ツキノワグマはなぜヒノキの皮はぎをして枯らすのか…?
ここ数年、ヒノキやスギなどの人工林にも目を向けている。
これらの人工林は、自然界には「無駄」なような考え方をされている方も多いので、人工林の位置づけを自分なりに見てみたいからだ。
そんな人工林が、ツキノワグマによって樹木の皮をはがされて枯れ死するケースが近年になって増加している。
植林をして、20年、30年、50年という時間が経ってから熊にいきなり、枯らされてしまうのである。
これは、林業者にとっては甚大な損失になり、植林してからの時間がすべて無駄になってしまうことでもある。
自分なりに調査してみると、50年近く経ったすばらしいヒノキやスギ林が全滅しているところもある。
また、全滅まではいかなくても、3割、5割といった被害林も少なくない。
それなのに、まったく被害の出てない人工林もあるし、少しずつ小規模な被害が目立ちはじめている林もある。
このような被害に気づいている山林地主もあれば、まったく知らないまま日々過ごしているところもある。
ツキノワグマがこのように樹木の皮を傷つけるのには、それなりに理由があるにちがいない。
そうでなければ、生きている樹皮をわざわざ剥ぐこともないだろう。このような「皮剝ぎ」には、実は2つのパターンがある。
樹木を枯らすためと、枯らさずに生かせていくためのパターンがあるからだ。
このパターンを見分けるのもクマの行動に理由のあることに気づくのだが、樹木を枯らすための皮剝ぎは幹の全周を派手に剝くからすぐに分かる。
生かせるためのパターンは、一箇所だけを傷つける、ことである。
樹木を枯らせるための皮剝ぎ痕には、必ず甘皮を絞った「歯形」がついているのが特徴である。
これは、樹木が病気ないしは不健康な状態となり、木が生きるための自己防衛をはかり、樹液の糖度をあげている可能性がある。
そうなった樹木を、鼻のいいツキノワグマは外部から瞬間的に見抜き、樹皮を剝がしてしまうからだ。
この行為は、弱った木から甘い樹液をいただきながら、樹木を「死刑」にしているのではないかと思う。
森を舞台に生きているツキノワグマだから、大切な森の住人である樹木を死刑にするということはそれなりに理由があるのだろう。
ここまで考えてみると、クマによる皮剝ぎに遭いそうな人工林は土壌や樹木の健康調査を重ねることである程度の予測ができる気がしてならない。
ボクには、今後どのような環境下にある人工林がツキノワグマの皮剝ぎ被害に遭うのか予想ができるようになった。
これには、ある共通のパターンがあり、このようなことは林業試験場とか林野関係者がすでに気づいていなければならないことだし、今後研究すればいいことなので、写真家がここで言及することもあるまい。
とにかく、写真家としての視点で人工林を見ていくと、「被害」に遭いそうな林とそうでない林がちゃんと見えてきているからだ。
これを立証するには、まだまだ時間がかかるだろうが、クマと森の関係がこうした皮剝ぎ行動からでも明瞭に見えてくるのがボクには、実に面白いと思っている。
写真上:スギの幹の匂いを嗅ぐツキノワグマ。
写真中:立ち枯れてしまった樹齢25年ほどのヒノキの植林木。
写真下:皮剝ぎ痕と歯形など。
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クマが杉の皮剥ぎをするのは樹液の糖度が高いから、というのは新説ですね。興味深いです。しかしそのおいしい食のためというのでしたら、そのために皮を全部剥いでしまうのはメリットがあるのでしょうか? また、そのような皮剥ぎをする季節はいつごろなのでしょう? 私は冬眠前にするのかと思っていましたが。
コメント by gugu — 2008/6/28 土曜日 @ 12:40:18
写真を見なおしてみましたが、これは木の皮には興味をもっていないようですね。木の蜜と蜜に集まる虫と、そのどちらもが狙いなのでしょうか? また上まで剥いでしまうのは、遊びといったところもあるのでしょうか? クマが木のにおいを嗅いでいる写真、特におもしろいです。
コメント by gugu — 2008/6/28 土曜日 @ 12:53:49
今回の本にも書きましたが「生態改変者」としてのツキノワグマの地位を裏付けるような話ですね。
某大学教授は「・・・データが少なくて、まだ仮説なんですが」と言ってましたが、こういう人こそgaku先生に教えを請えばいいのにと思います。
