山にこだまする一発の銃声…
『今朝5時30分、銃声が一発したぜぃ』
そういって、ボクの助手が報告にきた。
彼の家に聞こえるのだから、『あの檻しかないだろう』とボクは答えた。
助手も、「オレも、そう思う、あとで見ておくよ」ということになった。
その檻は、有害駆除という名目でイノシシ用に仕掛けられているものだ。
もう2年も前から檻の設置がつづいているが、そこに何回かツキノワグマが入ったことがある。
そして、そのクマは内密に殺されてきている。
なので、銃声があったと聞いたときには、ツキノワグマでないことを祈った。
ツキノワグマを現場で射殺するには、檻設置者だって、銃声をたてることはマズイと気がついているだろう?
夕方になって、再び助手がやってきた。
『檻を見てきたけれど、分からなかった、血のりもなかったしぃ…』、そういう報告だった。
じゃあ、ボクが確認しようということで、その檻まで一人で出向いてみた。
檻から3mほどのところに、小さな血のりがあった。血のりの面積は小さかったが、土中深くに血液が染みこんでいる感じがした。
檻の内部のようすを確認したが、今回はツキノワグマではなくてイノシシを殺したみたいだった。
もしツキノワグマを射殺したのなら、それなりの特徴が必ずあるものだが、ボクが確認するかぎりそれはイノシシだった。
助手はいったいどこを見ていたのだろう?
まだまだ、修行が足りないな、と思った。
一応、ツキノワグマではなかったので胸をなでおろしたが、檻を設置してある付近にはツキノワグマの動きが確実にあるところだから今後が心配だ。それも、3-4頭のツキノワグマの痕跡があるので、どれかが入ってしまうことだろう。クマが檻に入れば、まちがいなく殺される。
それは、クマを守ろうという意識がここ2年ほどの間に急速になくなってきていることをボクは肌で感じるからだ。
「学習放獣」も効果のないことをみんなが知っているし、農業被害をガマンするにも限界がある。また、観光地を控えているところでは、クマが出没すれば風評被害もひろがり、地域住民の生活にも差し障る。
保護も大切なことだが、ツキノワグマを捕殺しても必ず復活してくることを、ほとんどの地元民が知っている。それだけ、予備軍がたくさんいるということであり、絶滅に向かうとは誰もが思っていないからだ。
はやりここは、この地域にツキノワグマがどれくらい生息しているのかという正確な数の把握が大切だろう。その数値がつかめれば、「保護」も「捕殺」にも、メドがつくからである。
そうした、ツキノワグマの数の把握には、知恵も技術もアイデアも、必要であろう。専門家は、そのことに腐心しなければならないのに、相変わらず「学習放獣」だけを推進している。
財政の厳しい地方の自治体がツキノワグマを錯誤捕獲すれば、クマに麻酔を打ってわざわざ放すために、NPO団体に手間賃を支払わなければならない。そんな予算にも限界があるから、自治体によっては、すでに学習放獣用のドラムカン檻を放棄しているところもある。人口の少ない過疎地の自治体は、こうして金のかからない、「ツキノワグマ捕殺」に傾いていくのである。
片や、学習放獣を推進するグループには「手間賃」が転がり込む仕組みになっているので、希少種保護を前面に押し出して「営業」活動に余念がない。
はたしてツキノワグマは、それほどに数の少ない希少種なのだろうか?
ツキノワグマ生息の全体像をだれもつかめそうにないから、そろそろボクが独自でやらなければならないだろう。あと数年で、とんでもないことができるメドがついた。だから、どんなに密殺されようが、ボクは焦らないことにする。
とにかくツキノワグマ全体像を知ることが、ボクにとっては先だからである。
写真:自然と同化するほどツキノワグマの錯誤捕獲も続く。この檻はサル対策用だが、さりげなく観察に出向けば、クマもかなり入ってしまっていることが痕跡からでもうかがえる。
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「学習放獣を推進するグループ」→「営業活動」・・・なるほど・・・。
俺も今度からそういう風に言うことにします。
今までは「学習放獣を推進するグループ」→「たかり」と言っていたから反発が多かったんだな。学習しました!
コメント by くまがい — 2008/8/8 金曜日 @ 4:53:51
放獣の手間賃、予算の限界・・・なるほど、そういうことがあるのですね。
被害が出る上に、捕獲費用、放獣費用では、住民も自治体も、大変なことでしょう。
しかも、放獣しても、イタチごっこになる気配、濃厚ですし。
コメント by 小坊主 — 2008/8/8 金曜日 @ 11:03:36