なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2008/9/16 火曜日   ツキノワグマ日記

2008年のツキノワグマの動き

2008年9月中旬。
信州のボクのフィールドでは、ツキノワグマがもっとも活動している時期にあたり、いたるところでその動きがよくみえる。
今年も、また、すごい動きをしている。

今年と表現したが、2004年から注意しはじめているから、もうすでに5年間にわたって丁寧に見てきていると言ったほうがいいだろうか。
この5年間には、2004年と2006年の「大量出没」年も含まれている。
これらの年を含めて、2004年、2005年、2006年、2007年、そして2008年を見比べていくと、この5年間まったく同じ動き、なのである。

2006年は、長野県の公式捕殺数は558頭。密殺の数字はここにはでてこないからどれほどのツキノワグマが別に生命を落としたかはわからないが、かなりの数に上るであろう。
そんな2006年の翌年である2007年は、ツキノワグマの動きは公式にはひっそりとしていたものだ。
2005年も、同じくひっそり年だった。
なので、2007年には、ハンターまでもが「2006年にあまりにもクマを捕殺しすぎたから、数が減りすぎて、今年はでてこないのだ」とまで言い切った人もいた。

しかし、以前にも書いたことだが、ボクの無人撮影定点カメラには2007年にも同じようにツキノワグマがばんばん写されていた。
私たち人目に、目立つ年と目立たない年があっても、無人撮影定点カメラには毎年同じようにツキノワグマが写され続けていた、からだ。
こうした無人撮影カメラのデータを見比べながら、今月も周辺に起きているツキノワグマの痕跡を探ってみれば、これがまた5年間まったく同じ動きをしているからである。
どんなに殺されようが、毎年カメラの前に出没してくる姿や、クルミやクリの木に登るツキノワグマたちに大きな変化はみられないからだ。

ためしに、先日は中央アルプスのハイマツ地帯の稜線部まで出かけてきた。
標高3000m近い稜線部にもツキノワグマはちゃんと生息していたし、その日のうちに中域と里部までを一気に見て回れば、どこの部分にも同じようにツキノワグマが出没していたからだ。
「奥山が餌不足だからツキノワグマは里へ出てくる」といった論調は、ボクのフィールドでは当てはまらない。
このことは、かねがねボクが言い続けているように、ツキノワグマは確実に増えてきており、分母そのものが大きくなっているからだ。

しかも、捕獲には「ハチミツ」が餌として使われるが、ハチミツには見向きもしない個体もいる。
いわば、ハチミツへの嗜好度の強い個体たちが、これまで重点的に捕殺されてきたといってもいいだろう。
その証拠に、ボクのフィールドでは今年(2008年)は、ミツバチへのクマによる被害が非常に少ない。
これは、ミツバチ依存タイプのクマたちが、かなり減っていると考えてもいいだろう。
それなのに、木に登ったりして餌を食べた痕跡は例年通り、なのである。
このことから考えても、一体全体何頭のツキノワグマが生息していてどんな暮らしをしているのかをきちんと押さえていくことの大切さを痛感する。
それができないまま、安易に「絶滅する」とか「希少種だから」といって、保護だけを前面に押し出していくことのほうがツキノワグマのためにもよくないのではないか。

ボクは、ツキノワグマの「保護」には反対しない。
保護を口にするのならば、まずはツキノワグマがどのくらい生息していて、どこまで数が減れば絶滅するのか、どれ以上に増えれば余剰個体を間引いてもいいものなのかといった、基礎となるデータを早く出すことであろう。
それなのに、毎年のように「今年のドングリの実りぐあいは…」といってその場だけのクマ出没情報に終始していたのでは、ツキノワグマをはじめとして日本の自然界全体を何も知ろうとしていないのではないかと思ってしまう。
この5年間のツキノワグマの動きをみて、毎年同じ動き方をしているという事実を自分自身で知ってみれば、これは安易に「絶滅する」「貴重種だから」「いない」などといった技術不足による責任転嫁のような言葉の羅列はボクにはできない。
だから、まずはツキノワグマのことを中立な立場から早く知ってみたいと思っている。

写真:ただ自動撮影しているだけでは、ツキノワグマの肝心な雌雄の区別がつきにくい。
雄は、立ちあがらせれば見事ないちもつがあるから、これで区別がつく。こうした撮影技術開発も長年自動撮影をやっていると、クリアーしなければならないことに気づく。

(from/ gaku )

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2 件のコメント »

  1. 初めてコメントさせていただきます。
    薩摩の山姥の娘でございます。^^

    天龍の熊は「植物性チェーンオイル」が好きなようです。
    山仕事で使うために置いてあった容器が最初に持ち去られたのは数年前。後日発見した容器には鋭い牙で開いた穴がありました。(その威力にはゾッとしますね。)今年はプラ容器ではなく一斗缶のまま必死に担ぎ上げたにもかかわらず、それごとどこかへ持っていってしまったそうです。植物性のチェーンオイルは美味しいのでしょうか?

    山に入らない私は、家族が山で熊と鉢合わせしないよう祈るばかりです。

    コメント by むささび — 2008/10/1 水曜日 @ 12:35:56

  2. おやおや、これはこれは山姥の娘さん、ご無沙汰です。
    御地には、たくさんのツキノワグマがいますよ。
    地図を広げて裏山の名前を見ていただければ分かると思いますが、あそこは昔からツキノワグマの巣となっていますから、ね。
    いま、となりの村に通っていますが、とにかくすざまじくクマはいますので、地続きですからご注意ください。
    近々連絡して伺います。
    父ちゃんとも、オイルの件も含めてお話ししたいです。
    山仕事、ほんとうに気をつけてくださいね。

    コメント by gaku — 2008/10/5 日曜日 @ 22:56:07

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