白い巨塔にいると、人を呼びつける事が当たり前になって、人からモノを教わるという姿勢が無くなってしまうんでしょうか。
コメント by くまがい — 2008/6/28 土曜日 @ 16:35:49
>興味深いです。
熊の樹皮剝がしは、まだまだいっぱいの発見があります。
ここでは、個々に答えられませんので、悪しからず。
>人からモノを教わるという姿勢が無くなってしまうんでしょうか。
まあ、
ボクが楽しんでやっているだけですので、人様に教えたりするつもりはありません、が。
コメント by gaku — 2008/6/28 土曜日 @ 22:11:56
誠意を持って聞けば(その誠意のハードルってのがかなり高いんですけど)教えて下さる方だというのを知ってますが・・・(笑)
コメント by くまがい — 2008/6/28 土曜日 @ 22:25:41
熊の事は判りませんが、木の糖度をあげる方法に環状剥皮と言う方法があります。これは、木の回りの皮を削って木の糖分を上げ花つきをよくする方法なんですが。さくらんぼの断根と同じ原理です。
コメント by おいかわ飯店 — 2008/7/1 火曜日 @ 15:04:08
お尋ねしたい事が有ります。
ここ数年さくらに実がつき始めるとツキノワグマがサクランボの実を食べに来ています
糞からすると2〜3歳くらいだと思われます。
昨年は目撃した人もいました。観光地なので心配で役所に問い合わせたところ
猟友会から檻がしかけられました。今年はまだ目撃情報がないので
そこまでにはいたっていません。捕まればたぶん殺されるでしょう。
何かいい方法はありませんか。写真家に尋ねるのは筋違いかな。
宜しくお願いします。
コメント by 伊藤恵造 — 2008/7/4 金曜日 @ 0:15:45
◆伊藤恵造 さん
3つの解決策があると思います。
1)サクラの木を全部切ってしまう。
2)出没してくるクマをすべて殺す。
3)サクランボの時期は3週間ほどですから、連日夜警団を出す。
3)がいちばんいい方法だと思います。
日本人はサクラが好きですが、よろこぶのは花の季節のたった1週間だけです。
そのために、全国的にサクラが植えられていますが、花のあとにサクランボが実ることを忘れてしまっています。
サクラの植樹は熊にとって「餌場」の提供ということになりますから、サクランボの季節だけ「夜桜見物」のごとく人間が大勢そこに集まれば熊はでてこなくなります。
ですから、サクラをめでる人間と熊の共存をはかるには、植えた人間の責任としてもこれが一番いい方法です。
それができなければ、1)、2)のどちらかです。
コメント by gaku — 2008/7/6 日曜日 @ 11:23:32
的確な回答有り難うございます。
スキー場開発、長野県による保健休養地(別荘地)のため25年前その主要道路に
植えられました。今日の状態になる事を誰も予想出来なかったのでしょうか。5月上旬満開となり桜トンネルとなります。長野県、日本でも最も遅く満開を迎え地ではないでしょうか。幸いにも観光客は少なく夜間出歩く人はいないのでとりあえず静観したいと思います。
gakuさんにはスキー場ポスターでお世話のなっていると思います。
19年前くらい「この冬 僕は元気です」のキャッチコピーで野うさぎのアップの写真のものです。私は宮崎学撮影と信じポスターとテレホンカードを大切に持っています。1枚送りますので鑑定してください。
コメント by 伊藤恵造 — 2008/7/8 火曜日 @ 22:09:06
◆伊藤恵造 さん
>gakuさんにはスキー場ポスターでお世話のなっていると思います。
分かりました。まちがいなく、ボクの写真です。
ポスターとテレホンカードをつくった記憶があります。
今回の「桜トンネル」も、だいたいどの辺か見当がつきました。
実は、こちらでも桜公園に6日からツキノワグマが出てきています。
昨夜も出て別の木に登っていきましたので、これで2日連続で出現したことになります。
たぶん、今夜もそしてあと数日にわたって桜公園のサクランボを食べていくことでしょう。
60-70kgほどのツキノワグマですが、この事実に気づいているのはボクだけです。
まあ、騒ぎ立てる必要もないので、静観しています。
