なぜツキノワグマは人を襲うようになったのか?自然の変化を鋭く見つめ続けてきた動物カメラマン宮崎学が送る新メッセージ
2011/7/22 金曜日   ツキノワグマ日記

熊が自宅の庭や玄関先にいたとしたら…

福島県の西会津地方で(2011年7月21日)、78歳になる女性がツキノワグマに襲われて死亡したらしい。
山で笹を採集中に、熊に襲われたそうだ。
あの「笹だんご」に使われるササを採っていたらしい。
場所は、新潟県と山形県に近いツキノワグマ高密度地帯だから、この時期、笹はタケノコをだしているのでクマが笹藪に食べにきていたこともうかがえる。

獣害で人の死亡は、やはり重大事故だと思う。
死亡しなくても、ツキノワグマに襲われれば片目を失明したり顔面の半分ほどを爪でもがれてしまうから、被害も甚大である。
被害者のご冥福をお祈りすると同時に、このような事故を教訓に山野に近づくには細心の注意を払うべきだろう。

このように、人間を殺すほどの破壊力をもったツキノワグマが自宅の庭先や玄関先に人知れず現れたとしたら、どうする?
いや、このことは日常的にオイラが心配していること、なのである。
オイラの自宅も仕事場も、ツキノワグマといつニアミスしてもおかしくないところにあるからだ。

まず、自宅だけれど、ツキノワグマが日常的に活動している行動エリアから150mの位置にある。
まあ、それだけならば、日頃から注意していればある程度は大丈夫なのだが。
しかし、自宅のお隣さんがニホンミツバチを庭で5~6箱飼育しているのである。
そのニホンミツバチが、ツキノワグマを充分に誘因するとオイラは考えているからだ。
近所には住宅が20軒ばかり点在しているが、人が暮らしていても、ツキノワグマの夜間行動は隠密的だから、ミツバチの匂いにつられて150mくらいの距離は一瞬で移動してくるからである。

しかも、そのミツバチ箱はオイラの自宅の裏玄関からわずか10mほどの位置にある。
まさに、オイラの自宅とは目と鼻の先。
もし、ツキノワグマがやってくるとすれば、オイラの自宅脇を通ってくることはまちがいないと、熊の歩くコースまでオイラには分かってしまっている。

なので、ここはオイラが自衛をするしかないと思い、熊が通るであろうコースにセンサーライトを4個仕掛けて注意をはじめている。
それも、センサーを改造してライトとけたたましくブザーも鳴るようにしているから、外へ出ればすぐに異常が分かるようにしてある。
これを、家族全員に知らせて注意喚起しているところである。

こんな努力は、ミツバチを飼っているお宅には分かろうハズもないが、近所ゆえに隣人に苦言をいえないのも田舎である。
とにかく、ニホンミツバチ飼育が全国的にたいへんなブームとなっているが、このような趣味人にはツキノワグマを誘因して近隣に迷惑をかけるなんてことはほんのかけらも意識にはないと思う。
そんなミツバチ屋さんが、山に箱を置いておけばクマにやられたといっては怒り、人に盗まれたとさらに怒って、オイラのところへ無人撮影をして犯人をあげてくれないか、とまで相談にくる始末。
これにもなかなかの心臓だが、無人撮影装置にどのくらい金がかかるかなんてことはまったく計算にいれてないのだから、無知もいいところである。

あと、オイラの仕事場だけど、まさに森に囲まれた別荘地帯にある。
とうぜんツキノワグマの生息エリアなので、オイラは玄関や庭に出るにも「熊」がいることをいつも前提として注意深く日々行動している。
とくに、夜間に玄関をいきなり開けたらそこにクマがいたなんてことも考えられるから、センサーで玄関をもろにカバーして監視を強めているのである。
玄関の外に人間を含めた動物がいれば瞬時にセンサーが反応してライトが点くようになっているから、内側からライトの確認ができれば要注意ということなのである。

このように、長野県の中央アルプス山麓ではツキノワグマがふつうに生息している。
そのことをいちばんよく知っているオイラだから、やはりそこは細心の注意を払って生活をしなければならないと思っている。
これが、自然豊かな場所での野生動物との共存生活スタイルであって、最低限やらなければならない配慮だと思う。
少なくとも、長野県全域の山間部では、このくらいの注意をしなければならないと思っている。
ツキノワグマが確実に増えており、加えて人間が無関心になってきているいまの時代だから、自然環境とはどういうものなのかといったことを人間の側が複眼思考にたち利口になって対処しなければならない、からだ。
このことは、全国的にも言えることでもある。

