ツキノワグマの小さくて大きな敵
昨年の12月に、地元の猟師から気になる言葉を聞いた。
『病気になって毛が抜けた丸裸のイノシシを捕ったけれど、あまりにも気持ちがわるかったので山に埋めてきた。』
数年前から疥癬ダニにやられたイノシシがいるらしいことは知っていたが、まともに聞いたのはこれがはじめてだった。
どうやらタヌキやキツネ、アナグマについで、イノシシにも疥癬が流行りはじめているみたいなのだ。
ただ、このような話を聞いても、ボクは自分自身の目で直接確認するまではそれをにわかに信じられないでいた。
ところが、山梨県笛吹川の河川敷で疥癬ダニに罹ったイノシシを目撃してしまったのだった。
草むらから飛び出してきたイノシシは、体重が70−80kgほどある大きなものだった。
雄らしくタテガミがかなり長かったが、顔にはまったく毛がはえていなかったし、脇腹から四肢、尻までも、毛が抜けてしまっていた。
そして、痒いのか、このイノシシは測量ポールにまで体をゴシゴシとこすりつけているではないか。
疥癬イノシシは、たしかに存在していたのだった。
このような偶然の出会いでそれを自分で確認できたわけだが、タヌキやキツネは時間をかけて定点撮影をしていればその感染模様がよくわかる。
このため、今後はボクの自動無人撮影カメラにも裸のイノシシが撮影される可能性があるだろう。
いや、イノシシどころかツキノワグマだって疥癬ダニに感染することは充分に考えられる。
ツキノワグマはイノシシの道を利用して移動することもあるし、タヌキだってイノシシ道を使っているから、「けもの道」でそれぞれに感染しあっているからである。このため、ツキノワグマもまちがいなくダニを拾うだろう。
それが分かるのも、長期間無人撮影カメラを設置しつづければ記録されるから楽しみだ。
裸のツキノワグマが写らないことを期待したいが、見てみたい気もする。
写真上:2005年の「けもの道」には、イノシシもクマもタヌキも利用者として等しく登場してきた。
写真中:ここまで毛が抜けるとイライラして判断力が極端に鈍るから人への危害も心配なイノシシ。
写真下:タヌキは個体数が多い分、疥癬症ももっとも多く、ここまで進行すればあとは死が待っているだけだ。




僕も今シーズン、地元の猟師の間で話題になっているのを知っていましたが、こうして実際の画像を見ると、改めてその存在に驚かされました。
タヌキが疥癬病で激減したことがありましたが、最近異常なほど眼にするようになったイノシシたちも同じ運命をたどるのでしょうか・・・?
そして、ツキノワグマも?
コメント by もっち — 2007/4/6 金曜日 @ 21:05:35
イノシシも感染するんですねぇ・・・。
以前埼玉県のある場所で丸裸のイノシシを見かけましたが、地元の人に「あの辺の猟師はイノブタを放しているんだ」ということを聞き、その時はあまり深く考えず「イノブタだったのかな?」と思っていたのですが、疥癬の可能性もあるかもしれませんね。
コメント by くまがい — 2007/4/6 金曜日 @ 21:06:35
疥癬といえば、ニホンジカでの報告がないのですよね。
知人の飼い犬(紀州犬)が疥癬症になりこまっていたら、「シカ肉をたべさせろ」との猟師からのアドバイス。
結果、見事に疥癬症が完治したそうです。
自然界の不思議な現実をまたひとつ発見した思いです。
コメント by gaku — 2007/4/9 月曜日 @ 5:51:53
へぇっ!??
20年以上も前の話ですが、何の知識もなくフィールドに入り始めた頃です。
恥ずかしながら、実は疥癬にかかったことがあるんです。
(指の股に湿疹が出来て猛烈に痒い、皮膚科に通い、医者には「戦後は多かったけれど、今時!?」と珍しがられました。
硫黄を入れた風呂での薬湯・・・完治するまで半年くらいかかりました)
その頃は丹沢でシカを追いかけ、さんざん藪こぎをしていましたので、てっきりシカのダニかと思っていましたが。
コメント by くまがい — 2007/4/9 月曜日 @ 10:51:06
野生動物の病気も、流行ったり、鎮静したりを繰り返しているようです。
ダニにとって、イノシシやタヌキは「資源」なので、流行って資源を消費すると、自分に跳ね返ってきて自身も減らざるを得ない。
秩父では、15年ほど前からそれ以前ほとんどいなかったイノシシをよく見かけるようになっていたのですが、その後、また減りました。ハンターの話では、疥癬のせいだったとか。最近、イノシシをまた少し見かけるようになっています。
クマについては、疥癬の話を聞いたことがないのですが、感染しにくい性質があるのでしょうか。
シカが疥癬に寄生されない、という話も興味深いです。未だに解明されていない、ハチがおとなしくなるハチクマの謎 を想起しました。
シカは、代りにヒルによくやられ、房総の生息地ではシカとともにヒルが大増殖して、夏は悲惨です。
コメント by 石田健 — 2007/4/12 木曜日 @ 23:39:51
シカ肉で、もう一つ
昔、パキスタンの人と奄美の森に入ったとき
イノシシの踏み後をたどってしまったらしく、私と日本人の知人の二人は小さいダニにやられて辛い思いをしましたが、彼はまったくやられませんでした。
カレーなど香辛料の臭いを体中から発散させていて、食習慣の違いでそういう結果になったのだろうと考えています。
1度、1週間辛いカレーを食べ続けて試してみたらと思うこともあります。ちょうど、山原でダニにやられて、そういうときは試してみようと思うものの、どうも実行には至っていません。ご参考まで
コメント by 石田健 — 2007/4/12 木曜日 @ 23:46:49
>未だに解明されていない、ハチがおとなしくなるハチクマの謎 を想起しました。
このハチクマのこと、拙著「鷲鷹ひとり旅」1987平凡社 に示唆してあります。
あとは、研究者にまかせますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
昆虫学者のほうが意外と早く、答えをだしてくるかもしれませんが。
コメント by gaku — 2007/4/14 土曜日 @ 9:29:30
そういえば、こちらも「クマ」ですね。
「ひとり旅」は(当時お金がなく)持ってなくて、今は絶版で本屋にないので直接確認できずすみません。
ハチクマには独特の体臭があると言われていることは、毎年数十人を殺しているスズメバチ(こちらはクマを上回る猛虫?)対策になるかと長年注目されています。しかし、未だに「ハチよけスプレー」は現れません。
信州では、ハチクマを多数捕獲して研究しているグループもいて、試料は採取できそうなものですが、解明は容易でないのでしょう。
コメント by 石田健 — 2007/4/14 土曜日 @ 22:45:30
先日、市の委託で有害獣捕獲を実施したときに3頭のイノシシを捕獲しましたが、2頭が疥癬病にかかっていました。
50??80?の小ぶりのものでしたが、自然体系に影響を及ぼすことが心配です。
コメント by ハンター吉田 — 2010/2/22 月曜日 @ 14:38:21
ハンター吉田さん、
市の委託といっても、どこの市なのでしょうか?
イノシシは、相当数の疥癬がおり、かなり淘汰復活を繰り返しているのが現状です。
コメント by gaku — 2010/3/6 土曜日 @ 12:55:44