昨年に引き続いての出現ですので、気づかないだけで、全国的にも桜公園にはツキノワグマの出没がおきていると思います。
こうした事実を、どう捉えていくかということが、現代人に問われる課題だとも思います。
コメント by gaku — 2008/7/8 火曜日 @ 22:25:55
gakuさんの適切な3つの方法、そして3)の対策がベストであることには全面的賛成です。
その上で私ごとき素人が失礼承知で付け加えさせていただければ、
・ただし1)の対策では、餌がないと分かると他の場所を探す。結果、出没範囲や被害が拡大するおそれがある(私はそれでクレームを受けたことがあります)。
・ただし2)の対策は、徹底的にやらなければならない。絶対に捕獲しなければならない。その結果、外部からどんな批判の嵐を受けようが。利害関係者は「捕獲の努力を試みたが捕まらなければ仕方ない」では済ませてくれない。結果、捕獲に失敗したり、タイミング悪く被害が出れば、行政や捕獲隊は無能呼ばわりされる。まして、「クマの捕殺はどうか」的論調のマスコミでも、人身事故が起きると「行政や捕獲隊は何もしていなかった」とこれまた無能呼ばわりされる。
今回のように我々人間がクマが出没するような場所にわざわざお邪魔する場合、極端なことを言えば「クマと差し違えて壮絶に散る」くらいの覚悟を持つことも必要だと思います。そして、これまた極端なことを言えば、そのような覚悟をどうしても持てないか、自然公園を都市公園の延長として考えているかであれば、そのような場所には絶対に行くなということです。何も行かなくても生活に支障はないのですから。いや、行かない方が人にとってもクマにとっても幸せだと思います。そして、その間で矢面に立たなければならない立場の人にとっても。
もっとも、これまでクマが出るなんて絶対にありえない場所で、クマが捕獲される今の時代ですから、今後は厳しい現実を間近に突きつけられれば、人々のクマに対する意識も変わらざるを得ないでしょう。そして、それが新たな第一歩の契機になることを期待したいものです。
コメント by もとりんむ — 2008/7/9 水曜日 @ 21:59:38
◆もとりんむ さん
最近になって、クマのことを知ればしるほど奥の深さに気づかされます。
ツキノワグマは、ほんとうに謎の多い動物です。
だから、ボクにとっては魅力的でもあります。
で、保護しようが、殺そうが、長野県内にいったいどのくらいのツキノワグマが生息しているのだろうか、
それを知ることにいまもっとも興味があります。
いくつかの「媚薬」も開発しましたが、ほんとうに個体差もあって不思議すぎます。
全体の数がわかれば、保護も捕殺もやりやすいのですが、
どうもそうしたことへの技術開発が全国的に遅れているようですね。
まあ、ボクは写真を撮りながら、自分の技術の可能性を求めているだけですので、数の調査などは「専門家」がやってくれることでしょう。
コメント by gaku — 2008/7/12 土曜日 @ 23:02:17
初めまして。 『クマのすむ山』『ツキノワグマ』を購入させて頂きました。
他の動物写真家の写真はクマが撮影者を意識しているので『ポ-トレ-ト』gakuさんの写真は撮影者を意識してないのでクマが素の姿なんですね。
こちらは『スナップ』という感じでしょうか。
写真を見てクマは山の先住民族って感じがしました。
クマが里で悪さをする⇒射殺 数が少ないから⇒保護 と人間の都合で物事が進んでしまいますがもっと事実を確認したほうが良さそうですね。
今後も続編、続刊を期待しております。
コメント by ARUGA — 2008/7/13 日曜日 @ 7:43:21
◆ARUGA さん
>『クマのすむ山』『ツキノワグマ』を購入させて頂きました。
ありがとうございます。
>クマは山の先住民族って感じがしました。
>もっと事実を確認したほうが良さそうですね。
まずは、人間本位の都合のいい見方をすべてリセットして、とにかくクマのことを知ることが大切だと思っています。
このため、知れば知るほど、次々と観察のアイデアもでてきておりますので、ボクの技術をフル稼働させています。
>今後も続編、続刊を期待しております。
はい、さらにグレードアップしたものをご用意できると思います。
今後にご期待ください。
コメント by gaku — 2008/7/15 火曜日 @ 7:53:23