして主人が熊に襲われているときに、連れていた犬はどこかへすっとんで逃げてしまったらしい。

その犬は部屋の中で飼われていた一応「柴犬」だったが、眼がまん丸で鋭さがまったく感じられないおとなしい雌だった。

熊に向かうだけの訓練もなされていなかったから、逃げて当然だ。

しかし、状況を分析してみると、犬がまず最初にツキノワグマを発見したことだけは確かだった。そして、その犬がツキノワグマを逆に猛らしてしまった。

こう考えると、熊が普通に行動している山麓部で犬を散歩させている人の多さには改めて驚く。

ボクのこれまでの調査では周辺には20頭以上のツキノワグマがいることは確かだから、そんな場所で不用意にジョギングしたり、いろんな犬種を連れて歩く人々のなんと多いことか。

市街地から車で高原までやってきて、散歩する人。Iターンして近所に家を建てて、老後を楽しんでいる人。別荘にきて、周辺を散策している人。

こうした人たちを観察していると、夜間にも出歩いているから、いつツキノワグマに襲われてもおかしくないとボクは思ってきた。

だが、そうした危険性を注意すれば「いらぬお世話」として煙たがれるから、助言はしてこなかった。

まあ、そこはこれからも、自己責任でいってもらうしかないだろう。

そう思いながら、Fさん宅からの帰りに再度ツキノワグマの現場へ立ち寄ってみた。

襲撃事件から5時間ほど経っていたが、そこにはもう「学習放獣」をするためのドラムカン捕獲檻が仕掛けられていた。

一昨年にもツキノワグマを捕獲した現場とまったく同じ場所だった。

人に立ち向かってきた熊をどう「学習」させて「放獣」するつもり、なのだろうか。

写真:襲撃現場に仕掛けられたドラムカン捕獲檻

(from/ gaku )

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