写真:
1)ミツバチ箱を襲いにきたツキノワグマ。
2)福島で買った「笹だんご」。
3)熊がくることを想定して鉄格子の檻のなかに「ミツバチ箱」をいれて住宅付近に設置してあるが、このような設置は熊の存在と人間社会を忘れたルール違反者だと思う。
4)矢印のところにミツバチ箱が設置されているが、この裏山は熊の通常行動コースになっている。くわばらくわばら、である。
5)分蜂したニホンミツバチ。このあと、巣箱を求めて移動していく。

(from/ gaku )

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14 Comments

  1. いつも興味深く拝見しています。
    さて私、ここ何年か福井県の山によく行っているのですが、ふと思いついたことをひとつ。熊もその冬の積雪量を予想して冬眠の場所を変えるのではないか。
    今年の5月、勝山の近くの浄法寺山に登ったのですが、残雪が多く、尾根から山頂までは軽アイゼンが必要なほどでした。4年前に登ったときは、積雪量も少なく、山頂付近をギフチョウが乱舞していましたのに。そういえば、昨年の秋から暮れにかけて、勝山付近では熊の出没が話題になりましたが、これは積雪量を予想した熊が標高の低いところを冬眠場所に選んだため、里への出没の機会も多くなったのではないか? 福井の山は落葉樹が多く、豊かな山ですので、「エサ不足」よりもこのような要因が熊の出没頻度に影響しているのではないかと考えてみた次第です。素人意見ですが。

    Comment by 近江のオヤジ — 2011/7/23 土曜日 @ 15:36:53

  2. ■近江のオヤジ さん
    さすがにいいところに気づきましたね。
    雪との関係は充分に精査しなければならないと思いますが、世の中は相も変わらず「ドングリ」だけに結びつけております。

    今年の1月19日に、ここのブログで「ツキノワグマの異常出没と雪との関係」
    http://tukinowaguma.net/archives/841
    として、ボクが書いておりますので少し参考にしてみてください。
    研究者や専門家、熊愛護団体は、ほんとうに旧態依然とした発想力しか持ち合わせていませんので、貴殿のようなちょっとした発見のアイデアには気づかないものです。
    やはり、同じ山に足繁く通うことによって見えてくる自然界からの確かなサインがありますので、それを大切にしながら新たな発見へと導いていくのが「自然科学」、なのではないかと思います。
    今回は、とてもいい示唆をありがとうございました。
    まさに、おっしゃるとおり、です。

    Comment by gaku — 2011/7/23 土曜日 @ 22:51:40

  3. 秋田県の、白神山地が眺望できる某市に住んでいます。
    ふと近くの雑木林を、見てみるとコナラ、クリの木に熊棚が乱立しています。子供の頃はあり得なかった現実に、ただ驚きです。
    学さんの写真にもあったように、高速道路のピアのすぐ近くにもありました。そんな熊棚が乱立している場所でニホンミツバチを、飼育している
    俺は、バカだろうか。

    Comment by やまめ — 2011/7/27 水曜日 @ 10:36:01

  4. 始めまして 私は大野市で40年ほど猟師をやっている者です。
    最近珍しい光景を目撃したのでご披露させていただきます。
    7月下旬のことです 熊が裏山の杉の木に登っているとの通報で 現場に
    駆けつけると 確かに2頭の小熊が別々の木に登っています この状況だと
    親熊が下にいるはずだと しばらく様子を見ていると 親熊と思われる熊が
    木に登り始めました すると もう1本の木に別の成獣が登ろうとするでは
    ありませんか すると先の熊があわてて木から下りてきて 威嚇します
    そんな事を 何度か繰り返しているので これはどうも別の熊が小熊を 食べようとしているのだろう などと話していると その熊が2mくらい離れた木から飛び移り1頭の小熊を叩き落し自分も一緒に飛び降ります 慌てて
    親熊が別の木から下りてきたのですが手遅れの様でした。
    その後我我はあの成獣さえ追い払えばもう1頭の小熊は助かるのではないか
    との事で20mくらい離れた林道から 爆竹を鳴らして 暗くなったので
    帰りました。
    翌日現場に行くとその家の人が我我の帰った後に木の枝の折れる音とドスン
    という音がして 動物の鳴き声がした と言います そこで昨日の木の下へ
    行ってみると草の踏んだ所に小熊の頭骨が2個転がっていました 私も猪を
    食べた熊を獲った事もあるので 別に驚くという事はないのですが あの熊にとっては腹がへったから食べるのではなく ご馳走なのだと思います
    なぜならあの執念は普通では考えられません 私もこれまで3桁の数の熊を
    獲ってきたからです 奴は今までにも食って味を知っているのでしょう
    きっとこのような事が山の中ではよくある事ではないのでしょうか
    変わった事を目撃したのでとりあえずご披露します。

