なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2011/9/6 火曜日   ツキノワグマ日記

ツキノワグマの執念を見た

北アルプスの森林帯を経巡っているときだった。
大きなサワラの木に、異様な雰囲気を示す樹洞を見つけた。
胸高直径1、2mはあろうとするサワラの生木である。
その地上10mほどのところに、上下1mにも及ぶ縦割れの穴。
穴の周囲は白い木肌が生々しく噛じられて露出している。
樹皮には無数に荒々しい爪痕ものこっている。

これは、あきらかにツキノワグマの痕跡である。
穴にはたぶんニホンミツバチが巣をつくっていたのであろう。
それを欲しくて、クマが木によじ登り、穴を広げた痕にちがいない。
それも、執拗に時間をかけて、目的を完遂させたあとがありありと見受けられた。
足場の悪い垂直の木の幹で、このような行動をするにはほんとうにツキノワグマの執念を見る思いがした。

いやー、写真でも分かるとおり、その穴は見事である。
樹洞の内部がどうなっているか、まだ確認がとれていないが。
この樹洞は、今後何十年かのうちにはクマの冬眠穴になるのではないかと思われる。
クマが十分に出入りできるだけの穴になっているから、あとは内部の構造次第であろう。

近々オイラは、この樹洞まで登っていって内部を調べることにする。
その結果によっては、無人撮影ロボットカメラを数年間にわたって設置してもよいと思っている。
ツキノワグマがいますぐに入らなくても、フクロウがのぞきにきたり、森の生物のいろんなドラマがこの穴で展開されそうだ。
そんな絵コンテが、この穴を発見した時点でオイラの脳裏にはできあがってしまった。

楽しみだ。
こういうことがあるから、フィールドワークだけはいつもこなしていなければならないのである。

写真:
1)ツキノワグマは地上を歩いていて、こんなカンジの表情でミツバチの巣を見つけたにちがいない。
2)熊の執念を感じるミツバチの巣暴きの現場。

(from/ gaku )

コメント&トラックバック

14 Comments

  1. こんなことをして、クマは蜂に刺されないんですかねえ。
    刺されても蜜が舐めたいから我慢できるんでしょうか。
    それとも、皮膚が丈夫で蜂も歯が(針が)立たないんでしょうか。
    自然界は不思議なことが多いですね。
    というか、人間界が特殊なだけか・・・

    Comment by そらとびねこ — 2011/9/6 火曜日 @ 23:58:05

  2. クマはクロスズメバチも大好物ですが、クマの糞からクロスズメバチの成虫がたくさんでてきます。
    なので、刺されても平気で親バチまで食べてしまっていることは確実ですから、ミツバチも平気だと思います。

    >というか、人間界が特殊なだけか・・・
    絶対にそうだと、思います。

    Comment by gaku — 2011/9/7 水曜日 @ 10:32:56

  3. 熊の糞は時々見ますが、ハチは見たことが無いなーーー。いろんな種は沢山見ますが。ハチは消化されないのでしょうかね。

    Comment by ユタ — 2011/9/7 水曜日 @ 11:17:43

  4. クマが入るからもっと大きな穴を想像していました。
    こんな穴にでも入れるなんて、クマはやっぱり器用だなと感心。
    以前出かけた岡山の山奥にこんな穴があいた木があって、
    何かの毛がついていたんですけど、クマの毛かもしれませんねぇ。

    Comment by kana — 2011/9/8 木曜日 @ 20:51:31

  5. >クマが入るからもっと大きな穴を想像していました。

    何十年後かに・・・です。
    しかしその前に人間が伐ってしまうかも知れない・・・クマの崇高な心も知らずに。
    人間は、孫子の代にまで放射能核廃棄物を押しつけているではないか!?クマの爪の垢でも煎じて飲めと!

    gakuさんは、クマが生態改変者であることをおっしゃりたいわけで。
    ですよね?

    Comment by くまがい — 2011/9/9 金曜日 @ 4:25:53

  6. ■ユタ さん
    ハチのキチン質は、ほとんど分解されずにそのまま出てきます。

    ■kana さん
    >こんな穴にでも入れるなんて、クマはやっぱり器用だなと感心。

    熊は、頭が入れば身体まで入ってしまいます。
    私たちが考えるより、驚くほどの小さな穴にも入ります。
    岡山の「穴」は、再調査する意味があると思いますよ。
    付いていた「毛」の正体も確認のためにも…。

    ■くまがい さん
    この穴は、内部構造次第では数年のうちに入りそうです熊。
    年内には、本気で調査に行ってきますが。

    Comment by gaku — 2011/9/9 金曜日 @ 8:08:05

  7. 岡山の「穴」は、実家にいる祖父がよく片道1時間半かけて自然薯堀りに行くところなので、
    毛がついていたら持ってかえってもらうように電話してみました。
    クマにも気をつけるよう言うと、
    時々足跡があるからクマも自然薯食べてるのでは?と笑っていました。
    いやー笑い事ではありません。
    クマと鉢合わせしないよう願うばかりです。
    場所は越畑というすごい山奥。養蜂が盛んで時折クマが荒らします。

    Comment by kana — 2011/9/9 金曜日 @ 11:22:44

  8. ■kana さん

    岡山の「越畑」を地図で調べましたら、鳥取県に近いところですね?
    なんだか、熊が多そうなところです。
    養蜂がさかんなら、なおさらのこと。
    「穴」の毛を楽しみにしています。
    ぜひ、正体を知りたいものです。

