なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2008/4/2 水曜日   ツキノワグマ日記

学習放獣を考える ? 放置されたドラムカン檻

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ドラムカンを2つ繋ぎ合わせた檻が、ツキノワグマを無傷で捕獲するにはいちばん適しているといわれている。
このため、学習放獣には、このドラムカン檻がよく使われている。
しかし、ある山中にこのドラムカン檻が1年半も、放置されたままとなっている。
この間に、まったく稼動した気配がない、のである。
いや、もう、このドラムカン檻を使うつもりがないことを物語ってもいるようなのだ。

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この檻が一年半前から放置されるきっかけは、近所にツキノワグマの出現があり、急ぎ仕掛けられたときからだった。
だが、3ヶ月を要しても檻にはツキノワグマが入らず、そのまま放置状態が続いたのである。
そして、この檻は700mほど離れたところで一年後に再びツキノワグマの目撃情報があって、はじめの現場から移動されて「蜂蜜」を餌に仕掛けられたのだった。
しかし、ここでもツキノワグマは入らず、そのまま現在まで野ざらし状態になっているのである。

このドラムカン檻の周辺では、この間にボクが知る範囲でも3頭のツキノワグマが捕獲されている。
どれもが、鉄格子の檻で捕獲されている、のだ。
そして、殺されている、のである。
このことから考えても、ドラムカン檻の使用が意識的に避けられている可能性もある。

まあ、どのような檻にツキノワグマが入ろうとも、捕獲されれば再び山野に放たれることはない、のが現実だ。
有害駆除という名目で、現場で殺されるからである。

こうして、殺すことを前提にして檻を設置する場合は、「吹き矢」対応となっているドラムカン檻では銃器が使えないから、設置する側にとっては非常に扱いにくい「檻」ということになる。
鉄格子の檻なら、いかなる対応もできるので、積極的に鉄格子檻が利用されていくのである。
こうした理由もあって、ドラムカン檻は現在も放置状態にある、といっていい。

早い話、ドラムカン檻を使っての「学習放獣」に効果のみられないことを悟った関係者が使用を諦めたからである。それは、裏を返せば、放獣に非協力的となったといっていい。
学習放獣を提唱する専門家は、ツキノワグマだけに目を向け、地域住民をまったく無視し、研究材料として自らの手柄と考えている人が多い。そこに地域住民も気づき、ツキノワグマの「保護」には非協力という意思表明をしたからである。

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ツキノワグマを通して「保護」と「捕殺」の両方にいる人間を見ていると、やはりここは中立を保ちながら距離を置いて静観することに限るとボクは思っている。 
その間にもフィールドには新らしいツキノワグマがどんどん出現してきているのだから、ここは人間模様に翻弄されることなくツキノワグマのことを確実にもっとよく知らなければならないと思ってしまうからだ。そのことにボク自身の視線を全力で注ぎながら早急に現実を調べることのほうが先、だからである。

ときには、ボク自身もハンターからは「保護派」とみられて、冷たい射るような視線を浴びせられて現場で無視されることもある。
また、「愛護派」からも、冷たい視線と罵声が届き、同じく無視もされる。
しかし、こうした両者の視線よりも、すべてのツキノワグマが蜂蜜に狂ってしまうと思われているのに、蜂蜜に狂う熊は全体の1割強しかいないという事実も知っていれば、ボクにはまだまだ余裕でツキノワグマと付き合っていける自信へとつながる。
そのくらい、わかってないことだらけなのがツキノワグマなのであって、この動物が「家畜」に利用されることなく太古の昔から独自の生きざまを見せてきたその生態に最大の興味があるからである。

写真上:放獣されたクマなのだろうか、欠けた歯で形相もすざまじく、カメラに向かって吠えた。
写真中:雪に埋もれたまま、このドラムカン檻は1年半も山野に置き去られ出番がなくなっている。
写真下:この檻も、すでに9ヶ月間放置状態だがスタンバイ中である。しかし、設置後の見回りを今現在してないのでツキノワグマが入れば、確実に「餓死」するだろう。

(from/ gaku )

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3 Comments

  1. >しかし、こうした両者の視線よりも、すべてのツキノワグマが蜂蜜に狂ってしまうと思われているのに、蜂蜜に狂う熊は全体の1割強しかいないという事実も知っていれば、ボクにはまだまだ余裕でツキノワグマと付き合っていける自信へとつながる。

     そうなのですか!? 蜂の巣ごと餌にかけなければつかない、ということも聞いたことがありますが。

    >こうして、殺すことを前提にして檻を設置する場合は、「吹き矢」対応となっているドラムカン檻では銃器が使えないから、設置する側にとっては非常に扱いにくい「檻」ということになる。
    鉄格子の檻なら、いかなる対応もできるので、積極的に鉄格子檻が利用されていくのである。

     この檻罠も餌は蜂蜜を使ったのではないでしょうか? ドラムカンを嫌うという習性をもっと知りたいと思います。

    Comment by gugu — 2008/6/27 金曜日 @ 17:47:30

  2. ↑メールアドレス記載途中で送信されてしまいました。こちらに記しておきました。

    Comment by gugu — 2008/6/27 金曜日 @ 17:49:52

  3. 各自に、もっと研究工夫をしてもらいたいと思っていますので、
    コレ以上のことはボク自身は公開しないことにしています。

    Comment by gaku — 2008/6/28 土曜日 @ 22:23:14

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