    Comment by ガブ — 2011/7/29 金曜日 @ 17:16:04

  5. ■やまめ さん
    >熊棚が乱立している場所でニホンミツバチを、飼育している俺は、バカだろうか。

    別にそんなことはいってませんよ。
    熊の習性も勉強してもらって、人への配慮も必要だということを言っているだけ、ですが。

    ■ガブ さん
    とてもすばらしい観察をされましたね。
    たしかに、子熊は大人の雄に襲われる確率が高いらしく、こちらでもそのようなサインをいくつも見ています。
    子熊を殺して、雌の発情をうながし、次なる自分の子どもを産ませるという熊生活のルールに乗っている行動なのではないかと思われます。
    このことは、裏を返せば繁殖力も高い、ということにもなりますね。

    三桁の熊を獲られているのでしたら、いろんな体験も山のようにあると思います。
    お会いして、いろんなお話しをしてみたい衝動にかられています。
    また、いろんなご意見お聞かせください。

    Comment by gaku — 2011/8/5 金曜日 @ 14:54:53

  6. はじめまして。岩手県釜石市に在住しています。大変参考になりました。興味深い内容でした。ここ、1週間ほど毎日のように庭や玄関先にクマがでます。クマを寄せる要因のような蜜蜂はありませんが、2週間ほど前に畑のトウモロコシを食べられました。次の日には、全て燃やして処分しました。私は現在26歳ですが、去年初めて庭にクマが来ました。私の両親も初めてだと言っていました。昨日は、窓を開けたら1mくらいの距離にいました。私は、病院勤務のため、急患で夜中に呼ばれる事が多いです。もし、このような時、クマに遭遇したらどうしたら良いでしょうか?また、どうしたらクマが来ないようになるのでしょうか?

    Comment by 猪又健良 — 2011/8/9 火曜日 @ 20:24:42

  7. 猪又さんはじめまして。
    bbearと言います。3ヶ月ほど小熊を観察しています。

    それはたいへんですね。そのクマは人を恐れなくなったクマです。
    緊急に対処しないといけないと思います。
    やがて家の中にも侵入してきます。
    クマも子供のときからその生活圏における自分の順位を確かめながら大きくなるようです。
    今はおそらく人の強さを測っているのでしょう。
    こっぴどく脅してやれば来なくなると思いますが一人では危険です。

    クマは普段ゆったりゆっくり動きますが、戦闘モードではとんでもなく狂暴になります。
    戦闘モードの時、前足のパンチはジャブではなく肩を回転して振り下ろします。
    地面に爪が触れないようにして歩くので、前足の爪はいつも鋭く人の皮膚はさっと触れられただけで切れます。
    強くパンチがあたったらとてもひどいことになります。
    噛む力も強く若い固体なら歯だけで木にぶら下がります。
    噛んだら噛んだまま頭を振り回します。
    クマの大きさにもよりますが銃器以外のものではおそらく制圧できません。

    ご自宅の環境にもよりますが銃器の護衛のもとクマ撃退スプレー、動物撃退花火で追い払うか、
    わなで捕獲、射殺するかのどちらかかと思います。

    まず行政に相談してはいかがでしょう。

    Comment by bbear — 2011/8/10 水曜日 @ 14:55:39

  8. bbearさん助言を頂きありがとうございます。
    一番始めに市に相談しましたが、何もしません。保護動物だから簡単に手だしはできないとの事です。知人が県庁で働いているので、知人に県の担当者にコンタクトをとってもらい、やっと動き始めました。とりあえず、罠を仕掛けるらしいですが、明確な時期はわかりません。これからお盆に入り、墓の供え物、盆棚につられて家の中にはいってくるかと思うと怖くて、小さな物音にも敏感になってしまいます。
    早急に対策を取るようにもう一度お願いしにいきます。
    どうもありがとうございました。

    Comment by 猪又健良 — 2011/8/10 水曜日 @ 19:52:20

  9. 猪又さん
    釜石市が何もしてくれないのはこまりますね。
    今度家の周りにクマが来たときは即110番したほうがいいです。
    記録に残るからです。

    クマは餌に関しては人間の想像以上に執着します。
    カモシカを捕らえたクマは骨まで食い尽くすまでそこにいます。
    住宅の近辺でトウモロコシを食べていったのならクマはその付近を自分の餌場と認識していると思います。
    やがてクマは人と餌場で会ったら追い払おうとするでしょう。

    一番いいのは捕殺するより十分脅して山に返すことです。
    撃退スプレーや、花火で追い払う場合もある程度追撃するのです。
    少なくとも人家近くに生息するクマは人を恐れるようにしておくべきです。なぜなら、クマは縄張りらしきものを持っているのでその縄張りの主を捕殺したらそこに人を恐れない別の個体が新たに進出してきて問題を起こします。
    まあ人間社会と同じですね。

