なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2006/8/23 水曜日   ツキノワグマ日記

散歩道でツキノワグマが人を襲う… 1

襲われた林道

午前の10時30分ころから、ムササビ荘のまわりを市役所の広報車がさかんにがなりたてて走り回った。

何だろうと耳をすませていると、近所にツキノワグマが出たから、外出には鈴やラジオを鳴らしながら注意するように呼びかけていた。

知り合いが車に乗ってアナウンスしているのだろうし、熊の棲み家に住んでいるのだから、熊がいて当たり前なので冷やかしてやろうと外へでた。

やがて広報車がやってきたので、何を騒いでいるのだろうと訊いてみた。

なんと、ムササビ荘から800mほどのところで、散歩中のオジサンがツキノワグマに襲われたというではないか。

場所は、どう考えてもボクが毎日のように散歩したりするフィールドだった。

まずいことが起きたものだと、被害者のお宅まで出かけてそのときの様子を聞いてみた。

被害者Fさんは、65歳。

6年前に名古屋市から引っ越してきて、駒ヶ根高原の近くに住んでいた。

愛犬の散歩に毎日家から1kmほどを車で出かけて、スキー場で犬を放して、近くの山野を散策していたのだった。

今日も、9時半ころから犬と一緒に林道を歩いていたら、10mほど先をいく犬がいきなり吠えたかと思ったら「ブッフォー」という威嚇声と同時に、犬がキャインっと鳴いて一目散に主人の下へ走りこんできたらしい。

そのあとを追って、ツキノワグマが猛然と飛び出してきて、Fさんに馬乗りになってきたのだった。

それは、一瞬のできごとであり、Fさんは地上に伏せたがクマは尻と背中を引掻いて、逃げ去ったという。

このとき、連れていた犬は主人を守ることもせずに、どこかに逃げてしまった。

Fさんは、一目散に走って車に戻り、薬局へ行って薬を求めたところで、破傷風などの危険性があるから病院に行くことを進められたのだった。

そこで、病院へ行って事件が発覚し、市役所の広報車となった次第なのである。

それにしても、現場はボクもよく知っている場所だから、ツキノワグマがいて当然だった。

そこは、毎年この時期には頻繁にツキノワグマが出現してきているからだ。

襲われて当然な場所だが、犬がいたために、被害にもあった可能性もある。

まあ、それも運といえば仕方がないが、襲われたFさんもまったく熊の出現を予測していなかったそうだ。

地元の人間なら若干の注意力も働くだろうが、リタイヤしてIターンしてきた人にはこのような自然界への配慮はできないのかもしれない。

そういえば、中央アルプス山麓には、そのような新しい人たちがかなり住みはじめている。

こうした人たちの自然への心理状態も、今後の考察材料になることは間違いなさそうだ。

写真:Fさんはこの林道をカーブしたところでツキノワグマに襲われた。

(from/ gaku )

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