    Comment by gaku — 2011/9/10 土曜日 @ 22:26:44

  9. おじいちゃんにがんばって採取してもらいます。
    越畑は確かに鳥取県に近いです。
    地図を見ていただけるとよいのですが、
    ・越畑の東、阿波
    ・宮元武蔵野の里、大原町から東と西の粟倉村
    ・県境の鳥取県智頭(町の中心に確かクマの剥製を飾っている)
    あの辺りはクマの目撃数も多く、大生息地だと思っています。
    手入れされてない山だけど広葉樹だらけです。
    岡山県内のHP見ると、県内にクマは10頭程度しかいないことになっています。
    呆れますね。

    Comment by kana — 2011/9/12 月曜日 @ 10:30:25

  10. 本当に素晴らしい穴ですねー!高い場所にある穴やクマ痕跡は見つけづらく、自分も同じ北アルプス地域に出かけているのに、これほどの発見はできません。その分析も「流石!」です。

    ひとつエピソードを。そろそろクマが「ブナの実を求めて木に登るのでは」と考え、8月下旬からブナの実が豊作な小谷村に滞在しました。足のケガのため、クルマに乗ったまま林道から見える限りのブナを1本1本双眼鏡でチェックしていったところ、8/24の白昼、150?ほど隔てたブナの大木上に立ち上がってクマ棚を建築中の♂の大グマを発見しました。

    GAKUさんはたしか、このブログのどこかで「クマ棚の大きさから2晩滞在した可能性」を指摘されていたと記憶しますが、このクマは直接観察の間、ずっと樹上に留まり2泊しました。発見時にはすでに大きなクマ棚が存在していたことから「3連泊」したのは間違いなさそうです。GAKUさんの「滞在説」が観察で実証できたわけです。

    樹上での大グマの様子は、太さ10?はありそうな枝をやすやすと牙でかじり折り、まるで相撲の「弓取式」のように両手で振り回しながら背もたれにしたり、樹冠部の実を食べるために少し小さめのクマ棚を作って足場にしたりと、「クマ好き」の人間たちで分かち合いたいほどの興味深い「実演ショー」を次々に見せてくれました。

    休息はクマ棚に座り、その「建材」に付いた実をポリポリと食べながらウトウトしており、意外にもぐっすり寝てはいないようで、19時頃から大型のクマ棚(寝床?)で横になり、翌朝7時前まで同じクマ棚で過ごしていました。

    なお自分はクマの大きさについて、クマ牧場の体重が測定されているクマを「見立てる」ことなどで目を養っています。今回のクマは顔周り、腕の太さ、腰周りが大きく、推定120?以上はありそう。顎から喉にやや白い部分が見え、年寄りグマかもしれません。立ち上がることで性別や「月の輪」が明瞭ではないことが確認でき、個体識別が可能かと思われます。まだほとんどのブナの実ははぜて(展開して)おらず、その後に同様な目撃はできていませんが、次に冷え込んだ後には実もはぜて、また「木登りグマ」が見れるかもしれません。では!

    Comment by ぴかぶうの雇い主 — 2011/9/13 火曜日 @ 12:13:06

  11. 失礼しました。書かせていただいた上記コメント内で、数字の単位が文字化けしておりました。正しくは文頭から

    「150メートル」
    「10センチ」
    「120キログラム」

    です。読みづらくてすみません。

    Comment by ぴかぶうの雇い主 — 2011/9/13 火曜日 @ 12:31:04

  12. ■ぴかぶうの雇い主 さん

    とても素晴らしい観察をされましたね。
    ブナだけでなく、クヌギやクルミ、クリやヤマザクラなどでも同様なしぐさの観察はできます。
    季節を読み、その年の山野での樹種の実成りを読み、熊の行動習性を知り、こちらが事前行動に移ればちゃんと観察もできるものです。
    貴殿のように、みずから努力をする人間には成果もついてくる、というものですよ。

    次の本づくりで多忙をきわめブログも滞りがちですが、そのうちにぼちぼちこちらにも発表していきますから。

    Comment by gaku — 2011/9/14 水曜日 @ 10:30:56

  13. ぴかぶうの雇い主さん、はじめまして。gakuさんお早うございます。兵庫県に住んでいる者です。
    興味深くクマの動きを読ませて頂きました。
    これで一つ思い当たったのが、広島の安佐動物園で飼われているツキノワグマです。棒をくるくるふり回して遊ぶことが報道され有名になりました。
    私も行く機会があったので、その時運良く見ることができました(結構気まぐれにするようです)。
    報道の際に飼育員さんがどのような説明をしていたかは忘れてしまいましたが、私は暇つぶしに偶然始めたのかと思っていました。
    クマ棚を作成するときの動きと共通しており、元々そういう素質をクマが持ていたと思うと・・・納得です。

    Comment by うりょ — 2011/9/16 金曜日 @ 10:28:07

  14. >クマ棚を作成するときの動きと共通しており、元々そういう素質をクマが持ていたと思うと・・・納得です。

    「熊手」の由来にしても、納得するものがあります。
    見事な穴掘り名人を発揮しますから、昔は土葬された人間を食っていたことは充分に考えられます。

    Comment by gaku — 2011/9/22 木曜日 @ 10:57:51

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