    護身用にクマ撃退スプレーは用意しておいたほうがいいのではないでしょうか。

    ところで観察からクマは普通の状態では人と比べて反応が遅いです。
    脅かしたときでもちょっと遅れて反応します。
    クマ撃退スプレーを十分浴びてから驚いて逃げるような気がします。

    >昨日は、窓を開けたら1mくらいの距離にいました。
    そのとき猪又さんはどうされました?
    クマはどうしましたか?
    興味があります。

    Comment by bbear — 2011/8/11 木曜日 @ 0:43:53

  10. ■猪又健良 さん
    ■bbear さん

    猪又健良さんには、bbearさんが的確なコメントをされていますので、その通りだと思います。

    基本的に、野生動物のすべてには人間活動の現場が「餌付け」となっていますから、コメづくり、果樹、野菜、漁業、林業、等々の生産現場を再認識して考えていく必要があります。

    行政も、一般人も、社会も、すでに日本人は自然に対する思考力を失って「家畜化」してしまっていますので。
    その辺の「目覚め」のためにもこのブログをやっているようなものですから、今後も少しずつ問題点を攻めていくつもりでおります。

    猪又健良さんには、さしずめ「日本犬」の飼育をお勧めしたいです。
    日本犬をきちんと理解すれば、クマ対策にも充分に効果を見いだすことはできるからです。

    Comment by gaku — 2011/8/11 木曜日 @ 10:25:28

  11. 猪又さん

    熊よけスプレーを用意された場合は、その取り扱いには十分注意してください。あれは使いようによっては銃より余程危険な代物です。以前、ドラム缶罠の熊を放獣する際、行政の担当が風上であれを巻いたから堪りません。私は10㍍は離れていたにもかかわらず、激しく咳き込んで思わず座り込んでしまいました。そこへ私の相棒がまたうっかり扉を開けたから堪りません。飛び出した熊は目の前にあったカーブミラーを立ち上がって2~3回激しくひっかいて林道下に飛び降りていきました。私の方に向かってきていたら偉い事になる所でした。あのときは怖かった~。前にテレビで見たのは若者達が2~3人、アパートの一室で試しにスプレーをまいて病院送りになったと報じていました。試射をする時は屋外で近くに人が居ない事を確かめて、必ず風下に向けてまく事。それと緊急時でも熊は必ずしも自分より風下にいるとは限りません。慌てて風上に向けてまこう物なら、熊には影響ないわ、自分は咳き込んで座り込むわで、熊にやられ放題になってしまいます。

    Comment by 老いぼれ猟師 — 2011/8/11 木曜日 @ 11:54:20

  12. bbearさん、gakuさん、老いぼれ猟師さん適格なアドバイスありがとうございます。熊スプレー購入しました。

    窓を開けてクマがいたときは、クマは私の目を見て数秒間立ち止まり、私は、声も出せずただ見ていました。その後クマは、サーッと走り去りました。その後、クマの姿は庭では見ていませんが、近所の人が畑を荒らされたり、朝方に目撃したとの情報はあります。ちなみに私の家は、通学路沿いにあります。今は夏休みだからいいけれど、子供たちが襲われたら危険だと市には伝えているのですが。。。罠を仕掛けることを急ごうとしません。gakuさんの言っている「家畜化」とは、まさにこれですね。悲しいです。家では、3匹犬(雑種、コーギー)を飼っていていますが、遠くにクマがいる時は吠えます。近くに来ると小屋に隠れて出てきません。犬も怖いのでしょうか??

     私は、仕事柄(病院勤務)クマにおそわれた人を何人か見たことがあります。クマの怖さは知っていますが、クマのことは全く知りません。これからもこのブログで勉強させていただきます!
     

    Comment by 猪又健良 — 2011/8/11 木曜日 @ 20:44:48

  13. 謹啓 私も 丹沢 高松山 陣馬山 高尾山に 良く 登り 小仏峠。 縦走 相模湖 コース。ETC 等 子ども の ころから 山が 好きで 歩きまはって居るが。熊さんに会ったことはないですよ。 ササ熊が 高尾山。草戸山 城戸湖に 月の 環熊が 出たと、売店の 叔母さんが いつていましたが。

    Comment by 武村祐二 — 2011/10/21 金曜日 @ 20:56:15

  14. 前略 群馬県の 利根 老い神 温泉の 赤城山を 登り行く 熊が 野天風呂。にゆくときに 見られた。 7年程前の なっだつた。

    Comment by 武村祐二 — 2011/10/21 金曜日 @ 22:14:28

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